「高熱が出る原因」で考えられる病気は何かご存じですか?対処法も医師が解説!


監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。
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「高熱」症状で考えられる病気と対処法
急な高熱に見舞われると、多くの方が「何か重い病気ではないか」と大きな不安を感じることでしょう。高熱は、私たちの体がウイルスや細菌と戦っている証拠であり、体の正常な防御反応の一つです。そのため、発熱の多くは休養をとることで数日のうちに回復へと向かいます。しかし、その一方で、高熱が重大な病気の存在を知らせるサインとなっている場合も少なくありません。 この記事では、発熱の程度や状況別に考えられる原因、ご家庭でできる適切な対処法、そしてどのような場合に医療機関を受診すべきかという判断の目安について、詳しく解説していきます。ご自身や大切なご家族の症状と照らし合わせながら、冷静に対応するための一助となれば幸いです。38度までの熱が出る症状で考えられる原因と対処法
38度までの発熱は軽度から中等度の発熱に分類されます。この程度の熱では、体のだるさや軽い頭痛、食欲不振などの症状が現れることが一般的です。多くの場合、体は病原体と闘うために体温を上げており、免疫システムが正常に機能している証拠でもあります。 すぐにできる処置としては、まず十分な水分補給を心がけることが重要です。発熱により体内の水分が失われやすくなるため、こまめに水分を摂取しましょう。また、体を冷やしすぎないよう注意しながら、額や脇の下を濡れタオルで冷やすことで体温を下げる効果が期待できます。無理をせず安静にし、栄養のある消化の良い食事を摂ることも大切です。 考えられる病気や原因としては、風邪やインフルエンザ、新型コロナウィルス感染症の初期症状、軽度の胃腸炎、ストレスや疲労による発熱、薬物の副作用などがあります。また、女性の場合は月経前症候群や排卵期の体温上昇による場合もあります。さらに、原因不明の発熱を専門医療機関で調べた結果、自己免疫疾患や膠原病などが見つかることもあります。 受診の目安としては、発熱が3日以上続く場合、他の症状(激しい頭痛、腹痛、呼吸困難など)を伴う場合は内科を受診することをお勧めします。特に高齢者や慢性疾患を持つ方は、軽度の発熱でも早めの受診が必要です。38度以上の高熱が出る症状で考えられる原因と対処法
38度以上の高熱は体に大きな負担をかけるため、より慎重な対処が必要です。この程度の熱では、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、悪寒戦慄などの症状が現れることが多く、日常生活を続けることがやや困難になります。 すぐにできる処置として、まず体温調節が重要です。厚着を避け、薄着にして体の熱を逃がしやすくしましょう。ただし、悪寒がある場合は無理に薄着にせず、体が温まってから調整することが大切です。 氷枕や冷却シートを使用して頭部を冷やし、脇の下や鼠径部などの大きな血管が通る部位を冷やすことも効果的です。水分補給は重要で、発汗により失われる電解質を補うためにスポーツドリンクや経口補水液を摂取することをおすすめします。 考えられる病気としては、インフルエンザ、新型コロナウィルス感染症、急性気管支炎、肺炎、尿路感染症、虫垂炎などの消化器感染症、扁桃炎、髄膜炎、感染性心内膜炎、敗血症などがあります。これらの中には生命に関わる重篤な疾患も含まれるため、注意深い観察が必要です。 38度以上の高熱が続く場合は、はやめに内科を受診することをおすすめします。特に呼吸困難、意識レベルの低下、激しい頭痛、首の硬直、持続する嘔吐などの症状を伴う場合は緊急受診が必要です。また、解熱剤を使用しても熱が下がらない場合や、熱が一時的に下がっても再び上昇する場合も医師の診察を受けるべきです。突然高熱が出る症状で考えられる原因と対処法
突然の高熱は体にとって大きなストレスとなります。このような場合、前触れもなく38度以上の熱が数時間以内に上昇し、強い悪寒、頭痛、筋肉痛などが急激に現れることが特徴です。患者さんは「朝は元気だったのに夕方には動けなくなった」といった経験をされることがあります。 緊急的な対処として、急激な体温上昇により脱水症状が起こりやすいため、少量ずつでも頻繁に水分を摂取することが重要です。 突然の高熱の原因として考えられるのは、急性感染症(インフルエンザ、細菌性肺炎、敗血症など)、熱中症、急性胆嚢炎、急性虫垂炎などがあります。特に敗血症は生命に関わる緊急事態であり、迅速な治療が必要です。 突然の高熱は、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。発熱以外にひどい頭痛、腹痛、胸痛、呼吸困難などがあれば、夜間や休日であっても救急外来を受診し、医師の診察を受けることをおすすめします。特に高齢者や免疫力が低下している方は、より早めの対応が必要です。高熱が一日で下がる症状で考えられる原因と治し方
高熱が一日程度で急速に下がる場合、多くは軽度の感染症や一過性の炎症反応であることが多いです。このような場合でも、熱が出ている間は体のだるさや頭痛、食欲不振などの症状が現れることがあります。 対処法としては、前述の通りの体温調整や水分摂取を心がけます。解熱剤の使用については、熱が体の自然な防御反応であることを考慮し、38度以上で症状が辛い場合に限って使用することをお勧めします。 熱が下がった後も、体力回復のために1〜2日は無理をせず、栄養のある食事と十分な睡眠を取ることが大切です。 一日で下がる高熱の原因としては、感染症、軽度の食中毒、ストレスや疲労による発熱などが考えられます。また、女性の場合は排卵期の体温上昇が原因となることもあります。熱が下がったからといって安心せず、その後の体調変化を観察することが重要です。産後に高熱が出る症状で考えられる原因と対処法
産後の高熱は母体にとっては軽視できません。出産後は免疫力が低下し、感染症にかかりやすい状態にあるため、発熱には特に注意が必要です。産後の高熱では、悪露の増加、腹痛、乳房の腫れや痛み、悪寒などの症状を伴うことがあります。 緊急的な対処として、まず産科医療機関への連絡が最優先です。産後の発熱は放置すると重篤な状態に発展する可能性があるため、自己判断せずに医師の指示を仰ぐことが重要です。水分補給を行いながら、体を冷やしすぎないよう注意し、安静を保ちます。授乳中の場合は、内服可能な薬について医師と相談しながら対応を決めましょう。 産後の高熱の原因として最も多いのは産褥感染症です。これには子宮内感染、乳腺炎、会陰切開部の感染、尿路感染症などが含まれます。 また、産後は血栓症のリスクが上がるため深部静脈血栓症による発熱の場合もあります。発熱以外に、腹痛の症状や、排尿時痛、足の浮腫みがないかどうかが重要です。これらの中には生命に関わる重篤なものもあるため、躊躇せずに医療機関を受診しましょう。高齢者で高熱が出る症状で考えられる原因と対処法
高齢者の高熱は若い世代と比較して重篤な結果を招きやすいため、特に慎重な対応が必要です。高齢者では発熱に対する体の反応が鈍く、重篤な感染症であっても熱があまり上がらない場合も多いです。また、一度高熱が出ると体力の消耗が激しく、脱水や食欲低下を起こしやすくなります。 高齢者の発熱時の対処法として、まず脱水を防ぐことが若年者よりも重要です。少量ずつでも頻繁に水分を摂取させ、電解質バランスの維持にも気を配りましょう。体温調節については、過度な冷却は避け、室温を適切に調整することが大切です。 高齢者の高熱の原因として多いのは、肺炎、尿路感染症、胆道感染症、褥瘡感染などです。また、がんや自己免疫疾患による発熱も考慮する必要があります。高齢者では症状が非典型的に現れることが多く、発熱以外の症状が軽微であっても重篤な感染症が隠れている可能性があります。 高齢者の高熱は緊急性が高いため、速やかに内科または総合診療科を受診することが重要です。特に意識レベルの変化、呼吸困難、血圧低下などの症状を伴う場合は救急搬送も考慮します。自閉症の大人・子供が高熱が出る症状で考えられる原因と対処法
自閉症スペクトラム障害のある方の発熱時には、コミュニケーションの困難さから症状の把握が困難になることがあります。また、対処法ができない場合もあるため、個別の特性を考慮した対応が必要です。 自閉症の方への対処法として、まずは普段と様子が違うかどうかに注意を払うことが重要です。言葉で症状を訴えることが困難な場合、表情や機嫌はどうか、睡眠パターンの変化などがサインとなることがあります。 発熱の原因については一般的な感染症に加えて、薬剤の副作用、体温調節の困難さなども考慮する必要があります。 受診時には普段の様子をよく知る家族や支援者が同行し、医師に詳しい情報を提供することが重要です。環境の変化がないよう、かかりつけの専門の医療機関を選びましょう。すぐに病院へ行くべき「高熱」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。高熱と呼吸困難の症状の場合は、呼吸器科へ
高熱に加えて呼吸が苦しい、息切れがする、胸の痛みがあるといった症状が現れた場合は、肺炎や気管支炎、場合によっては肺塞栓症などの重篤な呼吸器疾患の可能性があります。特に高齢者や慢性疾患を持つ方では、これらの疾患が急速に悪化することがあるため、迅速な診断と治療が必要です。救急科での初期対応後、呼吸器内科での専門的な治療を受けることになります。病院受診・予防の目安となる「高熱」のセルフチェック法
●高熱以外に激しい頭痛な症状がある場合●高熱以外に激しい腹痛・下痢の症状がある場合
●高熱以外に意識が朦朧とする症状がある場合
「高熱が出る」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「高熱」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。熱中症
熱中症は高温多湿な環境下で体温調節機能が破綻することにより発症します。軽度では発熱、頭痛、めまい、吐き気などが現れ、重度になると意識障害、けいれん、多臓器不全を起こす可能性があります。初期対応として涼しい場所への移動、体の冷却、水分・電解質の補給が重要です。普段と様子が違う場合は一人にせずに、躊躇なく救急車を要請し、治療を受ける必要があります。予防には規則的な生活習慣、適切な水分補給、暑さを避ける、などが重要です。尿路感染症
尿路感染症は細菌が尿路に侵入することで起こる感染症で、膀胱炎から腎盂腎炎まで様々な重症度があります。発熱、排尿時痛、頻尿、腰痛などが主な症状です。軽度の膀胱炎では内服治療で改善しますが、腎盂腎炎では高熱が持続し、入院治療が必要になることがあります。 医療機関での診察を受け、尿検査により診断が確定されます。予防には十分な水分摂取、適切な排尿習慣、清潔な生活環境の維持が重要です。カンピロバクター腸症
カンピロバクター腸炎は食中毒の原因菌による急性胃腸炎で、鶏肉などの不適切な調理や保存により感染します。発熱、下痢、腹痛、嘔吐が主な症状で、血便を伴うことも少なくありません。多くの胃腸炎は対症療法により1週間程度で改善しますが、細菌感染の疑いが強い場合は抗生剤治療が必要になることもあります。消化器内科での診察を受け、便培養検査により診断されます。予防には食材の十分な加熱、調理器具の清潔維持、手洗いの徹底が重要です。気管支炎
気管支炎はウイルスや細菌感染により気管支に炎症が起こる疾患です。発熱、咳、痰、胸部不快感が主な症状で、急性型と慢性型があります。多くのウイルス性気管支炎は自然治癒しますが、細菌感染が疑われる場合は抗生剤治療が必要です。呼吸器内科での診察にて診断されます。重症化すると肺炎に進行する可能性があるため、適切な治療と経過観察が必要です。急性肝炎
急性肝炎はウイルス感染、薬物、アルコールなどにより肝臓に急性の炎症が起こる疾患です。発熱、倦怠感、食欲不振、黄疸、右上腹部痛が主な症状です。A型、B型、C型肝炎ウイルスによるものが多く、それぞれ感染経路や治療法が異なります。消化器内科での診察を受け、血液検査により肝機能や肝炎ウイルスマーカーを確認します。重症例では入院治療が必要となり、早期診断と適切な治療により予後が改善されます。「高熱」の正しい対処法は?
早く治すことは可能?
高熱を早く治すための最も重要なポイントは、体の自然な回復力をサポートすることです。十分な安静を保ち、体力の消耗を最小限に抑えることが基本となります。水分補給は脱水を防ぐために欠かせず、常温または少し冷たい水、スポーツドリンク、経口補水液などを少量ずつ頻繁に摂取します。 体温調節については、適切な服装と室温に調整します。体の冷却方法として、氷枕や冷却シートを使用したり、濡れタオルで額や脇の下を冷やしたりすることが効果的です。ただし、悪寒がある間は体を温め、熱が上昇期から持続期に移行してから冷却を行うことが重要です。解熱剤の使用は根本的な治療にはらなないため、熱の症状が辛い場合に限り、医師の指示に従って適切に使用します。高熱時の食事やおすすめの行動はある?
高熱時の食事は消化が良く栄養価の高いものを選ぶことが大切です。おかゆ、うどん、スープ、ゼリー、プリンなどが適しています。また、ビタミンCを多く含む果物や野菜ジュースもおすすめです。食欲がない場合は無理に食べず、水分補給を優先し、症状が改善してから徐々に食事量を増やしていきます。 体を温めるか冷やすかについては、発熱の段階により対応を変える必要があります。悪寒がある上昇期には体を温め、熱が持続する時期には適度に冷却することが効果的です。入浴については、体調に合わせて湯冷めをしないように心がけて、普段通り行っていただいて構いません。睡眠は回復に最も重要な要素の一つです。静かで適温の環境を整え、十分な休息を取ることで免疫機能の回復を促します。ストレス緩和のためには、リラックスできる環境を整えましょう。市販薬で治るのか?
高熱に対する市販薬として最も一般的なのは解熱鎮痛剤です。アセトアミノフェン系やイブプロフェン系の薬剤があり、それぞれ作用機序や副作用が異なります。アセトアミノフェンは比較的副作用が少なく、胃腸への負担も軽微ですが、イブプロフェンは抗炎症作用も併せ持つため、症状によって使い分けることが大切です。 市販薬を使用する際の注意点として、38度以上の発熱で症状が辛い場合に限って使用し、熱を完全に下げることを目的とするのではなく、症状の緩和を図ることが重要です。また、服用間隔や用量を守り、長期間の使用は避けます。他の薬剤との相互作用や既往歴がある場合は、薬剤師や医師に相談してから使用することをお勧めします。市販薬を使用してはいけない症状として、意識障害がある場合、激しい頭痛や首の硬直を伴う場合、呼吸困難がある場合、腹痛や嘔吐が激しい場合などがあります。これらの症状がある時は市販薬に頼らず、速やかに医療機関を受診することが必要です。「高熱の原因」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「高熱の原因」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
高熱は何度からでしょうか?
齋藤 雄佑(医師)
一般的に、体温が38度以上になると高熱と定義されます。ただし、普段の平熱が低い方では37.5度程度でも高熱と感じることがあり、個人差を考慮することが重要です。医学的には38.0度〜38.5度以上を高熱と分類することが多いです。
インフルエンザなど、特定の病気で高熱が出るのはどうしてでしょうか?
齋藤 雄佑(医師)
インフルエンザウイルスが体内に侵入すると、免疫システムがサイトカインという物質を放出し、これが脳の体温調節中枢に作用して体温を上昇させます。高熱は病原体の増殖を抑制し、免疫細胞の活動を活発化させる生体防御反応であり、病気と闘うための重要なメカニズムです。
突然39度の高熱が出て3日下がらないのは危険な状態でしょうか?
齋藤 雄佑(医師)
39度の高熱が3日間持続する場合は、重篤な感染症や他の疾患の可能性があるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。特に意識障害、呼吸困難、激しい頭痛などを伴う場合は緊急事態として扱い、早急な受診をおすすめします。
子供が高熱を出したとき、どんな症状は夜間でも病院に行くべきですか?
齋藤 雄佑(医師)
子供の場合、意識がぼんやりしている、けいれんを起こした、呼吸が苦しそう、水分を受け付けない、発疹が出ている、激しく泣き続けるなどの症状があれば、夜間であっても救急受診が必要です。生後3ヶ月未満の乳児の発熱は特に危険性が高いため、必ず医師の診察を受けてください。
大人が高熱が出て休めないとき、すぐに熱を下げる方法はありますか?
齋藤 雄佑(医師)
解熱剤の使用により一時的に熱を下げることは可能ですが、根本的な治療にはなりません。高熱は体が病気と闘っている証拠であり、体への警告です。無理に熱だけを下げて活動を続けることは、症状の悪化や回復の遅延につながる可能性があります。可能な限り安静を保ち、適切な治療を受けることが最も重要です。
まとめ 38度以上の高熱の原因は感染症が多い
高熱は私たちの体が病気と闘うための自然な防御反応ですが、時として生命に関わる重篤な疾患のサインでもあります。38度以上の高熱の原因として最も多いのは各種感染症であり、適切な診断と治療により多くの場合は回復が期待できます。重要なのは、高熱の背景にある原因を見極め、適切な対処法を選択することです。軽度の感染症であれば自宅での安静と対症療法で改善することが多いですが、髄膜炎や敗血症などの重篤な疾患では迅速な医療介入が生命を救うことになります。 発熱に加えて、辛い症状がある場合は、躊躇せずに医療機関を受診するようにしてください。「高熱」症状で考えられる病気
「高熱」から医師が考えられる病気は18個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。呼吸器系の病気
循環器系の病気
- 感染性心内膜炎
婦人科系の病気
- 産褥感染症
- 乳腺炎
神経内科系の病気
- 髄膜炎
- 急性脳炎
耳鼻科系の病気
- 急性鼻副鼻腔炎
- 扁桃周囲膿瘍
- 頸部膿瘍