【高校生2人が落雷により意識不明】感電の症状・死に至るケースを医師が解説
2024年4月3日午後2時40分ごろ、宮崎市にある宮崎産業経営大学のサッカーグラウンドに落雷があり、18人が救急搬送されました。うち2人の高校生が意識不明だということです。
雷が直撃・側撃すると、体内が電流を通過し、「感電」を起こします。感電は落雷に限らず、電気製品・電気設備の不適切な使用や漏電などによっても起こる、意外と身近に起こる現象です。
この記事は、感電するとどうなるのか、メカニズム・対処法について説明します。感電について知り、日頃から対策するようにしましょう。
※この記事はMedical DOCにて【「感電」はどれくらいの電流で死に至るかご存知ですか?医師が監修!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
感電のメカニズムや症状
感電とはどのような現象ですか?
漏電が発生している電気器具に接触すると、電流は通常の経路ではなくより導電性の高い人体を経由して地に流れることがあります。これが一般的に感電と呼ばれる現象です。電流が弱い場合は、痛みやショックといった症状が生じるだけで済みますが、強い電流が流れる場合には人命に関わる可能性もあります。
感電のメカニズムを教えてください。
一方、静電気の場合は体の動きによって衣類が帯電し、ドアノブなど電気を通す物体に触れようとした際に指から地面に向かって電気が流れるのです。人体は電気に対して抵抗が低いため電気が容易に流れます。皮膚が水や汗で湿っていると電気抵抗がさらに低くなりさらに電気が流れやすくなり危険性が高まるのです。
感電するとどのような症状が出るのですか?
また、筋肉に影響を及ぼす場合、激しい筋肉痛や横紋筋融解症と呼ばれる状態が生じることがあります。横紋筋融解症は筋肉細胞の融解や壊死により、大量の筋肉成分が血液中に流れ込み、急性腎不全を引き起こし命に関わることもある病態です。
心臓に影響を及ぼす場合、心室細動や心停止などの危険な不整脈が生じることもあります。しかし、皮膚のやけどの程度と臓器の損傷の程度は必ずしも一致しないことに注意が必要です。
死に至るのはどのようなケースですか?
濡れた手で電線を触ると、0.1アンペアくらいの電流は簡単に流れるので100vの家庭電源でも死に至ることがあります。
家庭用のプラグでも感電事故は起こりますか?
プラグとコンセントの隙間にホコリが蓄積すると、「トラッキング現象」と呼ばれる問題が引き起こされます。これは、ホコリが周囲の湿気を吸収し、コンセントから漏電が生じる現象です。このようなとき、プラグをコンセントに差すと感電することがあります。
また、肌が湿っていると体内に電気が流れやすくなるため、唾液や汗で湿った手がコンセントやプラグに触れることは非常に危険です。
感電の受診や治療
感電した場合何科を受診すればよいですか?
どのような治療が行われますか?
心電図モニターの装着・心臓マッサージやAEDの使用・人工呼吸・静脈路確保・多発外傷の応急処置・採血などが行われるのです。入院時の全身管理では、圧挫損傷に伴うショック状態に対する集中治療を行います。心臓や血管など循環系のチェック、脳・脊髄・末梢神経障害への対処を行うのです。また急性腎不全の早期発見・併発損傷の評価と治療などを行います。
損傷範囲は皮膚だけでなく、皮下組織・筋肉・腱・血管・神経・骨に及ぶ場合があるのです。時間の経過とともに壊死範囲が広がり、デブリードマン(壊死組織の除去)や四肢切断の必要性が生じる場合もあります。また、末梢血管の損傷による動脈瘤形成・出血・閉塞・狭窄(きょうさく)・血栓形成も生じる可能性があるため、それに対処する必要もあるのです。
感電の予防や注意
感電を予防する方法を教えてください。
電気機器に触れる際には、乾いた手で操作し絶縁手袋を使用することが重要です。さらに、絶縁ドライバと呼ばれる工具も利用できます。これは、絶縁性の高い樹脂でコーティングされており、感電を防ぐ役割を果たします。
絶縁が不十分な状態に備えるためには、アースを接続したり、漏電遮断器を設置したりすることも重要です。電気を事前に地面に逃がすことや、漏電を検知して電源を遮断することで、感電事故を予防できます。
コンセントを挿すときの注意点はありますか?
ヘアピン・針金・クリップ・チェーン・鍵・硬貨などの金属製品はコンセントの近くに置かず安全な場所に保管することが重要になります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
感電すると人間の体は、電流が流れやすいので電流は瞬く間に全身に流れます。普段からの電気に対する意識を高め感電を起こさないようにしましょう。万が一、感電したらすぐに形成外科や救命救急センターで診断し、早期対応を行うことが命を守る大事なことです。
編集部まとめ
感電するとどうなるのか、メカニズム・対処法について解説しました。感電は電流が人体を通って障害を引き起こすもので死に至ることがあります。
電気機器の普及により、電気に関わる人々だけでなく家庭でも電気に接する機会が増えています。その結果電気に関連した事故も増加しているのです。
感電の症状は、熱傷が生じ、皮膚が痛み・発熱・全身の強い炎症・脱水症状が現れることがあります。感電によって命を落とすこともあります。
感電事故を防ぐためには、「濡れた手で電気製品を触らない」といった対策が重要です。また、「正しくアースや漏電遮断器を設置する」ことも効果的な手段です。
アースや漏電遮断器が設置されていない場合や造設を考えている場合は、専門業者に相談しましょう。
電気を使わない日はありません。そのためにも感電の仕組みを理解することは非常に重要なのです。