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耳石が原因の良性発作性頭位めまい症――その症状を改善する方法 2018.11.15

ある日、あるとき、突然目の前がぐるぐる回りだす――めまいの症状が出ると、重い病気の兆候なのではと恐怖を感じる方も少なくないはずです。

めまいにはさまざまな要因がありますが、その半数近くは良性発作性頭位めまい症という診断を受けています。あまり身近な病名ではありませんが、これは、耳の中にある「耳石」が三半規管に入り込み、平衡感覚をつかさどる細胞を乱した結果生ずる症状。

「良性」と名前があるように、悪化することはありませんが、何度も症状がぶり返すことがあり、頭痛などの原因にもなります。ここでは、耳石が原因となる良性発作性頭位めまい症の症状や治療方法などについて、Medical DOC編集部がお届けします。

この記事の監修ドクター:
石島 健 医師(石島耳鼻咽喉科医院 院長)

 めまいが起こる疾患とその原因


頭を動かしたとき、突然、目の前の世界が回りだして立っていられなくなった。頭を傾けるとめまいが起こる。船酔いしたような感覚、地震が起きているような感覚がある。横になったときに浮遊感がある――こういった症状に苦しんでいる方は、さほど少なくありません。
こうしたかなり強い症状があるにも関わらず、意識を失ったり、1分以上にわたってめまいが続いたりしないようであれば、それは、耳石が原因の良性発作性頭位めまい症かもしれません。

 めまいの症状が出る疾患

めまいにもさまざまな要因があり、20種類以上もの疾患で、めまいの症状が出るとされています。良性発作性頭位めまい症の場合は、激しいものから弱いめまいまで幅がありますが、そのほとんどは1分以内におさまるものです。
めまいに耳鳴りや難聴などの症状があったり、呂律が回らなくなったり、意識を失ったりといった症状が伴う場合は、その他の病気の疑いがあるため、脳外科や内科を受診する必要がありますので、ご注意ください。

 耳石によるめまいの可能性

めまいの症状を訴えて受診される患者さまの半数近くが、耳石が原因である良性発作性頭位めまい症であると診断されます。これは、身体のバランスを保つ三半規管の中に、その根元にある耳石器からはがれた耳石が入り込むことで起こる症状です。
耳石は、カルシウムの結晶でできた組織のこと。平衡感覚を感知するのが、耳石の役割です。三半規管の中でリンパ液が耳石に刺激されると、身体が回転しているという情報が脳に送られてしまいます。しかし実際には、身体は回転していません。そこで、脳の情報と目からの情報とが食い違い、めまいの症状が起こるのです。
耳石がはがれる原因は、外傷やカルシウム不足、加齢などにあるとされていますが、半規管に入り込んだ耳石を取り出すことで、めまいの症状は治まりますのでご安心ください。

 良性発作性頭位めまい症への対処方法

良性発作性頭位めまい症の場合、その症状はほとんど、1分以内に治まるとされています。これは、三半規管の中で、耳石が動く距離が限られているからです。また、「良性」と名づけられているように、1度の受診でよくなったり、数週間のうちに自然に解消していたりすることがあり、さほど心配する必要はありません。
それでも、良性発作性頭位めまい症を発症すると、かなり強いめまいを感じることがあります。吐き気をもよおす場合などには、症状が軽減される頭の向きを探して、楽な姿勢で横になってください。一方でさほど症状が重くない場合は、身体を動かすことで症状が軽くなることもあり、早期の対策が重要です。
ここでは、良性発作性頭位めまい症であるかどうかの検査方法とその治療方法をご説明します。

 耳石を原因とするめまいの検査方法

めまいの症状が出た場合、その原因は、耳もしくは脳にあると考えられます。その大半が耳であるため、まずは耳鼻咽喉科を受診し、専門的な検査を受けてください。
耳鼻咽喉科では、めまいの原因を確かめるため、めまいの起きた状況や持続時間、他の症状の有無、既往症などについて問診を行ったあと、聴力検査やレントゲン検査などに加えて、頭位変換眼振検査を行います。
これは、めまいに特有の眼の動きを見るためのものです。三半規管に耳石があり、平衡感覚に異常をきたしている状態では、眼球が継続的に回転しています。そうした回転が起こっているかどうかを確かめるための検査とお考えください。
ただし、一度の受診で確実に眼振がわかるわけではなく、具体的に診断が下せない場合は、数度の受診が必要になる可能性も否定できません。

 良性発作性頭位めまい症の治療

「良性発作性頭位めまい症」の場合は、前庭動眼反射などに専門的な知識を有する耳鼻咽喉科専門医のもとで、頭位治療や平衡訓練を行うのが症状改善への近道です。強いめまいを起こしている間は、抗めまい薬や抗不安薬,血管拡張薬といった薬剤を用いて治療を行うこともありますが、耳石を移動させてめまいを解消させるために、頭や上半身を動かす頭位治療が主なものになります。
これは、半規管に入ってしまった耳石をもとの位置(耳石器)に戻すためのもので、全体の6割から8割のケースで有効だとされてきました。ただし、耳石の位置によっては効果がなかったり、激しいめまいが起こったりする可能性もあります。単純に頭を回すだけではめまいはひどくなるばかりですので、専門家のいるところでこの治療を受けてください。
うまくいけば、その場で良性発作性頭位めまい症を治すことができますが、めまいの症状を治療したのちも、浮遊感やふらつきなどがしばらく残ることもあるので、留意が必要です。

 早期回復するためには軽い運動が必要

半規管の中でリンパ液につかった耳石はいずれ溶けますが、それまで、めまいの症状はおさまりません。めまいから早期に回復しようと考えれば、身体を動かし、積極的に耳石を追い出すことが重要になります。
耳石というのは、粉のかたまりのようなもの。普段の動きの中で、そのまま砕け、細かくなることもあります。めまいがするからと安静にしていれば、耳石が砕けるチャンスをふいにすることにもなります。
耳石を追い出したり小さく砕くための運動(エプリー法など)を医師の指導のもとで行ったりするなど、耳石のかけらを三半規管内で移動させ、徐々に砕けるように促していってください。

 良性発作性頭位めまい症の予防方法

良性発作性頭位めまい症を発症する患者さまに何らかの特性があるわけではありません。年齢や性別を問わず、体力の有無も関係ないというのが実際です。その一方で、栄養不足であったり、運動不足、パソコンをよく使用したりするというのが、良性発作性頭位めまい症の患者さまに共通した特徴です。
これが、耳石の砕かれにくくなる要因でもあります。良性発作性頭位めまい症を発症する原因がいまだ明らかでもありません。ここでは、発症リスクを下げるための予防方法についてご紹介していきます。

 めまい改善に向けた寝返り運動

頭を動かすとめまいがするからと、なるべく同じ格好で寝ようとするのは、新たな耳石をどんどん溜めて、めまいの症状を長期化させることにつながります。耳石が原因であるめまいを改善するためには、頭をなるべく動かしていかねばなりません。
耳鼻咽喉科で、平衡感覚を鍛える平衡訓練を受けると同時に、めまい改善に向けた寝返り運動を行うことが、めまいの再発を軽減していくことになります。
仰向けに寝てから右側を向いて10秒静止、仰向けになって10秒静止、左側を向いて10秒静止、仰向けになって10秒静止――これを朝晩10回往復することで、耳石も溜まりにくくなります。

 カルシウム不足の解消

疲れや睡眠不足、ストレスなどが良性発作性頭位めまい症に影響を与えるとされていますが、さらに、カルシウム不足も大きな要因だと指摘されています。
一般的な日本人の食生活では、1日に必要だとされるカルシウム(800グラム)を摂取していません。閉経後の女性に発症例が多いのも、閉経を迎えて女性ホルモンの分泌が低下し、カルシウムの吸収率が悪化するからだと考えられています。
カルシウムが不足するようになれば、耳石からもカルシウムが抜けてはがれやすくなってしまいます。めまいを予防するためにも、魚やキノコといったビタミンDを多く含む食材、葉物野菜や納豆といったビタミンKを多く含む食材と一緒にカルシウムを摂取し、その効率を上げるよう心がけてみてください。

 めまいを引き起こすその他の疾患

突然めまいの症状が出て、慌てて内科を受診してメニエール病などの診断を受けたものの、のちに耳鼻咽喉科で良性発作性頭位めまい症だったとわかったという例も少なくありません。ここでは、めまいの症状を引き起こすその他の疾患との違いを見ていきましょう。

 メニエール病

めまいの発作が1時間から2時間と長時間にわたる場合は、内耳の疾患であるメニエール病を疑います。メニエール病に罹患すると、めまいの症状を繰り返すほか、難聴や耳鳴りといった症状が出ます。
メニエール病の原因は、ストレスや睡眠不足によってリンパ液が過剰になること。利尿剤を用いて、内耳にリンパ液が溜まり過ぎないようにしていきますが、完治が難しいのが現状です。
「良性発作性頭位めまい」の場合は、30秒から1分ほど発作が持続します。吐き気などはあっても、難聴や耳鳴りといった聴覚の症状が起こらないため、その違いも明確です。

 前庭神経炎

前庭神経炎の場合は、1日から1週間もの間発作が続くことがあります。これは、内耳の前庭に炎症が起きている状態で、吐き気や嘔吐、冷や汗といった症状も同時に起こります。ウイルス感染が原因で、薬を服用し、安静を保つことが回復への道になります。

 なるべく早期に耳鼻咽喉科を受診


良性発作性頭位めまい症は、激しいめまいを感じることがあるものの、その持続時間が短く、数週間から数ヶ月といったスパンで自然治癒します。生活習慣の中で予防することも可能で、それほど心配する必要もありません。
しかし、めまいの症状が出る疾患の中にはメニエール病や前庭神経炎などがあり、適切な治療が必要なものもあります。めまいの症状が出ると、日常生活も大きな影響を受けます。
車や自転車などの運転が危険になりますし、階段の上り下りで症状が出ないとも限りません。めまいの症状がある方は、なるべく早い段階で信頼のおける耳鼻咽喉科を受診し、専門的な検査を受けることが重要です。

石島 健 医師 石島耳鼻咽喉科医院 院長監修ドクターのコメント
良性発作性頭位めまい症は内耳性めまい症の中で最も頻度が高く、悩んでいる方の多い疾患です。
しかしながら、本稿にあるように、責任半規管(どちら側のどの半規管が原因か)を専門医によって診断を
受けて、しかるべき処置・治療をなされれば、決して恐れる病気ではありません。
めまい発作を経験した方々に共通してみられるのは、今後のめまいに対する不安です。
その意味でもめまいに対する対策を専門医とともに考えていきましょう。
 
監修ドクター:石島 健 歯科医師 石島耳鼻咽喉科医院 院長


 この記事の監修ドクター

石島 健 医師 石島耳鼻咽喉科医院 院長

出典:http://www.ishijima-ent.jp/
石島 健 医師
石島耳鼻咽喉科医院 院長

PROFILE

・平成2年4月
京都大学医学部付属病院耳鼻咽喉科研修医
・平成3年4月
兵庫県公立豊岡病院耳鼻咽喉科医員
・平成4年1月
静岡市立静岡病院耳鼻咽喉科医員
・平成9年2月
京都大学耳鼻咽喉科助手
・平成9年6月
米国ピッツバーグ大学耳鼻咽喉科 Visiting Fellow
・平成11年6月
浜松労災病院耳鼻咽喉科医長
・平成15年10月
岩手医科大学耳鼻咽喉科講師
・平成17年5月
同上 准教授
・平成22年7月
福井赤十字病院耳鼻咽喉科部長
・平成25年4月
石島耳鼻咽喉科医院 院長

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