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80歳になった時、あなたの歯は何本残っていますか?

 更新日:2023/03/27

こんにちは、埼玉県さいたま市浦和区にある『ナカニシデンタルクリニック』院長で日本歯周病学会歯周病専門医の中西伸介と申します。
みなさんは8020運動をご存知でしょうか?80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動です。言うまでもなく自分の歯でなんでも咀嚼できることは健康や生活の質(QOL)の向上にはとても重要なことです。
口腔の健康に対する関心も上昇しており、平成28年度の調査では80歳で20本以上自分の歯が残っている方の割合は51.2%と報告されています。
また最近ではオーラルフレイルという言葉もよく使われるようになってきています。オーラルフレイルとは口腔機能の低下(噛めない、飲み込めない、発音しづらいなど)による身体の衰え(フレイル)の一つです。健康と機能障害の間の状態ですが早期発見と対応により健康に近づくことが可能となります。
つまり全身の健康管理には、歯を失わないようにすることが大事です。

執筆歯科医師
中西 伸介(日本歯周病学会専門医)

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《保有資格》
日本歯周病学会認定歯周病専門医、臨床歯周病学会歯周病認定医等。

《自己紹介》
ナカニシデンタルクリニック院長の中西です。近年、歯周病と全身疾患との関連性もわかってきています。歯周病や虫歯は一度なってしまうとそのあといくら頑張って磨いても治ることがないのが実情です。そこでどうせ治らないとあきらめないで一日でも早めの治療をしましょう。

 歯の喪失の現状

歯の喪失は高齢になる程多くなり、後期高齢者(75歳〜)では平均14本の喪失が生じています。通常歯の本数は親知らずを除いた場合28本ですので。

 抜歯の原因は?

抜歯の原因は歯周病が一番多く、そのほかはむし歯、破折(歯が割れてしまう)が主な原因になります。
2005年の調査では歯周病が42%、むし歯32%、その他13%、破折11%でした。
その他というのはほとんどが親知らずの抜歯となります。また破折の多くが神経を取った後に被せ物をした差し歯が多いので原因はむし歯由来と考えることもできます。つまりむし歯と歯周病が抜歯の原因の8割近くを占めることになります。

 前歯と奥歯はどちらが失いやすい?

奥歯から失われる率が高く、年齢が若いうちは虫歯が多く、失った歯の数が増えてくると歯周病が原因となる場合が多いです。
噛む力を支えている奥歯が失われると前歯の負担が多くなり、前歯もより失われやすくなるという悪循環が生じてしまいます。

 リスクの高い歯は?

抜歯となるリスクの高い歯は身処置歯の虫歯、冠が装着されている歯、義歯の金具がかかっている歯、歯周病が進行している歯となります。
上下で比較すると下顎の歯の方が多く失われます。特に第一大臼歯(六歳臼歯)の場合では50歳前後で1/4ほど失われているという報告もされています。

 日本人の歯周病の実態は?

歯周病の有病率は近年やや減少してきていますが高齢者の半数以上は歯周ポケットが存在し、歯周病の症状も出ていますので高いのが現状です。
検査をして歯石の付着や軽度の歯肉の腫れも含めると日本人の8割以上の方が健康な歯周組織ではない、つまり重症度は別として歯周病といった考え方もできます。

 歯周病の自覚症状やセルフチェックは?

初期の場合には自覚症状はほとんどありませんが口臭や歯肉の腫れや出血、歯の揺れや咀嚼時の痛みといったものが挙げられます。気になる症状がある場合には歯科医院での検査が必要となります。

 歯周病の検査は?

歯周病の検査は専用の器具を用いて歯周ポケットの深さを調べるプロービング検査やレントゲン写真撮影を行い歯を支える歯槽骨の量を調べます。また口腔内のサンプルを採取して行う細菌検査や口腔内の写真撮影を行い歯や歯肉の状態を記録し保存することもあります。噛み合わせの状態や診断を行うために型取りをして模型を作成する場合もあります。

 歯周病の予防は?

歯周病予防で重要となってくるものはプラークコントロールです。プラーク(歯垢)がたまらないようにすることで歯石の沈着やバイオフィルム(細菌が作る薄い膜)の形成を防ぐことができます。
口腔清掃には自身で行うセルフケアプロフェッショナルケアがありますがセルフケアでは歯ブラシによる十分な清掃に加えて歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシといった補助的な清掃用具を用いてしっかりとブラッシングをすることが重要になります。プロフェッショナルケアでは歯科医院でセルフケアでは取り除けない歯石などを取り除き、治療後に歯垢や歯石が付きづらくなるように歯の表面の研磨や消毒などを行うPMTC(プロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング)を行います。

 まとめ

いかがでしたでしょうか?80歳になった時にご自身の歯は何本残っているでしょうか?歯の喪失の原因の一位は歯周病ですので、予防と治療が非常に重要となってきます。きちんとしたケアや診断を行えるような歯周病認定医及び専門医が在籍している歯科医院での治療を是非おすすめします。

この記事の監修歯科医師