高田延彦が発症した「心房細動」とは? 初期症状・なりやすい人の特徴も医師が解説
元プロレスラー・総合格闘家でタレントとしても活躍している高田延彦(62)が、「発作性心房細動」のために心臓の手術を受けたことを自身のSNSにて発表しました。そこで、心房細動の症状・初期症状・原因や何科へ受診すべきかなどを、伊藤陽子医師に解説してもらいました。
※この記事はMedical DOCにて【「心房細動の症状」はご存知ですか?初期症状・なりやすい人の特徴も医師が解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
「心房細動」とは?
正常な脈は右心房にある洞結節から電気信号が起こり、これが心房、心室へと伝わり心臓が収縮します。このような洞結節から始まる規則正しいリズムではなく、心房内に流れる電気信号の乱れにより起こる不整脈を『心房細動』といい、心房が細かく震え脈拍が不規則となります。
心房細動の代表的な症状
心房細動の症状としては、大きく分けて3つあります。
- ①脈が速くなることによる動悸の症状
- ②心房細動によりできた血栓が脳に飛ぶことによっておこる脳梗塞の症状
- ③心房細動により引き起こされた心不全の症状
の3つです。
動悸
心房細動になると、脈拍数が増加し、動悸を感じる人が多くなります。しかし、自覚症状がなく健康診断で心電図をとった際に、初めて気が付く人も多いです。動悸を感じた際には、なるべく安静に過ごしましょう。そして、早めに内科を受診して動悸の原因を調べましょう。
脳梗塞の症状
心房細動がある場合に気を付けなければならない事は、血栓症です。心房細動で心房が細かく震え、血液のよどみができ、ここに血栓が生じます。この血栓が血液の流れに乗って、脳に到達し血管に詰まると脳梗塞を発症します。心房細動によって生じる血栓は大きいことが多いです。そのため、太い血管で詰まると広範囲の脳梗塞が生じます。脳梗塞の症状は詰まった部位により異なりますが、手足や顔面の麻痺、言語障害や視野障害などです。このような症状が起こった時には、緊急に医療機関を受診する必要があります。救急車を呼び、救急外来を受診しましょう。
心不全の症状
心房細動が持続すると、心臓に負担がかかり心不全をきたします。心不全になると、心臓からの血液の拍出量が低下し、血液がうっ滞するためさまざまな症状が生じます。息苦しさや呼吸困難、浮腫、倦怠感やめまいなどの症状です。このような症状が認められた場合には、早期に医療機関を受診しましょう。心房細動があるとわかっている場合には、循環器内科を受診すべきですが、原因がわからない場合には、内科を受診するのが良いでしょう。
心房細動の初期症状
動悸・胸部不快感
心房細動の初期の症状として、普段より脈が速くなったり、不規則な脈になるため動悸や胸部の不快感、違和感が起こったりします。このような症状が出現した場合には、早めに循環器内科を受診しましょう。
息切れ、労作時の辛さ
心房細動が持続することにより、心不全を合併し、うっ滞すると息切れ、倦怠感、動いた時にきつさを感じるようになります。人によっては、咳込みやむくみの症状が起こることもあります。このように息切れや、動いた時にきつさを感じる場合には、無理に運動をせず安静に過ごし、早めに医療機関を受診しましょう。循環器内科を受診するのが良いでしょう。
めまい
心房細動の症状の一つとして、脈の乱れがみられます。脈拍が早くなることもあれば、脈拍が遅くなる人もいます。脈拍が遅くなる場合、数秒程度の心拍動の停止がおこり、脳への循環が悪くなり、めまいや失神を伴うこともあります。このような症状がみられた場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
心房細動の主な原因
心房細動の原因として多いのは、①加齢、②高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、③心臓病(弁膜症、心不全、先天性心疾患、心筋梗塞、心筋症)④飲酒、喫煙です。それぞれの原因について詳しく解説します。
加齢
加齢に伴い、心房細動の合併が多くなります。2003年の健診の結果より、心房細動の有病率は、70才代で男性3.44%女性1.12%、80才以上で男性4.43%女性2.19%でした。何も病気がなかったとしても、加齢により心房細動を発症することもあります。70才を超えたら、ご自身の脈を測る習慣をつけましょう。また、脈の乱れを感じた場合には、循環器内科を受診しましょう。
生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群
糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病では動脈硬化が進行しやすいため、心疾患の合併が多く、心房細動の発症率も高いです。また、睡眠時無呼吸症候群も睡眠時に低酸素状態が持続し、心臓に負担がかかるため心房細動発症の危険因子となります。いずれの病気も、それぞれの病気をしっかりと治療することで心房細動を発症することを予防することができます。これらの病気がある方は、まず治療をしっかりすることが大切です。
心臓病
心臓病は心筋に負荷がかかるため、心房細動の危険因子となります。弁膜症や虚血性心疾患、心不全、先天性心疾患、心筋症のいずれの病気も原因となり得ます。これらの病気が元々ある方は、通常から病気を良い状態にコントロールしましょう。心臓病の加療を継続することが、心臓の負担を軽減することにつながり、心房細動の発症を防ぐことになります。
飲酒、喫煙
飲酒や喫煙も心房細動発症の危険因子です。アルコールは、分解産物が心筋に障害を与えることで、心臓にストレスを与えます。また、喫煙者は非喫煙者と比較し、心房細動発症のリスクが1.5倍上昇します。カフェインの過剰摂取や睡眠不足、精神的ストレスも心房細動の危険因子です。いずれにしても、体にストレスを多く与えるものは心房細動の危険因子となり得るため、気をつけましょう。
すぐに病院へ行くべき「心房細動の症状」
ここまでは心房細動の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
脈が乱れる症状の場合は、循環器内科へ
生活習慣病や甲状腺疾患、心疾患をお持ちの方、70才以上の高齢者では脈をご自身で測る習慣をつけましょう。医師や看護師が行うように、手首の内側で親指の根元あたりに反対の手指3本をあてると拍動が分かります。一日一回程度ここで拍動を確かめ、脈の乱れがないかを確認してみましょう。
また、自動血圧計でも不整脈を感知する機能がついているものもあります。自動血圧計で不整脈が感知された場合に、自分でも確かめてみましょう。脈の乱れがある場合には不整脈の可能性があり、心電図検査での精密検査が必要です。循環器内科へ受診することをおすすめします。
受診・予防の目安となる「心房細動の症状」のセルフチェック法
- ・脈の乱れがある場合
- ・動悸、胸部違和感の症状がある場合
- ・労作時の息切れ症状がある場合
- ・息苦しさの症状がある場合
- ・めまい、一時的な失神の症状がある場合
「心房細動の症状」についてよくある質問
ここまで心房細動の症状などを紹介しました。ここでは「心房細動の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
心房細動になりやすい人の特徴を教えてください。
伊藤 陽子(医師)
生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群、心疾患がある方では心房細動が起こりやすいので注意が必要です。これらの病気の治療を受け、心房細動が合併しないように気をつけましょう。高齢者、アルコールの多飲、喫煙も危険因子となり得ます。また、睡眠不足やカフェインの取りすぎ、ストレスの多い人も注意が必要です。
心房細動は自覚症状がない場合もありますか?
伊藤 陽子(医師)
心房細動は動悸や息苦しさ、めまいなどの症状が出ますが、自覚症状がないことも多いです。健康診断などで心電図をとった際に、初めて心房細動を指摘されることもあります。
心房細動を発症しやすい時間帯について教えてください。
伊藤 陽子(医師)
心房細動が特に発症しやすい時間帯はありません。しかし、就寝時に眠れずにいると動悸や胸部の違和感などの症状に、気が付きやすい可能性があります。心房細動は7日以内に治まる発作性心房細動と、7日を超えて持続している持続性心房細動、1年以上持続している長期持続性心房細動に分類されます。いずれの不整脈でも血栓症のリスクがあり、抗凝固療法が必要です。
編集部まとめ
心房細動は健康診断で診断される患者数で約80万人と言われており、実際には100万人を超えると予想されている非常によく見られる病気です。高齢者に多く、今後の高齢化に従いますます増加することが予想されます。心房細動は自覚症状があまりないことも多いです。しかし、そのまま放置をすることで心臓内に血栓を生じ、脳梗塞に発展することもあります。心房細動が見られた場合には、抗凝固療法を行い、血栓を生じさせないようにすることが非常に大切です。また、心不全の原因にもなるため、症状がなくとも早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。