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眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

痛風の概要

痛風は、血液中の尿酸の濃度が高い高尿酸血症が原因で発症します。
尿酸が結晶化し関節に沈着し、これを白血球が処理する際に関節とその周囲に炎症を起こし激痛を起こします。
「風が吹く程度の刺激で痛い」ため痛風と呼ばれます。

突然痛みが起こることから痛風発作と呼ばれ、痛みが強く歩行困難になるほどです。
女性ホルモンには尿酸を排泄する作用があるため女性には起こりにくく、男性に多く発症します。
女性ホルモンの低下した閉経後の女性にも多く発症します。

無治療の場合、発作は繰り返し起こるため適切な治療と予防が必要になります。

痛風の原因

血液中の尿酸値が上昇し飽和溶解度を超えると、血液中に尿酸が溶解しきれなくなり、関節内に尿酸の結晶が生じます。

尿酸は、細胞中の核酸(RNAやDNA)が分解されるときの副産物です。

体内の細胞は常に新陳代謝を行うため新しい細胞が作られるとともに古い細胞が分解され、尿酸が生成されます。
体内で作られる尿酸の量が多い、もしくは腎臓で排泄される尿酸が少ないことで血液中の尿酸値が上昇します。
尿酸が高くなる原因には以下のようなものがあります。

プリン体摂取過剰

食物に含まれるプリン体は体内で尿酸に変換されます。
プリン体はRNADNAの材料です。

プリン体を多く含む食品(ビール、レバー、アジの干物、エビ、魚卵など)を摂取すると体内で尿酸に変換され尿酸値が高くなり痛風を発症しやすくなります。

さらに、アルコールは体内でプリン体の合成を促し、尿酸の排泄を抑制します。
肥満の患者さんは尿酸の排泄が悪くなります。また、高カロリー食も危険因子とされています。

危険因子

  • 暴飲暴食
  • アルコール多飲
  • 肥満

脱水やストレス

精神的ストレスは痛風発作の危険因子とされています。

また、脱水状態になると、尿酸値が相対的に上昇します。
このままの状態でいると尿酸値が上昇したままとなり、関節内に尿酸結晶を生じ痛風を起こします。

腎機能障害

尿酸は身体の老廃物です。
主に腎臓から尿として排泄され、血液中の尿酸値は一定の濃度に保たれるようになっています。

腎機能障害があり腎臓の処理能力が低下すると、尿酸を出す機能が低下するため排泄が十分にできず尿酸値が高くなります。

尿酸の過剰産生

白血病などの血液疾患や一部のがんでは、細胞の代謝が活発になり古い細胞が分解され尿酸が大量に生成されます。
そのため痛風を発症することがあります。

痛風の前兆や初期症状について

初期症状

痛風はある日突然、足の親指のつけ根が赤く腫れて激痛を起こします。
痛みは徐々に強くなり、歩けない、日常生活を送れないほどの症状となります。

疼痛部の見た目は赤く腫れ上がり、関節を動かしたり触ったりすると痛みが増強します。
痛みのピークは症状が出現してから24時間程度、痛みがなくなるまでには1〜2週間程度かかります。

痛風発作の前に、足の親指のつけ根に違和感のような予兆を感じることがあります。
そのため、痛風発作の発症を予知できることも多い傾向です。

通常、痛風発作による関節炎は1か所であることが多く、なりやすい場所もおおむね決まっています。
足の親指のつけ根が最も頻度が高い場所です。
そのほかに足首、膝、手首、肘などにも生じることがあります。
尿酸結晶は冷たい部位でより形成されやすいため、身体の末梢の部位に発症しやすいとされています。

痛風の合併症

痛風結節
痛風を放置し適切な治療を受けないでいると、尿酸結石が析出しコブのように腫れる痛風結節が出現します。

痛風結節は通常痛みを伴いませんが、放置しておくと関節内で痛風結節が破裂した結節がチョーク様の塊となり皮膚を突き破り感染を起こすことがあります。
最終的に関節の変形を起こし二次性変形性関節症を起こします。
痛風結節は関節内だけでなく、耳や皮下、アキレス腱などにもできる可能性があります。

腎結石

痛風の患者さんには、腎臓に尿酸結石が生じることがあります。
この結石が尿路につまり閉塞すると、激痛が生じます。

閉塞して尿路の流れが悪くなると感染症を併発する場合もあります。
腎結石により腎機能低下を引き起こし、尿酸の排泄が悪くなりさらに尿酸が高くなり痛風を誘発することがあります。

痛風の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、内科、整形外科です。
痛風は関節に尿酸が結晶化して起こる疾患であり、内科や整形外科で診断と治療が行われています。

痛風の検査・診断

血液検査

血液中の尿酸値を調べるため、血液検査を行います。
尿酸値が7.0mg/dl以上の際、

高尿酸血症

と診断します。

しかし痛風発作が出現していても尿酸値が正常の場合もあり、血液検査だけでなく以下の検査や症状とあわせて総合的に診断を行います。

関節穿刺

関節を針で穿刺し、関節液を偏光顕微鏡検査で調べます。
痛風の場合は針状の尿酸結晶がみられ、これがあれば痛風と診断可能です。
関節穿刺は診断に必ずしも必須ではありませんが、感染性関節炎などほかの疾患も疑われ痛風の診断に迷う場合は行うことがあります。

画像検査

骨びらんや痛風結節の確認のためにX線検査関節超音波検査が行われる場合があります。
しかし痛風の診断は症状と関節穿刺血液検査で行われることが多く、痛風の診断時よりも尿酸結節や関節の状態を確認したい場合に行うことが多い検査です。

痛風の治療

痛風発作に対する治療

痛風発作で生じている炎症を抑える治療を行います。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
炎症を抑え、疼痛コントロールを行います。

コルヒチン
白血球が関節内の尿酸に作用するのを抑制し、痛風発作の発症を抑えます。

ステロイド内服
炎症が強い場合に抗炎症薬として使用します。
発作の出ている関節が少ない場合は、ステロイドの関節内注入を行う場合があります。

安静
動かすことで痛みが悪化するためなるべく安静にして過ごします。

局所冷却
発作時は温めて血流が良くなると痛みが悪化するため、冷却を行います。
疼痛のピークは発症から24時間程度で、疼痛がおさまるまでには1、2週間を要します。

尿酸値を下げる治療

疼痛が落ち着いたら再発予防のために尿酸を下げる薬を使用します。
痛風の発作時には尿酸を下げる薬は使用しません。
発作時に使用するとかえって発作が長引いてしまうため、必ず痛みが落ち着いたあとに治療を行います。以下のような薬を使用します。

  • 尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロンなど)
  • 尿酸産生抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタットなど)

痛風になりやすい人・予防の方法

痛風は生活習慣によって尿酸が増えて出現するため、適切な治療を行わないと繰り返しやすい病気です。

特に、危険因子(暴飲暴食、アルコール多飲、肥満)を持つ患者さんは痛風を発症しやすいため、普段から予防が必要です。

尿酸を下げる薬を使用し尿酸を低下させるとともに、生活習慣の改善が重要です。
普段の食生活は、以下のように見直しが必要です。

プリン体摂取量を減らす
暴飲暴食を控え、尿酸の原料のプリン体を摂らないようにします。

減量
肥満は尿酸排泄を遅らせるため、体重を減らすことが大切です。

アルコール摂取を控える
アルコール自体が尿酸値を上昇させます。
1日あたりビールなら500ml以下、日本酒は1合以下、ウイスキーは60ml以下が尿酸値に影響を与えない量とされています。適切な量にとどめておきましょう。

水分を多く摂る

足の親指のつけ根に違和感のような発作の予兆が現れた際にコルヒチンを内服することで関節での白血球の働きを抑え、痛風発作を抑制することが可能です。
痛風を何度も起こす患者さんは予兆時に内服するように処方を受けることがあります。

痛風発作は一度発症すると繰り返し起こしやすいため、適切な治療と予防を行い痛風の発症を抑えることが重要です。


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