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前歯のインプラント治療が難しいといわれる理由|失敗例やメリット・デメリットも併せて解説します

 更新日:2023/08/16
歯を見せる女性

インプラント治療は、歯を失った部分に人工歯根や人工歯を入れて機能を回復させる治療方法です。

歯を綺麗にでき咀嚼力も取り戻せ、非常にメリットも多いです。しかし、インプラント治療は奥歯と前歯で難易度が異なることをご存じでしょうか。

実は、前歯のインプラント治療は非常に難しいといわれています。そこで本記事では、前歯のインプラント治療が難しいといわれる理由をご紹介します。

失敗例・メリット・デメリットも併せて解説するので参考にしてください。

太田 一伸

監修歯科医師
太田 一伸(太田歯科クリニック)

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静岡県立静岡高校、岐阜歯科大学を卒業後、勤務医を経て1988年に太田歯科クリニック開院。同年ストローマン・インプラントを導入し、常に新しい技術と知見でインプラント技術の向上と普及に務めている。
日本口腔インプラント学会専門医。日本歯科審美学会や日本歯周病学会、デンタルコンセプト21など参加学会多数。ITIメンバー。AO(アメリカインプラント学会)アクティブメンバー。

前歯のインプラント治療は失敗が多い?

歯磨きをする女性
インプラント治療は、歯の欠損部分に人工歯根を埋め込んで、アバットメントを繋げて人工歯を装着する治療法です。
先進医療とされています。しかし、前歯においては、治療の成功率は低いといわれています。
これは、前歯には比較的骨量が少ない一方で、咬合力が強いためインプラントがしっかりと固定されないことが原因です。
また、前歯においては、歯肉の持続性も重要な要素となります。前歯においては、歯肉が浅く再生に時間がかかり、インプラントの曝露が高いことも原因とされています。
そのため、前歯におけるインプラント治療の失敗事例は奥歯の治療に比べて多いです。

前歯のインプラント治療が難しいといわれる理由

電話をしながら悩む女性
前歯のインプラント治療に失敗が多いことをご紹介しました。それでは、なぜこのように失敗する可能性があるのでしょうか。
前歯のインプラント治療をお考えの方であれば、失敗の理由などを知ることは大変重要です。そこで、ここでは失敗の理由をご紹介します。

顎の骨の厚さによって必要な治療が増える

前歯のインプラント治療が難しいといわれる理由が、顎の骨の厚さによって必要な治療が増えるためです。日本人の顎の骨は薄い傾向があります。
特に前歯は、顎の骨が薄い構造です。そのため、そのままの状態でインプラントを埋め込むだけでは、骨の厚みが不足する可能性があります。
そこで、必要となるのが骨の厚みを増やす治療です。これは外科手術となり、奥歯の場合などでは通常必要のない治療です。
これらの治療が増えるため、手術の難易度が増してしまい、困難な手術となってしまいます。また、骨の厚みを増す治療は、合併症のリスクもあるため注意が必要です。

費用が高い

費用が高い点も難しいといわれる理由の一つです。先述した通り、インプラント治療はそもそも先進医療であり、高度な知識や技術が必要になります。
そのため、高額な治療費が必要です。しかし、前歯のインプラント治療となるとさらに専門的な治療技術が必要となるため、その分の治療費が上乗せされてしまいます。
その結果、非常に高額な費用となってしまいます。とはいえ、前歯が必ずしもインプラント治療ができない程、薄いとは限りません。
骨が薄くて特別な治療が必要かどうかは、CT撮影などを行ってみないとわからないため、歯科医に相談してみると良いでしょう。

前歯のインプラント治療の失敗例とは

男性の手とはてなマーク
前歯のインプラント治療の失敗例としては、次のようなものが挙げられます。

  • インプラントがしっかりと固定されず、取り外されることがある場合
  • インプラント周りの歯肉の炎症が起こり、歯肉が浅くなることがある場合

例えば顎の骨が薄い患者様においては、インプラントを固定するための骨が不足した状態です。そのため、インプラントが安定しないことがあり、取り外されるケースがあります。
また、インプラント周りの歯肉の炎症が起こり、歯肉が浅くなることも失敗例に挙げられます。
これはインプラントが曝露し、細菌が入り込んで炎症を引き起こし、歯肉が浅くなるためです。
もちろん成功した事例もありますが、高い成功率をもつ治療とはいいきれません。失敗する可能性もあることを理解して治療を進める必要があるでしょう。

どのようなケースのときにインプラント治療を選ぶ?

レントゲンを見せる医師
前歯のインプラント治療は、失敗する可能性があり、その理由についてもご紹介しました。
しかし、まずどのようなときにインプラント治療を選ぶのでしょうか。他にも治療方法がある中で、インプラント治療を選ぶケースをご紹介します。

事故などで前歯が欠損した

主なケースとしては、事故などで前歯が欠損したときが挙げられます。
例えば、スポーツなどで歯を折ってしまった場合や交通事故などで歯を失った場合には、インプラント治療が選択肢の一つです。
早い対応ができる可能性があるため、インプラントが有効となります。また、事故などで欠損するケースが、歯の周りの骨が比較的良い状態で残っている場合が多いことも理由です。
特に若い方の場合、周囲の歯を削らずに治療ができる可能性があります。可能な限り欠損する前の状態に近づけるためにも、インプラント治療は有効といえるでしょう。

歯が足りない

口元
歯が足りない場合も、インプラント治療を選ぶケースの一つです。例えば、歯周病や虫歯などが原因で、大臼歯や一番奥の歯が抜けてしまうことがあります。
すると、他の歯にも影響を与えて、ぐらついて噛めなくなるケースが非常に多いです。歯が次第に少なくなると、残った歯に負担がかかります。
治療方法には、ブリッジや入れ歯がありますが、これらの治療方法が適した状況ではないケースが多いです。かえって、残った歯を早期に失うリスクもあります。
しかし、こういったケースでもインプラント治療は効果を発揮します。他の歯にも負担を欠けず、全ての歯がきちんと機能する状態に回復できるため、非常に適しているのです。

抜歯する場合

抜歯するケースインプラント治療を選ぶケースの一つです。何らかの治療で抜歯が必要となる際に、その穴をどのようにして治すかを決めます。
このとき、他の治療でも問題はありませんが、インプラント治療であれば見た目も綺麗で咀嚼力も回復します。
他の治療にはないメリットも多いため、このようなケースではインプラント治療を選ぶ方も少なくありません。

前歯をインプラントで治療するメリット

歯ブラシを持つスタッフ
インプラント治療を選ぶ具体的なケースをご紹介しました。それでは、前歯をインプラントで治療するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
前歯は難しいといわれながらも、メリットがあるため多くの方が治療を決心しています。ここでは、前歯をインプラントで治療するメリットをご紹介します。

健康な歯への負担がかからない

まず健康な歯への負担がかからない点が大きなメリットです。インプラント治療は、ブリッジのように、周囲の歯に被せ物をするわけではありません。
また、入れ歯のように周囲の歯に金属で固定する分けでもありません。そのため、他の歯への負担が圧倒的に少ないです。
これは、インプラントが単体で自立できているためです。治療期間が長いことや費用が高額である点はありますが、他の歯を失うリスクを下げられる点は大きなポイントでしょう。
また、歯茎への負担が少ない点も魅力です。ブリッジや入れ歯は、噛めはしますが、歯茎に負担をかける可能性があります。
周囲の歯や歯茎を、これからも健康に維持できるためインプラント治療のメリットは大きいです。

見た目が綺麗になる

見た目が綺麗になる点もメリットの一つです。インプラント治療は、歯を失った部分の見た目を綺麗に取り戻せます。
その見た目の美しさは、前歯をインプラントにすると、より一層実感できるでしょう。もちろん、他の治療方法でも違和感のない綺麗な治療は可能です。
しかし、中には保険適用外の素材を使用しなければ、美しく仕上がらないケースもあります。
一方、インプラントであれば自然の歯の色に近いセラミックで人工歯を作ります。そのため、素材に左右されずに綺麗な見た目を手に入れられるのです。
また、入れ歯であれば金具が見えてしまいますが、インプラントではそのような金具はありません。
例え歯茎が痩せてしまっても、少し透けて見える程度で目立つことはないため、違和感のない歯を実感できます。

自分の歯と同様に噛める

自分の歯と同様に噛める点も大きなメリットです。インプラントは、その構造上顎からの噛む力をそのまま歯に伝えられます。
入れ歯やブリッジの場合は、直接歯に埋まっているわけではないため、顎の力がきちんと伝わりません。そのため、自分の歯と同様に噛めるわけではないです。
インプラントであれば、顎の力がきちんと伝わるため、十分な咀嚼力を実現します。自分の歯と同様に噛みしめられるため、食事時間も問題なく快適に過ごせるでしょう。
例えば、入れ歯では食いちぎるのに苦労する肉なども、インプラントであれば問題なく食いちぎれます。
また、十分な咀嚼力を実現できる点は、胃腸への負担の軽減にもつながります。きちんと噛めていない食事は、そのまま胃に運ばれると消化不良を起こす可能性が高いです。
このような面でも、インプラント治療には大きなメリットがあります。

発音を改善できる

インプラント治療には、発音を改善できるメリットもあります。入れ歯やブリッジでも、問題なく話せはしますが、発音に支障をきたす可能性は高いです。
それは、どうしても強く噛む際に取り付けている入れ歯やブリッジが振動したり外れそうになったりしてしまうためです。
しかし、インプラント治療であれば、しっかりと骨に結合しているため外れたり振動したりする心配はありません。
そして、この問題は発音にも影響します。振動や外れる心配を感じてしまって、普段通りに発音ができなくなる可能性があります。
インプラントであればこのような心配はなく、顎からの力が直接伝わるため、綺麗な発音が可能です。

前歯をインプラントで治療するデメリット

バツのポーズ
前歯をインプラントで治療するメリットをご紹介しました。しかし、もちろんデメリットもあります。
前歯のインプラント治療を行うかどうかを考えるには、メリットとデメリットを比較する必要があるでしょう。ここでは、インプラント治療にあたってのデメリットをご紹介します。

定期的なメンテナンスが必要

デメリットの一つが、定期的なメンテナンスが必要な点です。インプラント治療は、どの場所の治療であっても定期的なメンテナンスを必要とします。
メンテナンスを怠った場合、口の中の健康状態が悪化し、インプラントの寿命も短くなる可能性があります。
そのため、治療前以上に丁寧なメンテナンスが必要だと考えた方が良いでしょう。また、定期メンテナンスはご自身でするものばかりではありません。
歯科医によって行われるものもあるため、定期的に歯科医院を訪れる必要があります。この時間や手間もデメリットに挙げられるでしょう。

治療費用が高い

治療費用が高額である点もデメリットです。インプラント治療には、生体親和性の高いチタンやチタン合金などの高価な金属が使われます。
そのため、材料費の影響で高額です。さらに、保険適用されない自由診療扱いなので、治療にかかった費用は全額自己負担です。
手術も専門的な技術が必要となるものなので高額であり、これらの理由から、他の利用と比べると治療費用は非常に高くなります。

手術が必要

手術が必要な点もデメリットの一つです。インプラントは、金属製の人工歯根を骨に埋め込むため、歯茎の切開など手術が必要です。
そのため、手術を受けるための準備としてさまざまな検査や麻酔も必要であり、手間やリスクを伴います。特に麻酔は、リスクがあるため適切な説明を受ける必要があります。
手術は一般的に短時間で完了しますが、手術後には痛みや腫れが伴うこともあるでしょう。また、手術後の一定期間は、食事制限や治療によって、一般的な生活に支障をきたします。

歯科医の技術によって仕上がりが変わる

歯科医に技術によって仕上がりが変わる点もデメリットです。前歯はインプラント治療の中でも難易度が高いです。
インプラント治療は見た目が綺麗になるとご紹介しましたが、難易度が高い分、仕上がりが歯科医の技術力に左右されてしまいます。
特に前歯は印象を左右する大切な場所のため、技術力によって見た目が左右される点は大きなデメリットに感じてしまうかもしれません。

インプラント治療の流れ

歯科クリニックの看板
前歯のインプラント治療のメリットやデメリットをご紹介しました。これらを踏まえたうえで、インプラント治療を選択するかを選ぶ必要があります。
しかし、治療を選択するのであれば、治療の流れを押さえることも重要です。インプラント治療の流れは、まず検査から始まります。
検査では、歯科専用CTを使用して、神経・血管の位置・顎の骨の構造・傾きなどを調べます。次がカウンセリングです。
ここでは、正しい症状を知ると同時に、治療に対する不安や悩みにお答えします。歯科医とコミュニケーションを取れる大切な場です。
カウンセリングが終わったら、治療計画を歯科医から提案されます。インプラント治療は、治療期間や回数が異なるため、細かく計画の確認が大切です。
計画が立てられたら、一次手術が行われます。一次手術では、切開を行い人工歯根を埋め込みます。手術時間は1時間~3時間です。
一次手術が終わったら治療期間となります。骨と人工歯根がしっかりと結合できたら、次のステップに移行します。一般的な治療期間は、2カ月~3カ月です。
次に二次手術を行います。再び切開して、人工歯根にアバットメントを取り付けます。手術時間も短く、日帰りが可能です。
二次手術を終えて、1週間~6週間程度したら歯茎も治ります。次は、歯型を取って、人工歯の作成を行います。作成できたら、固定して治療は一度終了です。
しかし、この後は定期的なメンテナンスが必要です。インプラントが緩まっていないかや噛み合わせの確認などを行い、状況に応じて適切なメンテナンスを行います。

インプラント治療を受けられない人

レントゲンで説明をする歯科助手
インプラント治療の流れをご紹介しました。それでは、インプラント治療を受けられない方はいるのでしょうか。
実は受けられないケースもあります。該当する方はインプラント治療を選択できないため、ご自身が該当していないかを確認しましょう。

顎の骨が薄い

インプラント治療は、顎の骨に人工歯根を埋め込んで固定する治療方法です。そのため、顎の骨が薄く、骨密度が低い方は治療を受けられない可能性があります。
例えば、骨粗鬆症を患っている方であれば、難しいでしょう。骨の薄さや密度に不安がある方は、まず事前に骨の状態を調査することが大切です。

口内トラブルがある

口内トラブルがある方も、インプラント治療は受けられない可能性があります。例えば、虫歯や歯周病などです。
これらのトラブルが発生している状態で治療を行うと、感染症のリスクがあります。細菌感染を引き起こすと、インプラントの寿命を早めてしまいます。
そのため、インプラント治療を行う前に、きちんと口内トラブルを改善しておかなければなりません。

インプラント治療は重度の持病がある人も要注意

ヘルプマークと男性
インプラント治療重度の持病がある方も注意が必要です。治療ができない可能性があります。
インプラント治療は、先述したように外科手術です。そのため、持病の種類によっては命の危険が伴う可能性があります。
主な持病としては、糖尿病・高血圧・心疾患などが挙げられます。必ずしも受けられないわけではありませんが、病気の重症度によって変わるため注意が必要です。

編集部まとめ

歯科医院の看板
インプラント治療は、入れ歯やブリッジなどの他の治療方法にはない、メリットが大きい治療方法です。
特に前歯は印象を左右するため、綺麗に整えられるインプラント治療は魅力が大きいでしょう。
咀嚼力を取り戻せ、健康な歯に負担をかけることなく、発音も改善できます。しかし、デメリットもあります。また、一部の治療を受けられない方もいるため注意が必要です。
ご自身がインプラント治療に適しており、前歯の治療が可能かどうかを判断するためにも、まずは歯科医に相談しましょう。

この記事の監修歯科医師