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トゥレット症候群
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

トゥレット症候群の概要

トゥレット症候群(Tourette syndrome、TS)は、運動チックおよび音声チックを特徴とする神経疾患です。トゥレット症候群の患者は、突然の、反復的で不随意な動き(運動チック)や音声(音声チック)を経験します。チックは一時的に抑制できるものの、強い衝動を伴うことが多く、発症は通常2~15歳で見られます。これらのチックは、通常、短時間に集中して繰り返され、患者自身が制御することは難しいです(参考文献 1)。
トゥレット症候群は、個々の患者で症状の重さや種類が異なりますが、症状は年齢とともに変化することが多く、成人期にかけて軽減する場合が多いです。しかし、一部の患者では症状が持続し、日常生活に影響を及ぼすことがあります。

トゥレット症候群の原因

トゥレット症候群の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因環境的要因の相互作用により発症すると考えられています。

 

神経学的要因

トゥレット症候群は、脳内の特定の神経回路の異常が原因であると考えられています。特に、皮質-線条体-視床-皮質回路の障害がチックの発生に関連しているとされています。

 

遺伝的要因

トゥレット症候群には遺伝的要因が関係しているとされています。多くの遺伝子がこの疾患に関連している可能性があるものの、具体的な原因遺伝子はまだ特定されていません。研究によると、SLITRK1遺伝子やHDC遺伝子と呼ばれる遺伝子が関連している可能性が指摘されています。しかし、これらの遺伝子変異がどのようにしてトゥレット症候群を引き起こすかは未解明です。

 

環境要因

環境的な要因もトゥレット症候群の発症に影響を与える可能性があります。例えば、出生前の母親の喫煙や、A群連鎖球菌感染がリスク要因とされていますが、これらの関与はまだ完全に解明されていません(参考文献 1)。

トゥレット症候群の前兆や初期症状について

トゥレット症候群の初期症状は、通常、単純な運動チックとして現れます。これらは、目のまばたき、顔をしかめる、肩をすくめるなどの動作として始まります。これらのチックは最初は軽度で、頻度も少ないことが多いですが、時間とともに増加し、音声チックが加わることもあります。

 

主な初期症状

  • 運動チック: 目のまばたき、顔をしかめる、肩をすくめる、頭を振るなどの簡単な動作が最初に現れることが多いです。複雑な運動チックには、奇妙な歩き方、蹴る、ジャンプ、体の回転、引っ掻く、誘惑的な仕草、卑猥な仕草などがあります。
  • 音声チック: 単純な音声チックには、うなり声、吠え声、うめき声​​、咳払い、鼻をすする音、大声などが含まれます。複雑な音声チックには、卑猥な言葉、言葉の繰り返し、フレーズや言葉を次第に速く繰り返すことが含まれます。これらの音声チックは、運動チックと組み合わさることが一般的です。

これらのチックは心理社会的ストレス、不安、怒り、興奮、疲労、病気などで悪化します。
チックの重症度は通常10~12歳でピークに達し、その後大多数で青年期および成人期に改善します。しかし、成人期まで持続するケースもあり、一部の患者では完全に消失しないこともあります。併存疾患として、ADHDや強迫性障害が頻繁に見られ、これらがTS患者の生活の質に影響を与えています。

トゥレット症候群の検査・診断

トゥレット症候群の診断は、主に患者の症状と病歴に基づいて行われます。特別な検査は必要ないことが多いですが、他の疾患との鑑別のために神経学的な評価が行われることがあります。

 

問診と視診

医師は、チックの種類、頻度、発症時期、増悪因子などを詳細に尋ねます。また、家族歴や過去の病歴についても確認します。視診では、患者の動作や発声の特徴を観察し、運動チックや音声チックの有無を確認します。

 

神経学的評価

神経学的評価では、他の神経疾患を除外するために、患者の神経機能を評価します。必要に応じて、脳の画像検査(MRIやCT)や血液検査が行われることもありますが、これらはトゥレット症候群の診断には直接関与せず、他の病気ではないことを確認するために行われることが多いです。

 

診断基準

トゥレット症候群の診断は、次のような診断基準に基づいて行われます(参考文献 1, 2)。

  • 複数の運動チックと1つ以上の音声チックが存在すること。
  • チックが1日に何度も、ほぼ毎日、または1年以上続いていること。
  • チックの症状が他の疾患や薬物の影響によるものでないこと。

トゥレット症候群の治療

トゥレット症候群の症状が社会的交流、学校や仕事のパフォーマンス、日常生活の活動を妨げている場合、または主観的な不快感、痛み、または傷害を引き起こしている場合は介入が必要です。
治療の主な目的は、チックの頻度を減らして機能と生活の質を改善することです。しかし、トゥレット症候群には根本的な治療法がなく、チックの治療でチックが完全に止まることはめったにありません(参考文献 3)。

 

教育と理解

まず大切なのは、本人や家族、学校の先生たちがトゥレット症候群について正しく理解することです。トゥレット症候群がどんなものかを知ることで、周囲の人がサポートしやすくなります。

 

行動療法

「習慣逆転訓練」という方法があり、チックを抑えるための特別なトレーニングを行います。この療法は、チックを少しでも抑える助けになります。

 

薬物療法

チックの症状が強い場合には、薬を使って症状を軽くすることがあります。薬には、脳の働きを調整するものや、神経の興奮を抑えるものがあります。ただし、薬には副作用もあるため、医師と相談しながら進めることが大切です。

 

ボツリヌス毒素注射

特定の部位でチックが強い場合、その部分の筋肉に注射をしてチックを抑える方法もあります。

トゥレット症候群になりやすい人・予防の方法

 

トゥレット症候群になりやすい人

トゥレット症候群の原因は不明ですが、家族にトゥレット症候群やチック症の既往がある場合、発症しやすい傾向にあります。また、女性より男性の方が起きやすいと言われています。妊娠中に喫煙していた母親から生まれた子供は、トゥレット症候群のリスクが高い可能性があります。

 

予防の方法

トゥレット症候群の予防法はありません。しかし、早期発見と治療によりトゥレット症候群が悪化するのを防ぐことができます。


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