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肺腺がん
松本 学

監修医師
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

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兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

肺腺がんの概要

肺腺がんは、肺にできる悪性腫瘍(がん)のうち、上皮細胞由来の肺がんのうちのひとつです。

肺がんは、細胞の増殖が早く転移や再発をきたしやすい小細胞がんと、非小細胞がんに分けて考えることが多く、非小細胞がんは、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに大きくは分類されます。
これらの4つの肺がんの分類の中で、肺腺がんは患者数が最も多く全体の半分ほどを占めています。

肺腺がんは、肺の末梢部位に発生しやすいことから、初期症状が現われにくく、また、喫煙習慣がない人でも発症しやすいという特徴があります。脳や骨などに転移することもあり、進行状態によってさまざまな治療が行われます。

肺腺がんの原因

がん化は加齢や生活習慣、環境要因などによって起こる、細胞の増殖と増殖抑制を司る遺伝子の変異が基になることが多いものです。遺伝子の変異により発生した肺腺がんは、細胞分裂を繰り返すことで大きくなります。

大きくなったがんはリンパ節に転移したり、リンパ・血液の流れに乗って運ばれ、全身の臓器に転移する可能性があります。成長した病変が血管を圧迫して腕や顔のむくみを引き起こす場合もあります。

肺腺がんの前兆や初期症状について

肺腺がんは肺の末梢に発生するため、初期症状が現われにくい傾向があります。

咳や痰が2週間以上続いている場合や、痰に血が混じっているような場合には、肺腺がんの症状である可能性もあるため医療機関を受診しましょう(感染症や喘息の可能性もあります)。

喫煙歴がある人で、喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の場合は、肺がんのリスクが高いため、症状が現われていない場合でも検診を受診しましょう。

肺腺がんの検査・診断

検診では問診、胸部レントゲン検査と喀痰検査を行います。

胸部のレントゲン検査は、胸部にX線を照射して撮影し、がんを疑う影がないか調べる検査です。

喀痰検査はがん細胞が痰の中に排出されていないかを確認する検査であり、痰を3日分とり細胞を観察します。喀痰検査は、50歳以上かつ喫煙指数が600以上である場合に行います。
(出典;がん情報サービス 肺がん検診について)

胸部のレントゲン検査や喀痰検査でがんが疑われた場合は、胸部のCT検査や組織診を行います。

胸部のCT検査は身体の輪切り状の画像を撮影し、肺の状態を確かめる検査です。
病変があった場合、CTではすりガラス結節や結節、腫瘤といった特徴的な所見が見られます。

確定診断には、組織診という病理診断を行います。病変を採取してきて顕微鏡で観察するものです。組織を採取するために、気管支の中に内視鏡を挿入する気管支鏡検査などを行います。病変部位が内視鏡で届かないような場所にある場合は、皮膚の上から針を刺して組織を採取する経皮的針生検という手技も行われます。

これらの検査で病変が肺腺がんであると診断された場合には、脳や骨、全身の転移の有無を確認して治療方針を決定するために、MRI検査や骨シンチグラフィ(全身の骨のがんを確かめる検査)、PET検査(全身のあらゆる臓器やリンパ節のがんを確認できる検査)を行います。

肺腺がんの治療

肺腺がんの治療では、病変の進行度や年齢、健康度を考慮しながら外科的手術や放射線治療、化学療法が選択されます。

リンパ節や他の臓器への転移がない進行期では外科的手術が行われます。外科的手術では病変の広がりによって、がんのある肺葉(肺の部分)を切除する手術が行われます。

胸を大きく切開する開胸手術や胸を極力小さく切開して胸腔鏡を使う胸腔鏡手術で行いますが、病変が小さい場合には胸腔鏡手術が行われます。
胸腔鏡手術は、胸に2cmほどの空けた穴を数カ所空け、その穴を使って手術を行うことから、侵襲が少なく、術後の治りがよく生活の質(QOL)を高く保てる治療法です。

ある程度のリンパ節まで転移していた場合には、放射線治療と化学療法が併用されます。
放射線治療と化学療法を同時に行う化学放射線治療は、単独で使うよりも高い効果が見られますが、同時に倦怠感や食欲の低下などの強い副作用が現われます。

肺以外の臓器に転移がある場合や、がん細胞が混じった胸水や心嚢液が見られるときは、化学療法だけを選択して、転移したがんを優先的に治療することもあります。転移の痛みによる身体的・精神的苦痛があるケースでは、痛みの症状を和らげることを目的とした治療が行われます。

肺腺がんになりやすい人・予防の方法

喫煙習慣がある人は、肺がんのリスクが高くなります。
肺腺がんは、ほかのタイプの肺がんよりも、喫煙による影響が小さいく遺伝的な影響などが大きいbと言われていますが、非喫煙者と比べると喫煙者の発症のリスクは高くなっています。受動喫煙にさらされている人も肺がんになりやすいことがわかっています。
(出典:受動喫煙とたばこを吸わない女性の肺がんとの関連について)

そのほか職業歴や住環境上の理由でアスベストの吸入歴がある人や、肺結核や慢性炎症性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患になったことがある人もリスクがあります、

予防するために、喫煙習慣がある人は禁煙に取り組みましょう。
禁煙を10年間した場合、肺がんのリスクは喫煙者の半分ほどに下がり、さらに発症後も進行を含む予後に良い影響があることが分かっています。

早期発見のために、対象年齢になった場合には定期的な検診を受けるのも効果的です。

関連する病気

  • 肺小細胞がん
  • 肺扁平上皮がん
  • 肺大細胞がん
  • 転移性骨腫瘍
  • 肺結核
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

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