令和の虎・岩井社長が「肺がん」を告白 転移しやすい部位・症状・治療法を医師が解説
YouTubeチャンネル「令和の虎」を主宰する岩井良明さん(64)が、肺がんを患っていることを公表しました。また「他の臓器にも転移しているようです」と状況をSNSに綴っています。
日本人の2人に1人はがんになるといわれていますが、そのなかでも肺がんになる人は多い傾向にあり、この病気は転移する確率が高いのも特徴。そこで肺がんの転移・再発について山下正勝先生に解説してもらいました。
※この記事はMedical DOCにて【「肺がんが転移しやすい部位」はご存知ですか?検査法や治療法も解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
山下 正勝(医師)
保有免許・資格
歯科医師
日本外科学会 外科専門医
緩和ケア研修修了
JATEC(外傷初期診療ガイドライン)コース修了
NST医師・歯科医師教育セミナー修了
嚥下機能評価研修修了
目次 -INDEX-
肺がんとは
がんは、身体のさまざまな部位に発生する可能性を持つ病気です。そのなかでも肺にできたがんを肺がんといいます。厚生労働省が調査している2022年の人口動態統計の報告では、すべてのがんの死亡数はおよそ40万人と報告されました。そのうち気管・気管支・肺のがんによるものはおよそ7万6,000人です。
これはほかの部位にできるがんによる死亡数よりも多く、部位別にみた日本人のがんの死亡原因の第1位にあたります。このデータを男女別にみると、気管・気管支・肺など呼吸器系のがんは、男性のがん死亡原因の第1位です。女性も大腸がんに次いで肺がんはがん死亡原因の第2位で、性別に関わらず多くの人が罹患し、死亡原因へとつながることも少なくありません。
またがんは、がんができた部位だけでなく、ほかの臓器へ転移する可能性もあります。肺がんも例外ではなく、ほかの臓器へ転移してしまうことも少なくありません。
肺がんにみられる転移のタイプ
がんが発生した部位から血管やリンパ管などを経由して別の臓器へと移動し、移動した部位でがん細胞が増えることを転移といいます。肺がんがほかの臓器へ転移する方法は、以下の3つです。
- リンパ行性転移
- 血行性転移
- 播種性転移
リンパ行性転移
全身を流れるリンパ液は、リンパ管を通ってリンパ節へと移動します。リンパ行性転移とは、 肺がんの細胞がリンパ液の流れに乗ってほかの部位へと移動して転移することを指します。
血行性転移
肺がんは発生した場所の近くの毛細血管や静脈から血管内に入り、血液の流れに乗ってほかの部位へ転移します。これを血行性転移といいます。肺は全身を巡る血液の多くが集まる臓器です。そのためほかの臓器で発生したがん細胞が、血行性転移で肺へと転移する可能性もあります。肺や肝臓、脳など血液が多く集まる臓器に多くみられる転移のタイプです。
播種性転移
肺は胸膜というスペースの中にある臓器です。播種性転移とは、種を播いたようにがん細胞が空間内に散らばって転移を起こすものを指します。人の身体には、胸腔のほかにも腹腔という肝臓や腸などの収まるスペースがあり、 この両方で播種性転移は起こる可能性があります。
肺がんが転移しやすい好発部位・主な症状
肺がんはどの部位に好発し転移しやすいのでしょうか。ここからは、肺がんが転移しやすい好発部位を紹介します。
リンパ節
肺がんのがん細胞はほかの臓器に比べてリンパ節への転移が多いとされています。特に肺の所属リンパ節と呼ばれるリンパ節への転移はおよそ6割に及ぶことがわかっています。
骨
肺がんは骨への転移も珍しくありません。骨は頭部から足部まで全身にあります。そのなかでも、肋骨や骨盤、脊椎などへの骨転移が多い傾向にあります。
脳
脳に転移するがんのうち、その原因の半分は肺がんであることがわかっています。次いで原因なることの多いがんは乳がんですがその割合は1割程であり、転移性脳腫瘍のほとんどが肺がんによるものであることがわかります。
肝臓
胃がんや大腸がんから肝臓への転移は少なくありません。しかし肺がんも例外ではなく、肝臓への転移が起こることがあります。
副腎
肺がんの転移先は左右反対側の肺、肝臓、骨、副腎の順に多くみられます。また副腎への転移率は、およそ35%程度と決して少なくないことがわかっています。
肺がんの転移・再発に対する検査・治療法
肺がんが転移や再発した際、どのような検査や治療法を行うのでしょうか。ここでは、肺がんの転移・再発を調べる検査方法や治療法を紹介します。
検査方法
肺がんは脳や骨、肝臓などさまざまな臓器に転移する可能性のある病気です。そのため、肺がんのがん細胞の転移の有無を複数の検査で全身検索します。肺がんの転移を調べる検査は以下のような検査です。
- CT検査
- MRI検査
- 超音波検査
- 骨シンチグラム
肺がんは、がんの進行度によって7段階に分類されます。そのなかでがんが小さく転移もしていない1A期のがんであっても、再発の可能性がないわけではありません。
そのため、がんの治療後5年間は、早期に再発を発見するために定期的な検査を受けることが推奨されています。この場合の検査内容は、特定の検査が決まっているわけではないので、治療を受けた医療機関で問診・血液検査・画像検査(レントゲン・CTなど)を医師の判断で受けます。
治療法
他臓器が原発巣であるがんが肺に転移した場合、治療方法を決定するのは原発巣の種類です。肺へ転移してきたがん細胞に抗がん剤が使用できる場合は、抗がん剤を使用します。
しかし抗がん剤が使用できない場合、治療方法の選択肢は手術によるがんの切除や放射線療法です。また肺がんがほかの臓器に転移した場合は、転移した部位に合わせた治療が選択されます。
編集部まとめ
日本人のがんによる死亡原因の第1位は肺がんです。肺がんはリンパ行性・血行性・播種性とさまざまな形で全身に転移し、身体を蝕む恐ろしい病気です。
転移を予防するためにはがんの早期発見が重要ですが、肺がんは無症状のまま進行してしまうことも少なくありません。
定期的な検査を受け、がんが小さいうちに発見・治療を行うことが転移を防ぐためには有効です。より長く健康な身体を守るために気になる症状があれば受診し、健康診断を定期的に受けましょう。