歯周病(歯周炎・歯肉炎)とは|原因・症状・予防について解説
日本では、30歳以上の約80%が歯周病といわれています。なぜ、これほど多くの方が歯周病にかかってしまうのでしょうか。
今回は、歯周病とはどのような病気なのか、原因・リスクを高める要因・症状・歯周病を予防するためのポイントなどについて詳しく解説します。
歯周病が気になっている方は参考にしてください。
監修歯科医師:
山田 潔(医療法人社団山田歯科成瀬クリニック)
目次 -INDEX-
歯周病(歯周炎・歯肉炎)とは?
歯周病とは、細菌により歯の周囲に炎症が起こる病気です。最初は歯茎に炎症が起きる「歯肉炎」という状態から始まり、歯茎の腫れなどがみられるようになります。
そして歯肉炎から症状が進み、歯と歯茎の隙間である歯周ポケットや、歯を支えている歯槽骨にまで炎症が広がった状態が「歯周炎」です。歯槽骨が炎症を起こすと骨が溶けたような状態になり、最終的には歯がグラグラと動揺して抜け落ちてしまう場合もあります。
公益財団法人8020推進財団が行った「平成30年(2018年)の第2回永久歯の抜歯原因調査」によると、歯科で行われた抜歯の原因の中で多かったのが歯周病(37.1%)でした。
歯周病の原因やリスクファクターは?
では、なぜ多くの方が歯周病になってしまうのでしょうか。ここからは、歯周病が起こる原因や、リスクを高める習慣・基礎疾患について解説します。
原因は歯垢(プラーク)に含まれる歯周病原細菌
健康な方の口腔内にも、通常400~700種類の細菌が常在しているといわれています。この中には歯周病の原因となる細菌も含まれますが、口腔ケアが十分に行き届いていれば炎症になることは稀です。
一方、歯磨きが不十分であったり糖分を摂る機会が増えたりすると、細菌が通常よりも繁殖して歯垢(プラーク)という粘性のあるかたまりを形成します。1mgの歯垢には1億個ほどの細菌が含まれるとされ、この歯垢(プラーク)を長時間放置することがむし歯・歯周病の原因です。
喫煙者は非喫煙者より歯周病の割合が高い
歯周病のリスクファクターとしては、喫煙習慣が挙げられます。喫煙が歯周病の発症・治療に及ぼす影響は、下記の通りです。
- 歯周病を発見しにくくなる
- 歯周病を発症しやすくなる
- 歯周病の治療効果が上がりにくい
この3つの影響に共通する原因は、煙草に含まれるニコチンと考えられます。ニコチンには血管を収縮させる作用があるため、口腔内が煙草の煙に晒される時間が長いほど歯茎の血行が悪くなるでしょう。その結果、歯周病になっても出血しにくいため発見が遅れやすくなります。また、ニコチンは白血球の活動を低下させるため、細菌が繁殖して歯周病が進行しやすくなります。
さらに、ニコチンは血管を収縮させるだけでなく傷を治す働きをする線維芽細胞の働きも抑制してしまう物質です。これにより、酸素・栄養素などが十分に行き届かなくなるうえに傷を治す機能も低下し、治療を行っても回復が遅くなるのです。
喫煙習慣がない方と比較すると、1日10本以上煙草を吸う方が歯周病にかかる確率は5.4倍で、10年以上の喫煙歴がある方は4.3倍といわれています。
糖尿病の人は歯周病が進行しやすい
歯周病の2つめのリスクファクターとして挙げられるのが糖尿病です。喫煙による血行不良・免疫機能の低下が歯周病のリスクとなることに触れましたが、糖尿病の方も血流障害を起こしやすく、また免疫機能が低下しやすいといわれています。
喫煙の場合はニコチンにより血管が収縮して血行が悪くなりますが、糖尿病では動脈硬化が進み血管自体の柔軟性が失われ、血液の通り道が狭くなることが血行不良の原因です。また、血糖値が高い状態が続くと免疫細胞の働きが低下して感染・炎症を起こしやすくなります。
血糖値の高さを示す指標に「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」がありますが、この値が7.0%を超えると歯周病の悪化が加速し始めるでしょう。なお、HbA1cの正常値は6.0%であり、6.5%を超えると糖尿病が強く疑われます。こうして数字でみると、正常値から1%上昇しただけで歯周病のリスクが上がることに驚く方もいるかもしれません。
今回は、特に歯周病のリスクを上昇させる喫煙・糖尿病について詳しく紹介しましたが、この他にも歯周病には下記のようなリスク因子があります。
- 咬合性外傷(噛み合わせによる負担)
- 不適合補綴物(合っていない銀歯など)
- ホルモンバランス
- ストレス
- 遺伝
- 肥満
- 家族間感染
歯周病が気になって受診する方は、上記のような背景についても併せて歯科医師に伝えましょう。
歯周病の症状
では、実際に歯周病になるとどのような症状が現れるのでしょうか。「自分は歯周病ではないか」と気付くきっかけとなる症状についても紹介するので、参考にしていただければ幸いです。
歯茎から血・膿が出る
健康な歯茎は薄いピンク色ですが、歯茎が炎症を起こす「歯肉炎」になると歯茎が腫れて赤くなります。このような歯茎は出血しやすい状態です。
出血に気付く場面としては、歯を磨いたときに歯ブラシの毛に血液が付いたり、歯磨き後に口をゆすいだりすると血液が混じるなどが挙げられます。さらに症状が進むと、歯磨きなどの外的な刺激がなくても歯と歯茎のあいだに血がにじんだり、「歯周炎」の状態になり歯茎から膿が出たりし始めます。歯茎が腫れると、歯と歯茎の間に歯垢(プラーク)が溜まりやすくなるため、歯周病自体も進行しやすくなるでしょう。
口臭がひどくなる
口臭の9割は口腔内の問題に起因するとされており、中でも代表的な原因が歯周病です。
歯周病になると口臭が発生する理由は、歯周病の原因菌のうち「嫌気性菌」と呼ばれる細菌です。この細菌が硫化水素・メチルカプタンなど悪臭の原因となる物質を作り出し、歯周病になると口臭が強くなります。
歯肉が退縮する
歯肉が下がり歯の根元がみえるようになった状態を「歯肉退縮」といいます。原因は強すぎる歯磨き・加齢・噛み合わせなど多岐にわたりますが、歯周病も原因の1つです。歯周病になると炎症により歯茎の組織が傷むほか、歯茎の土台となっている歯槽骨が溶けることにより、歯茎そのものが下がります。
もし「歯が長くなったようにみえる」と感じたら、歯肉が退縮したサインかもしれません。歯肉が退縮すると、見た目に変化が起こるだけでなく歯自体の強度も下がります。
なぜなら、歯茎より上にある歯はエナメル質という固い組織で覆われていますが、歯茎の中にある歯の根元は、象牙質・セメント質などエナメル質よりも柔らかい組織でできているからです。弱い組織が歯茎の外に出てしまうと、知覚過敏・むし歯など歯周病以外の口腔トラブルにつながる可能性もあります。
歯槽骨が溶ける
歯槽骨とは、歯茎の中にあり歯の根元を支えている骨です。骨が溶けていることは外見上ではわかりませんが、歯肉の退縮・歯のぐらつき・歯の根元に隙間が空いているなどの症状がみられた場合は、歯槽骨が溶けている可能性があります。ところで、なぜ歯周病になると歯槽骨が溶けてしまうのでしょうか。
実は、人の身体は炎症が起こると骨を破壊する「破骨細胞」が活性化するという仕組みになっています。そのため、歯肉に起きた慢性的な炎症が広がると破骨細胞は活性化して歯槽骨を吸収し始めるのです。歯槽骨が溶けると、支えを失った歯は下記のような状態になります。
- 歯が揺れる
- 硬いものが噛み切れない
- 自然と歯が抜け落ちる
歯が抜けるほど揺れていたら痛いのではないかと疑問に感じるかもしれませんが、炎症・出血・歯の揺れなどがあるにもかかわらず強い痛みはないというケースも多いのも歯周病の特徴です。
歯周病の予防方法
歯周病の症状は生活に悪影響を及ぼすため、このような状況になる前に予防することが大切です。では、歯周病を予防するためにはどのような方法があるのでしょうか。自分でできる対策と、歯科医院で行う対策についてまとめました。
意識して積極的なケアを行うことが有効な予防策
歯周病の原因は、歯に付いている歯垢(プラーク)です。そのため、炎症が広がらないうちに原因を取り除くことが有効な予防策となります。
しかし、歯周病は強い痛みなどが出にくく「予防・治療しなくては」という意識付けが難しい病気といえるでしょう。そのため、一人ひとりが無症状のうちから積極的なケアを習慣づけることが大切です。具体的なケアの方法としては、毎日の歯磨き・定期的な歯科医院の受診が挙げられます。
毎日正しい歯磨きを行う
歯周病を引き起こす歯垢(プラーク)は、食後およそ8時間で形成されるといわれています。そのため、食後は早めに歯垢(プラーク)のもととなる細菌・糖質を取り除くことが大切です。
また、もし歯垢(プラーク)が形成されたとしても、適切な方法で歯磨きをすることで歯の表面にある歯垢(プラーク)は取り除くことができます。既に歯肉の炎症・出血がみられる場合でも、正しい歯磨きを習慣化することで炎症が次第に治まるでしょう。炎症が治まった歯肉は徐々に引き締まり出血も減少するため、歯磨き自体もしやすくなるはずです。
定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける
メンテナンスとは、口腔内を健康な状態に保つための定期的なクリーニングです。メインテナンスは歯周病の予防のほか、歯周病治療後の再発予防としても効果が期待されます。歯周病予防のためには毎日の歯磨きが非常に重要ですが、下記のような場合は自宅での歯磨きのみで十分な効果が得られない可能性があります。
- 歯周ポケットの奥に歯垢(プラーク)がある
- 歯並びの関係で磨きにくい部位に歯垢(プラーク)がある
- 時間が経過し歯垢(プラーク)から歯石になってしまった
また、磨き方の癖によって磨き残しが出ることもあるでしょう。そのため、日頃の歯磨きに加えて歯科医院での専門的なクリーニングを受けることが大切です。メンテナンスでは、歯科医師・歯科衛生士が器具を使用しながら歯面・歯周ポケットの歯垢(プラーク)などを除去していきます。
歯周病の予防・治療のことなら山田歯科成瀬クリニックにご相談を
歯周病の原因・症状・予防についてご紹介してきました。
もし「気になる症状がある」「歯周病を予防したい」と感じた方は、専門的な視点から予防・治療を行っている山田歯科成瀬クリニックにご相談してみてはいかがでしょうか。どのような特徴があるクリニックか紹介しますので、受診を検討している方はぜひ参考にしてください。
日本歯周病学会認定歯周病専門医と歯周病認定衛生士による専門治療
日本歯周病学会では、歯周病治療について専門的な研修を修了し、十分な知識・技量を獲得した歯科医師に対して歯周病専門医として認定を行っています。
山田歯科成瀬クリニックの院長は、日本歯周病学会認定歯周病専門医を取得した歯科医師です。
また、メンテナンスでは歯科衛生士が歯面清掃を行うこともありますが、山田歯科成瀬クリニックには歯周病認定衛生士の認定を受けたスタッフが在籍しています。
治療やメンテナンスは歯科医師・歯科衛生士の資格があれば行えますが、山田歯科成瀬クリニックであれば、歯周病の専門的な知識・経験を持ったスタッフから処置を受けられるでしょう。
Er:YAGレーザー装置アーウィン アドベールによる歯周病レーザー治療に対応
山田歯科成瀬クリニックでは、Er:YAGレーザー装置「アーウィン アドベール」を使用した歯周病治療も行っています。
Er:YAG(エルビウムヤグ)レーザーは従来のレーザーと比較して痛みが少なく、熱傷などのリスクも低いといわれるレーザーです。
また、レーザーの熱に殺菌作用があるため、YAGレーザーを使用した歯石除去などを行うと歯周病の治癒を早く行うことができ、再発予防効果もあるともいわれています。
院長が専門的な視点から歯周病の早期発見と治療の重要性を提唱
山田歯科成瀬クリニックは歯周病の専門的知識を持ったスタッフが在籍するクリニックです。しかし、歯周病などの重症例だけでなく、口腔内の健康を保つための予防治療・プラークコントロールといった診療にも力を入れています。
山田歯科成瀬クリニックでは、悪くなっている歯だけを治療するのではなく、悪くなる原因をしっかり調べ、その根本から解決することを大切にしているそうです。そのために精密な検査を行い、患者さん一人ひとりがご自身の状態を把握するために丁寧なカウンセリングを行っています。悪いところはどう治していくか治療方法を提案、悪くないところは将来的なリスクを回避させる予防方法を提示しているといいます。
「今は特に自覚症状がない」という方も、将来の歯・口の健康のために山田歯科成瀬クリニックに相談してみてはいかがでしょうか。
山田歯科成瀬クリニックの基本情報
アクセス・住所・診療時間
JR横浜線 成瀬駅 徒歩3分
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00~12:30 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | - | - |
14:00~18:00 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | - | - |
休診日:日曜日・祝日
参考文献
- 第2回 永久歯の抜歯原因調査報告書
- 歯周疾患の自覚症状とセルフチェック|e-ヘルスネット[情報提供]
- プラーク/歯垢(ぷらーく)|e-ヘルスネット[情報提供]
- 歯周病と煙草の関係|特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
- 口臭について|特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
- 歯周病の治療方法|特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
- 歯のメインテナンス|特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
- 糖尿病と感染症のはなし|国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
- HbA1cの新目標値と施行について|一般社団法人 日本糖尿病学会
- 歯周病における骨破壊メカニズム~破骨細胞を形成・活性化する因子~|J-STAGE
- 歯周病とは?|特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
- 予防歯科・プラークコントロール|山田歯科成瀬クリニック
- スタッフ紹介|山田歯科成瀬クリニック
- 専門医による歯周病治療|山田歯科成瀬クリニック
- レーザーによる歯石除去
- 日本歯周病学会認定資格について|特定非営利活動法人 日本歯周病学会