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網膜色素変性症の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27

網膜色素変性症(読み方:もうまくしきそへんせいしょう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
鈴木 美保 医師(トヨタ眼科クリニック 院長)

網膜色素変性症とは

視細胞には、大きく分けて2つの種類の細胞があります。ひとつは網膜の中心部以外に多く分布している杆体細胞で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や視野の広さなどに関係した働きをしています。もうひとつは錐体細胞でこれは網膜の中心部である黄斑と呼ばれるところに多く分布して、主に中心の視力や色覚などに関係しています。網膜色素変性症ではこの二種類の細胞のうち杆体が主に障害されることが多く、このために暗いところで物が見えにくくなったり(夜盲)、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてきます。そして病気の進行とともに視力が低下してきます。

引用:難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/196

鈴木美保 医師 トヨタ眼科クリニック 院長ドクターの解説
人間の目をカメラに例えると、網膜はフィルムに相当し、網膜でとらえた光が神経を通じて脳に届けられています。網膜色素変性は、網膜の視細胞と色素上皮の機能が全体的に障害される病気です。また、両眼性、遺伝性、進行性の病気で、難病に指定されています。遺伝による病気ですので、患者さんがどんな生活をしていたか、どんな持病があったかなどは発症に関係ありませんし、予防できる病気でもありません。人によってスピードは違うものの進行性の病気であるため、眼科診療では発症後のロービジョンケアを中心に行っていくことになります。

網膜色素変性症の症状

ふつう最初に現れる症状は、夜や薄暗い屋内でものが見えにくくなる「夜盲〈やもう〉(鳥目〈とりめ〉)」です。その後、「視野狭窄〈しやきょうさく〉」が少しずつ進行し、見える範囲が周辺部分から中心に向かい狭くなっていきます。

 最近は夜でも明るい所が多いので、夜盲ではなく視野狭窄によって発病に気づく人も増えています。例えば足元が視界に入らないためつまずきやすい、球技をしているときに球を見失いやすい、落としたものを探すのに苦労する、人込みで人にぶつかる、というようなことです。状の起こる順序にも個人差があり、最初に視力が低下してから夜盲を自覚する人もいます。

引用:三和科学研究所
http://www.skk-health.net/me/09/#chap2

鈴木美保 医師 トヨタ眼科クリニック 院長ドクターの解説
網膜色素変性症の症状は、夜盲、視野狭窄、視力低下です。特徴的な症状は、暗いところで見にくい夜盲です。また、飛蚊症、白っぽくかすむ、まぶしいという症状もあります。視野狭窄は中心10度前後になると症状の進行速度がゆっくりになります。網膜色素変性症は、周辺の視野は失うものの中心部分の視野は比較的残るため、70〜80代といった高齢の患者さんの中にも視力を保っている人はいらっしゃいます。

網膜色素変性症の原因

この病気は視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞で働いている遺伝子の異常によって起こるとされています。以前は原因となる遺伝子がわかっているのは網膜色素変性症の患者さん全体のごく一部でしかなかったのですが、最近の研究で日本人に多い遺伝子の変化があきらかになって、解析の精度とスピードもアップしてきています

引用:難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/196

網膜色素変性症の検査法

●視力検査 眼科では必ず行われる検査ですが、網膜色素変性症の場合、かなり進行するまで良好のことが多いです。

●眼底検査 網膜色素変性症では、典型的な場合、眼底に黒い色素〈しきそ〉が沈着していることが多く、網膜動脈が細くなっていたり、視神経〈ししんけい〉の萎縮〈いしゅく〉などもみられます。

●暗順応検査 夜盲の程度を調べる検査です。病気の診断の際に行われます。

●網膜電図 網膜が光を受けたときに発生する電位〈でんい〉を調べる検査で、網膜色素変性症では、発病後早くから電位が低下・消失しています。

●視野検査 視野狭窄の程度を調べる検査です。病気の進行レベルを把握するうえで重要な検査で、だいたい1年に1~2回程度の頻度で行われます。一点を見つめ、周囲の視標を動かして視野の限界を調べる方法(動的視野計)と、視標の明るさを変えて認識できた最小の明るさから網膜各部の感度を計測する方法(静的視野計)があります。静的視野計は、より正確な進行状態の把握に役立ちます。

●OCT検査 OCT(光干渉断層計)という器械で眼底の断面像を詳しく調べる方法です。短時間で行え、患者さんに負担がかからないことから近年普及してきました。視力に重要な黄斑の変化をみるのに適しています。

引用:三和科学研究所
http://www.skk-health.net/me/09/#chap4

鈴木美保 医師 トヨタ眼科クリニック 院長ドクターの解説
眼底検査では、専用の点眼薬を使って瞳孔を開く「散瞳」を行います。散瞳により視力の調節機能が一時的に麻痺するため、検査が終わった後はものがぼやけて見えます。このような状態で自分で自動車・バイク・自転車などを運転すると大変危険ですので、眼底検査の直後は運転をしないでください。また、蛍光眼底造影検査では、造影剤のアレルギーで気分が悪くなったり、吐き気をもよおしたり、血圧が下がったりすることがあります。検査時に具合が悪くなったら、しばらく安静にしていれば症状は改善します。

網膜色素変性症の治療方法

網膜色素変性に対しては、現在のところ残念ながら根本的な治療法がありません。症状の進行を遅らせることを期待して、暗順応改善薬(ヘレニエン)、ビタミンA、循環改善薬などの内服を行うことがありますが効果は証明されていません。

治療法の開発に向けて、網膜神経保護、遺伝子治療、網膜幹細胞移植、人工網膜などの研究が全世界で盛んに行われています。なかでも病気の進行を遅らせる神経保護は、米国で臨床試験が開始されています。また、網膜色素変性の特殊な病型であるレーベル先天盲に対する遺伝子治療の成功も報告されており、研究は急速に進んでいます。

しかし、すべての患者さんに安全に治療を行うまでには、まだ時間が必要な状況です。 ロービジョンケアでは、残っている網膜の機能を最大限に活用して、少しでも社会生活を送りやすく工夫します。まぶしさを和らげて見やすくする遮光眼鏡、活字を見やすくするルーペや拡大読書器などを患者さんの病状に合わせて選びます。白杖を持つことにより、自分が視覚障害者であることを周囲に知らせることができますが、白杖で安全に歩行するには訓練を受けることが必要です。

引用:日本眼科学会
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/momaku_shikiso.jsp

鈴木美保 医師 トヨタ眼科クリニック 院長ドクターの解説
網膜色素変性症になったら、積極的に治療を行うというよりも、症状の進行に合わせていかに日常生活を不自由なく過ごすかという点を重視します。患者さんは日差しが強い場所にいると眩しく感じやすく、さらに紫外線に長時間さらされると病気が悪化しやすいとも言われているため、外出時は、遮光眼鏡、つばの大きな帽子、サンバイザーなどを活用して目を守るよう心がけてください。紫外線を遮る遮光眼鏡は一般的なサングラスとは違う特殊な作りになっていて、青色の光だけをカットします。視覚障害の身体障害手帳を持っている人は、遮光眼鏡をはじめとするロービジョンケアに必要な用具を購入する際に、公的な給付を受けることができます。

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