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シンスプリント
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

シンスプリントの概要

シンスプリントは、下腿の内側、特に脛骨の下方1/3部分に痛みが現れるスポーツ障害です。この病態は主に脛骨過労性骨膜炎や脛骨内側ストレス症候群(Medial tibial stress syndrome、 MTSS)として、30年以上の研究歴があります。短距離走や長距離走、サッカー、バスケットボールなどのスポーツを行う方に多く見られます。なかでも、12歳から16歳の若者に多く発生しますが、女性の方が若干早期に発症する傾向があります。

シンスプリントの原因

シンスプリントは、硬い地面でのランニングやシーズン開始時の急激なトレーニング増加が引き金となることが多く、ランナーなどに見られやすい症状です。さらに、不適切な靴選びやクッション性の低い靴の使用、筋力の不足、筋肉の柔軟性が足りないことも原因として挙げられます。また、扁平足やO脚などの足の形状に関連する要因も、シンスプリントのリスクを高めるとされています。
これらの要因は個々の生活習慣や身体的特徴により異なり、それぞれが複合的に作用することで症状が発現しやすくなります。適切なシューズ選びや筋肉強化、柔軟性の向上に加え、運動量を徐々に増やしていくことが大切です。

シンスプリントの前兆や初期症状について

シンスプリントの初期症状は、主に運動後にすねの下の内側1/3部分で感じる鈍い痛みから始まります。痛みは最初は運動後の発生が多いようですが、状態が進行するにつれて運動中にも痛みを感じるようになります。
さらに症状が悪化すると、安静時でも痛みが持続し、最終的には日常の歩行にも支障をきたすことがあります。すねの特定の部分を押すと痛みがある圧痛が確認できることも一つの特徴です。
症状が表れた場合は、整形外科を受診しましょう。

シンスプリントの検査・診断

シンスプリントの診断には、いくつかの検査方法が用いられます。
まず、レントゲン検査では、シンスプリントの診断で直接的な異常を示すことは少ないですが、疲労骨折の場合、時間が経過すると骨膜反応という特徴的なレントゲン像が見られることがあります。これは骨折が発生した際に、骨の周りで新しい骨が形成されようとする過程を示します。

疼痛誘発検査では、脛骨の遠位1/3の内側に痛みを感じることが多く、痛みは縦方向に広がることが特徴です。一方で、疲労骨折では痛みがより局所的に現れることが多い傾向にあります。

超音波検査(US)は、脛骨周囲の骨膜の腫れを視覚化するために利用されます。検査によって、骨膜の腫れが確認されると、疲労骨折の可能性も考えられます。

MRI検査は、レントゲンで明確な異常が見られない場合に有用です。初期の疲労骨折や、シンスプリントとの鑑別を行う際に重要であり、特にT2脂肪抑制画像が詳細な情報を提供するため、より精密な診断が可能になります。

これらの検査方法を組み合わせることで、シンスプリントの正確な診断と適切な治療計画の策定が行われます。

シンスプリントの治療

保存療法

シンスプリントは、スポーツや運動によって引き起こされる過労性障害で、主に患部の適切な休息を中心とした保存治療が基本的な対処方法です。治療の初期段階では、患部を約2週間安静に保つことで症状の改善が期待できます。さらに、痛みの強い時は激しい運動を避け、アイシングで炎症を抑えましょう。

症状が慢性化しないよう、運動量を適切に調節し、定期的にストレッチや足底、足関節周りの筋トレを行うことが推奨されます。痛みが軽減されたら、さらにタオルギャザーやチューブトレーニングを取り入れ、筋肉の柔軟性と強度を向上させます。また、足湯やお風呂上がりに筋肉を温めてからの運動も、筋肉をやわらかくし、より効果的なリハビリテーションになります。

使用する靴や足底板(インソール)も重要で、土踏まずのアーチをサポートし、衝撃を軽減するタイプのものが望ましいです。トレーニング環境も考慮し、やわらかい地面での練習を心がけることが、シンスプリントの予防および治療に有効とされています。

体外衝撃波治療

シンスプリントの治療で、従来の保存治療に加えて新しいアプローチとして注目されているのが体外衝撃波治療です。元々腎臓結石の破砕に用いられていましたが、整形外科領域での利用もヨーロッパを中心に広がり、スポーツ選手にとっては低侵襲の治療オプションとして認知されています。体外衝撃波治療は、体の外から衝撃波を患部に当てることにより、痛みの軽減や損傷組織の修復の助けが期待できるとされています。

体外衝撃波治療は副反応が少なく、約15分〜30分の一回きりの外来処置での完了が多いようです。ただし、現在のところ日本では保険の適用外となるため、自費での治療となります。保存治療による改善が見られない難治性のケースや、速やかに症状を緩和したいプロのアスリートなどに、治療方法の選択肢として提供されています。

リハビリテーション

シンスプリントのリハビリテーションは、急性期の炎症を抑えることが重要です。この段階では、電気療法や超音波治療などの物理療法を取り入れ、炎症を管理します。さらに、シンスプリントの発症原因がオーバーユースだけでない場合があるため、原因を詳しく調査し、再発防止のための対策を講じます。

リハビリでは、下肢後面の柔軟性不足、足指の機能障害、偏平足などの足部の形態異常も詳細に評価します。個々の状態に合わせたアプローチが重要であり、テーピングを用いて患部の負担を軽減することも一つの手段です。

さらに、シンスプリントのリハビリは足部の問題だけでなく全身の状態にも着目します。姿勢の不良や股関節の硬さなど全身の柔軟性低下、ほかの部位の痛みを庇う歩行なども評価の対象となります。全身的なコンディショニングを行うために、専門施設でのプログラムを利用する場合もあり、体全体のバランスと機能の向上が目指されます。

シンスプリントになりやすい人・予防の方法

なりやすい人の特徴

シンスプリントは、走るスポーツやジャンプが多いアクティビティを行う方々に発症しやすい症状です。中高生の新人選手に多く見られ、急激にハードな練習が始まることが原因で発生します。また、スポーツシーズンや、長期間休んだ後に運動を再開した成人にも発生する場合があります。シンスプリントは初心者病とも呼ばれ、未経験者やトレーニングの経験が少ない方に発症しやすいとされています。

さらに、足の構造的な問題、例えば偏平足や足の回内(かかとが内側に傾くこと)のような異常がある方も、シンスプリントを発症しやすいとされています。これらの条件は、脚への不適切な力のかかり方を引き起こし、脛骨の骨膜への過度なストレスがシンスプリントの主な原因となります。したがって、陸上競技、サッカー、バスケットボールだけでなく、チアリーディングやエアロビクスを行う女性も多くなっています。

予防方法

シンスプリントの予防には、運動時のフォームの改善、適切な靴の選択、および足とふくらはぎの筋肉の柔軟性の向上が重要です。運動中の姿勢や動作が不適切だと、脛に過剰なストレスがかかり、シンスプリントのリスクが高まります。定期的に専門家によるフォームのチェックを受けることで、不適切な動作を修正し、脛への負担を軽減しましょう。

また、適切なフィット感のあるシューズを選び、すり減った靴やクッション性の低い靴は避けることが肝心です。足の形状に問題がある場合は、インソールを用いることで、足への負担を適切に分散させることができます。

足とふくらはぎの筋肉の柔軟性を保つためには、定期的なストレッチが有効です。ふくらはぎのストレッチは、壁に向かって足を前後に置き、後ろ足のふくらはぎを伸ばす動作を行うことで、筋肉の柔軟性を高め、シンスプリントの予防に寄与します。これらの予防策を日常的に行うことで、シンスプリントのリスクを減らし、健康な運動習慣を維持できます。


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