チョコプラ松尾が発症した「大腸憩室炎」の原因・症状・治療法を医師が解説!
お笑いコンビ「チョコレートプラネット」の松尾駿さんが13日、「大腸憩室炎」になっていたことを、コンビのYouTubeチャンネルで公表しました。
YouTube上では、「なんか腹痛くてさ、下っ腹みたいなところが」と腹痛を訴え、大きい病院を受診したところ憩室炎だったと、診断までの経緯を明らかにしています。また、憩室炎について本人は、「大腸に穴があるんだって、部屋みたいな。そこに便とかが詰まって細菌が入って炎症を起こしてイタタタタって……。それで痛み止めの点滴を打ってもらった」と語っています。
大腸憩室炎はお腹の痛みが特徴で、ひどくなると腸内に穴が空いてしまうこともあります。症状の悪化前に早めに見つけて治療することが重要な病気です。気になる症状があれば、内科や消化器内科を受診し、詳しい検査を受けましょう。
今回は、大腸憩室炎とはどのような病気か、症状や原因、受診科目などを解説します。
※この記事はMedical DOCにて【「大腸憩室炎」とは?症状・原因について詳しく解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
大腸憩室炎とは
大腸憩室炎とはどのような病気ですか?
炎症が悪化して大腸憩室から出血した状態を「大腸憩室出血」と言い、この状態になると治療が必要です。
大腸の働き
大腸はどのような働きをしているのですか?
食物が口に入り、便として排出されるまでにかかる時間は24〜72時間といわれています。
大腸憩室とは
大腸憩室は腸がどのような状態になっているのですか?
この大腸憩室を持っている人はたくさんおり、高齢者の半数以上の人に見つかります。大腸憩室があること自体は無症状のため、通常は心配する必要はありません。
大腸は形状により、上行結腸、下行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸に分かれています。このうち、大腸憩室は上行結腸とS状結腸にできやすいのが特徴です。
大腸憩室炎の症状
大腸憩室炎ではどのような症状が現れますか?
上行結腸の大腸憩室に炎症が起こると右側の下腹部あたりが痛み、下行結腸からS状結腸の大腸憩室に炎症が起こると左側の下腹部あたりが痛むのが特徴です。
大腸憩室炎の原因
大腸憩室炎の原因を教えてください。
従来、大腸憩室炎は欧米ではS状結腸に好発し、日本では上行結腸に多いとされていました。食習慣の変化や生活様式の変化で、日本でも下行結腸に発生する大腸憩室炎が増加しています。
下行結腸の大腸憩室炎が増えている原因として、主に大腸内圧の上昇と加齢による腸管壁の脆弱化が挙げられます。そのほかにも、体質や遺伝、人種、生活環境なども関係していると考えられています。
大腸憩室炎の危険因子は主に以下です。
- 内臓脂肪型肥満
- 鎮痛薬の乱用
- 免疫抑制剤の使用
- 便秘症
大腸内圧の上昇
なぜ大腸内圧が上昇するのですか?
加齢による腸管壁の脆弱化
加齢も関係しているのですか?
大腸も同じように、加齢とともに機能が低下するため、そのため反応が鈍くなったり、脆くなって傷つきやすくなったりします。そのため歳とともに、大腸憩室炎を起こしやすくなるのです。
大腸憩室炎の受診科目
大腸憩室炎の疑いがあれば何科を受診すればいいですか?
大腸憩室炎の検査
大腸憩室炎ではどのような検査を行いますか?
- 問診
- 検温
- 血圧測定
- 腹部の診察
- 血液検査
- 腹部CT検査
そのほか、虚血性腸炎、大腸がん虫垂炎などの病気がないかも確認します。
大腸憩室炎の性差・年齢差
大腸憩室炎に性差・年齢差はありますか?
男女差は従来から男性に多く、男女比は2〜3:1でした。しかし現在では、男女比は1.5:1程度とほとんど差はなくなってきています。
大腸憩室炎の治療方法
大腸憩室炎の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?
高熱や炎症がひどい、腹膜を刺激して痛みがある場合には、絶食と抗生物質の点滴のための入院が必要です。入院期間は1週間〜10日程度で、穴が開いたり腫瘍ができたりして、手術が必要になった場合は、2週間〜1か月程度の期間、入院が必要になる場合もあります。
また、腫瘍ができていたり、穴が開いていたりする場合には、内視鏡治療、血管塞栓術などの手術を行う場合があります。憩室が破れており、ひどい腹膜炎を起こしている場合には、一時的に人工肛門を作ることもあります。
控えるべき食べものや習慣
食べ物や習慣で気を付けることはありますか?
また、食物繊維の摂取が大切なため、野菜の多いバランスの良い食事を心がけましょう。すでに大腸憩室がある場合は、便秘をしないように、医師の指示の元下剤を飲むことも大切です。
そのほかにも、腸に負担をかける暴飲暴食、ストレス、過度な疲労を避けることも大切です。大腸憩室を指摘されたことがある場合は、普段から生活習慣の乱れに注意し、症状が現れたら、早めに医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
大腸憩室炎はお腹の痛みが特徴で、ひどくなると腸内に穴が空いたり出血したりしてしまうこともあります。大腸憩室自体は無症状で、誰にでもできるものです。しかし、便が詰まって細菌が増殖すると、炎症が起こり痛みや発熱などを伴います。
経過観察で様子を伺うこともあれば、入院が必要になることもあるため、気になる症状があれば医療機関を受診し、詳しい検査を受けましょう。