クラミジアの検査は自宅でできる?症状や治療方法についてもまとめました
クラミジアは性感染症の一種で、適切な治療を行わないと重篤な合併症を引き起こす可能性があります。しかし、自覚症状がない場合も多く、感染に気付きにくいのが特徴です。
そこで本記事では、クラミジアの基本的な知識や症状、検査方法、そして治療と予防法について詳しくご説明します。クラミジア検査は病院だけでなく、自宅でも可能なのでしょうか? 気になる情報をわかりやすくまとめました。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
クラミジアとは
クラミジアは、性感染症(STD)の中で日本で最も多い感染症です。クラミジアは、クラミジア・トラコマチスという細菌が原因で起こります。この細菌は人工的な培地では増殖できないため、特殊な検査が必要となります。
クラミジアは主に性行為によって感染しますが、感染しても自覚症状がない場合が多いのが特徴です。特に女性では、感染しても症状が出にくいため、気付かないうちに感染を広げてしまうことがあります。また、口腔性交によって咽頭に感染することもあると報告されています。
クラミジア感染症は、若い世代、特に10代から20代の女性に多くみられます。初めての性交渉の年齢が低下傾向にあることから、若年女性の感染率の高さが問題視されています。感染しても自覚症状がないまま放置すると、将来的に不妊の原因になることもあるため注意が必要です。
また、妊婦の3〜5%がクラミジアに感染しているという調査結果もあります。感染している妊婦から生まれた新生児は、産道を通る際にクラミジアに感染してしまうリスクがあるのです。
感染症法では、クラミジアは5類感染症に指定されており、全国の性感染症定点医療機関から報告が義務付けられています。これにより、国内のクラミジア感染の発生動向が常に監視されています。感染症法施行後の届け出状況を見ると、特に女性の感染者数が急増しているようです。
クラミジアの症状
クラミジアに感染しても、自覚症状がない場合が多いのが特徴です。しかし、症状が現れる場合もあるので、その内容を知っておくことが大切です。クラミジアの症状は、男性と女性で異なる点があります。また、性器だけでなく、のどにも症状が現れることがあります。ここでは、具体的な症状について見ていきましょう。
男性の症状
男性がクラミジアに感染すると、以下のような症状が現れることがあります。
・尿道からの排膿
尿道から膿のような分泌物が出ることがあります。これは、クラミジアによる尿道炎の症状です。
・排尿時の痛み
尿を出す際に、尿道に痛みや不快感を感じることがあります。
・尿道のかゆみ
尿道にかゆみを感じることがあります。
・精巣の腫れや痛み
クラミジアが精巣上体に感染すると、精巣が腫れたり痛みを感じたりすることがあります。
ただし、男性の場合、症状が現れないケースも多いようです。自覚症状がなくても、パートナーへの感染リスクがあることを理解しておくことが大切です。
女性の症状
女性の場合、クラミジア感染による症状は以下のようなものがあります。
・異常な腟分泌物
クラミジアによる子宮頸管炎によって、腟から異常な分泌物が出ることがあります。
・性交痛
性行為の際に、腟や下腹部に痛みを感じることがあります。
・下腹部の痛み
クラミジアが子宮や卵管に感染すると、下腹部に痛みを感じることがあります。
・不正出血
生理以外の時期に、腟からの出血がみられることがあります。
女性の場合も自覚症状がないことが多いのが特徴です。症状がなくても、定期的な検査を受けることが大切だといえます。
のど(男女共通)の症状
クラミジアは、口腔性交によってのどに感染することがあります。のどへの感染は、男女共通でみられます。症状としては以下のようなものがあります。
・のどの痛み
クラミジアによるのどの感染症状として、のどの痛みを感じることがあります。
・違和感
痛みが生じていない場合でも、のどに違和感を覚えることがあります。
・発熱
のどへの感染によって、発熱することがあります。
のどへのクラミジア感染は、性器への感染と比べると症状が現れる割合が高いようです。のどの症状が長引く場合は、クラミジア感染の可能性を考えてみるとよいでしょう。
クラミジアは症状が現れにくい感染症ですが、早期発見・早期治療が大切です。定期的な検査を受けるとともに、症状が現れた際は速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
クラミジアの検査の種類
クラミジアの検査には、大きく分けて抗体検査と抗原検査の2種類があります。それぞれの検査方法について、詳しく見ていきましょう。
抗体検査
抗体検査は、クラミジアに感染したことによって体内で作られた抗体を検出する検査です。血液検査によって行われます。クラミジアに感染すると、1〜2週間程度で抗体が作られ始めます。
抗体検査の利点は、感染から時間が経過していても、抗体があれば感染の事実を確認できることです。しかし、抗体ができるまでに時間がかかるため、感染初期の段階では抗体検査で感染を判定できない可能性があります。
また、過去にクラミジアに感染したことがある場合、そのときの抗体が残っていることがあります。そのため、現在の感染を正確に診断するためには、抗体検査だけでは不十分な場合があるのです。
抗原検査
抗原検査は、クラミジアの菌体成分(抗原)を直接検出する検査です。尿や腟分泌物、のどの粘膜などを採取して検査します。
抗原検査は、感染初期の段階でも感染の有無を判定できるため、クラミジア検査の主流となっています。特に、核酸増幅法は感度が高く、信頼性の高い検査方法だといえるでしょう。
ただし、抗原検査は検査のタイミングが重要で、感染から2〜3週間程度経過した時点で検査を行うのが適切とされています。また、抗生物質を服用している場合は、検査結果に影響を与える可能性があるため、服用後2週間程度は検査を避けた方がよいとされています。
自宅でできるクラミジアの検査キット
近年、病院に行かなくてもクラミジアの検査ができるようになりました。自宅で検査キットを使って、尿や膣分泌物、のどの粘膜を採取し、検査機関に送ることで感染の有無を確認できるのです。ここでは、自宅でできるクラミジアの検査キットについて、詳しく見ていきましょう。
尿の検査キット
尿の検査キットは、男性向けに開発されたものです。自宅で初尿(尿の最初の部分)を採取し、検査機関に送ることでクラミジア感染の有無を調べることができます。
具体的な手順は以下のとおりです。まず、折りたたみカップを広げ、そこに初尿を4分の1から半分程度まで採取します。次に、専用容器のフタを開け、中の液体を捨てずに、スポイトを使って初尿を容器内の2本のライン間に収まるように加えます。最後に、フタをしっかりと閉めて検査機関に発送します。
尿の検査キットを使えば、病院に行くことなく、プライバシーを守りながらクラミジア検査を受けることができるのです。
膣分泌物の検査キット
膣分泌物の検査キットは、女性向けに開発されたものです。子宮頸管内(膣の奥)から分泌物を採取し、検査機関に送ることでクラミジア感染の有無を調べることができます。
具体的な手順は以下のとおりです。まず、専用容器のフタを開け、中の液体を捨てずに取っておきます。次に、綿棒を膣内に挿入し、同じ方向に優しく5回程回転させて分泌物を採取します。このとき、綿棒を引き抜く際に膣の粘膜に触れないよう注意が必要です。採取した綿棒を専用容器に入れ、柄の中央で折って綿棒の先端部分だけを容器内に残します。最後に、尿検査キットと同様にフタをしっかりと閉めて検査機関に発送します。
膣分泌物の検査キットを使えば、女性特有の症状がない場合でも、感染の有無を確認することができます。定期的な検査に活用するのもよいでしょう。
のどの検査キット
のどの検査キットは、男女共通で使用できるものです。口腔内をうがいした液体を採取し、検査機関に送ることで、のどのクラミジア感染の有無を調べることができます。
具体的な手順は以下のとおりです。まず、折りたたみカップに水道水を1cm程度(約15ml)入れます。次に、カップの水を口に含み、顔を上に向けて15秒程ゆっくりとうがいをします。うがいした液体は、すべてカップに吐き出します。専用容器のフタを開け、中の液体を捨てずに、スポイトを使ってうがい液を容器内の2本のライン間に収まるように加えます。ほかの検査と同様に、最後にフタをしっかりと閉めて検査機関に発送します。
のどの検査キットを使えば、口腔性交によるクラミジア感染の有無を確認することができます。のどに違和感がある場合などに活用してみてください。
クラミジアの治療と予防方法
クラミジアに感染した場合、適切な治療を行うことが大切です。また、感染を予防するためには、正しい知識を持ち、予防策を講じることが重要です。ここでは、クラミジアの治療法と予防法について詳しく見ていきましょう。
治療
クラミジアの治療には、抗菌薬が用いられます。具体的には、テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系などの抗菌薬が処方されることが多いようです。これらの抗菌薬は、クラミジアに対して高い効果を示します。しかし、耐性菌の出現も問題となっているため、医師の指示にしたがって適切に服用することが大切です。
また、クラミジアは無症候性感染が多いことから、感染が判明した場合はパートナーも一緒に検査・治療を受けることが重要です。再感染を防ぐためにも、パートナーの検査と治療を忘れないようにしましょう。
予防方法
クラミジアの予防には、以下のような方法があります。
・コンドームの使用
性行為の際には、コンドームを正しく使用することが大切です。コンドームを使えば、クラミジアの感染リスクを大幅に下げることができます。
・定期的な検査
クラミジアは無症候性感染が多いため、定期的な検査を受けることが重要です。特に、性的に活発な時期にある人は、年に1〜2回の検査を検討しましょう。
・性交渉相手を限定する
性交渉相手を限定することで、感染リスクを下げることができます。特に、新しいパートナーとの性交渉では注意が必要です。
・口腔性交での注意
口腔性交でもクラミジアに感染する可能性があります。口腔性交の際は、コンドームやデンタルダムを使用するようにしましょう。
・衛生管理
性器の清潔を保つことも大切です。性器を清潔に保ち、性交渉前後には性器を洗浄するようにしましょう。
クラミジアは、感染しても自覚症状が出にくい感染症です。しかし、放置すると重篤な合併症につながる可能性があります。感染リスクを減らし、感染が判明した場合は適切な治療を受けることが大切だといえるでしょう。
編集部まとめ
クラミジアは、性感染症のなかで最も感染者数が多い疾患です。しかし、感染しても自覚症状がない場合が多く、知らない間に感染を広げてしまうリスクがあります。感染リスクを減らすためには、コンドームの使用や性交渉相手を限定するなどの予防策が重要です。近年は、自宅で検査キットを使ってクラミジア検査を受けることもできるようになりました。気軽に検査を受けられる環境が整ってきたといえるでしょう。
自分の健康を守るためにも、クラミジアについて理解を深め、感染リスクに注意を払っていきましょう。