「空咳が止まらない」原因は何かご存じですか?対処法や考えられる病気を医師が解説!


監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
空咳が止まらない症状で考えられる病気と対処法
空咳が止まらない場合、思いがけない病気が原因となっているかもしれません。症状別に、考えられる原因を解説します。空咳が止まらず苦しい症状で考えられる原因と治し方
乾いた咳が続き、息苦しさを感じる場合、百日咳をはじめとする感染症の可能性が考えられます。とくに百日咳の場合、けいれんするような強い咳や、咳の後に吐き気を伴うのが特徴です。 咳が続く場合は、安静にし、加湿、水分補給などをおこないましょう。周囲の人にうつさないためのマスクや手洗いなども大切です。 なお、百日咳以外の感染症の可能性として、マイコプラズマ肺炎や肺結核なども挙げられます。 空咳が2週間以上続く、血の混じった痰が出る、呼吸がつらいといった症状がある場合は、呼吸器内科の受診を検討しましょう。ただし、2週間に満たない期間でも、症状が強ければ早めの受診をおすすめします。熱はないが空咳が止まらない症状で考えられる原因と対処法
熱がないのに空咳だけが続く場合、胃食道逆流症(GERD)が関係している可能性があります。胃食道逆流症は、胃酸が食道へ逆流し、胸やけや酸っぱい感じ、喉の違和感や空咳がでる病気です。 食べすぎや就寝前の食事を避ける、腹部を締め付けないなどの対処が有効です。 命にかかわることはありませんが、日常生活の質に影響するため、早めに消化器内科を受診しましょう。夜に空咳が止まらない症状で考えられる原因と対処法
夜になると空咳が出て眠れない場合、以下の可能性が考えられます。・気管支喘息
・咳喘息
冷気やほこりを避けるためのマスクを着ける、禁煙するなど、咳を引き起こす原因を遠ざける対処が有効です。 咳が続く、毎晩咳で眠れないといった場合は、呼吸器内科を受診しましょう。
冬に空咳が止まらない症状で考えられる原因と対処法
冬に空咳が止まらない場合、感染後咳嗽や咽頭アレルギーの可能性が考えられます。 冬は、風邪やインフルエンザなどの感染症が流行しやすい時期です。また、空気の乾燥によってアレルゲンが舞い上がりやすく、冬の終わりにはスギ花粉による花粉症からの咽頭アレルギーも増加します。 対策としては、安静、アレルゲンの軽減、水分補給などが有効です。咳が続く場合や、夜間に悪化する、息苦しさを伴うなどの場合は、呼吸器内科や耳鼻咽喉科の受診を検討してください。咳が止まらず痰が出る症状で考えられる原因と対処法
痰を伴う咳が続くときは、気道や肺、副鼻腔に炎症や分泌物の異常がある可能性があります。とくにたばこを吸っている方は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の可能性が考えられます。COPD対処法で重要なのは、禁煙です。腹式呼吸や口すぼめ呼吸などの呼吸訓練や運動、適切な栄養の摂取も大切です。咳や痰が続き、息切れや動いた時の苦しさがある場合は呼吸器内科を受診しましょう。すぐに病院へ行くべき「空咳が止まらない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。空咳が止まらず息苦しさや呼吸の異常を伴う症状の場合は、呼吸器内科へ
空咳に加え、息苦しさや呼吸が浅い感じがある場合は注意が必要です。 考えられる病気として、以下のような呼吸器疾患が挙げられます。・気管支喘息
・百日咳
・マイコプラズマ肺炎
・COPD
・間質性肺炎
・肺がん
夜間や運動時に咳が悪化する、胸の痛み、血痰などがあるときは、早めに呼吸器内科を受診しましょう。
空咳が止まらず喉の違和感が強い症状の場合は、耳鼻咽喉科へ
咳に加えて喉のイガイガ感・かゆみ・異物感がある場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。 原因としては以下が考えられます。・後鼻漏を伴う副鼻腔炎
・咽頭アレルギー
受診時は、喉の違和感の程度、咳のきっかけ、鼻の症状を具体的に伝えると診断に役立ちます。
空咳が止まらず強い胸やけがある症状の場合は、消化器内科へ
空咳とともに胸やけや喉のヒリヒリ感がある場合は、胃食道逆流症(GERD)が原因かもしれません。 食後や就寝中に咳が悪化する、声がかすれるといった症状があれば、消化器内科での相談が適しています。 受診時は、咳のタイミング、食事との関係、胃もたれの有無を記録して伝えるとスムーズです。病院受診・予防の目安となる「空咳が止まらない」症状のセルフチェック法
空咳が止まらない以外に以下のような症状がある場合、病院受診の目安となります。・咳が2週間以上続いている
・夜間や明け方に咳が強くなる
・息苦しさや胸の違和感を伴う
・痰に血が混じる
・食後や横になった時に咳が悪化する
1つでも当てはまる場合は、早めに医療機関で相談してみましょう。
「空咳が止まらない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「空咳が止まらない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。喘息
喘息は、気道の慢性的な炎症により咳や息苦しさが起こる病気です。ヒューヒュー・ゼーゼーという喘鳴や、夜間・早朝に強くなる咳が特徴です。 喘息発作を悪化させる要因を、以下に紹介します。・喫煙
・呼吸器感染症
・アレルゲン
・大気汚染
・ストレス
・アルコール
治療の基本は吸入ステロイド薬の使用で、軽症でも継続的な管理が重要です。普段から、腹式呼吸を意識するのもよいでしょう。 夜間の咳や息苦しさ、運動や会話での息切れがある場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。
咳喘息
咳喘息は、ゼーゼー感や息苦しさはなく、空咳だけが続く喘息の一種です。以下のような要因が刺激となり、咳が出やすくなります。・風邪
・冷気
・運動
・喫煙
大人の場合、30〜40%が本格的な喘息に進行するという報告もありますが、早く見つけて適切な治療をおこなえば喘息になるリスクは軽減できます。 治療は、気管支喘息と同様に吸入ステロイド薬の使用が基本です。症状が強い場合は、気管支拡張剤や抗アレルギー薬も合わせて使用します。 咳が続く場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。
胃食道逆流症
胃食道逆流症(GERD)は、胃酸が逆流して食道や喉を刺激し、空咳の原因となる病気です。胸やけや喉のヒリヒリ感があり、食後に症状が悪化しやすいのが特徴です。 胃食道逆流症の治療は、胃酸を抑える薬の服用と生活習慣の改善が中心です。脂っこい食事やアルコールを控え、上半身をやや起き上がらせて寝る工夫をするのもよいでしょう。 受診すべき診療科は、消化器内科です。百日咳
百日咳は、強い咳が長く続く感染症です。風邪のような症状から始まって咳が徐々に強くなり、回復するまで2〜3ヶ月かかるのが一般的です。 百日咳に特徴的なのは、発作的に起こるけいれん性の激しい咳で、咳込み後の嘔気が見られるケースもあります。 治療には抗菌薬が使われますが、原因となる菌が消失したあとも咳症状が続くケースは少なくありません。 強い咳が続く、咳の後に吐きそうになるなどの症状がある場合は、速やかに呼吸器内科を受診しましょう。マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は強い咳が長引くのが特徴の感染症です。 代表的な症状は風邪と似ており、熱や頭痛、だるさ、咳などです。 一般的な風邪よりも咳が長引きやすく、熱が下がったあとも3〜4週間続きます。肺炎にはならず、気管支炎で済む人が多いのですが、重症化するケースもあります。 治療には、百日咳と同様に抗菌薬が使われます。 風邪の咳が長く続く場合は、内科や呼吸器内科を受診しましょう。間質性肺炎
間質性肺炎は、肺の壁の一部が硬く、厚くなったり炎症を起こしたりすることによって、空咳や息切れが続く病気です。膠原病や薬の副作用など、何かしらの原因がある場合と、原因不明の場合があります。 間質性肺炎の咳には、咳の反射を抑える中枢性の咳止めや知覚神経に作用する薬が使われます。原因となる疾患がある場合、その疾患の治療も重要です。 咳に加えて息切れがある場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。肺がん
肺がんは、肺の細胞が異常に増えるがんです。喫煙や受動喫煙、遺伝、大気汚染などで発症リスクが高まるとされています。 初期症状は少ないこともありますが、進行すると空咳や血痰、胸の痛みなどが見られます。 がんの状態によって、手術、放射線治療、抗がん剤などを使用して治療をおこないます。 自治体のがん検診を受けるとともに、異常を感じたら早めに呼吸器内科を受診しましょう。「空咳が止まらない」の正しい対処法は?
空咳が止まらない場合の対処法を紹介します。症状を早く治したい場合の対処法は?
空咳を早く治したい場合、早めの受診が最適です。自宅でできる対処法としては、原因ごとに以下のようなものが挙げられます。・喘息や咳喘息:冷気やたばこを避ける、安静にする
・胃食道逆流症:食べすぎや脂肪分の多い食事を避け、上半身をやや起き上がらせて寝る
また、喉の乾燥や刺激で咳が出る場合は、加湿、水分補給、喉を休めるなどもよいでしょう。
市販薬を服用して問題ないか
空咳の症状が一時的で軽い場合は、以下のような成分を含む市販薬で改善するケースもあります。・咳止め:ジヒドロコデイン・デキストロメトルファンなど
・痰切り:カルボシステイン・アンブロキソールなど
ただし、薬を飲んでも咳が続く、血痰や息苦しさがあるなどの場合は、市販薬では対応できません。喘息や間質性肺炎などが隠れている場合、自己判断で咳を抑えるのは危険です。市販薬で症状が治まらない場合は、早めに受診してください。
「空咳が止まらない」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「空咳が止まらない」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
空咳が続いた場合、何科を受診すべきでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
空咳が続く場合は、呼吸器内科が基本です。ただし、喉の違和感が強ければ耳鼻咽喉科、胸やけや食後に悪化する咳の場合は消化器内科が適しています。判断に迷うときは内科で相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらいましょう。
空咳がどのくらい長引いたら病院を受診した方が良いでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
空咳が3週間以上続く場合は、医療機関を受診しましょう。ただし、夜間に咳き込む、息苦しい、痰に血が混じるといった症状があれば、3週間を待たずに早めの受診をおすすめします。
市販の咳止めを飲んでも空咳が3週間続くのは百日咳でしょうか?
伊藤 陽子(医師)
百日咳の可能性もありますが、以下のようなほかの病気も考えられます。
・感染後咳嗽
・咳喘息
・間質性肺炎
・肺がん
いずれにせよ、市販薬で改善しないときは早めに医療機関を受診してください。
乾いた咳が止まらず夜眠れません。即効性のある止め方はありますか?
伊藤 陽子(医師)
夜間の空咳がつらい場合、以下のような工夫を試してみてください。
・寝室の湿度を保つ(加湿器の使用や濡れタオルを干すなど)
・温かい飲み物やのど飴で喉を潤す
・枕を高くして、上体を少し起こした姿勢で寝る
・喉を冷やさないよう、マスクやネックウォーマーを使う
空咳が眠れないほど強い場合、喘息や百日咳などの可能性もあります。一度受診し、適切な治療を受けることも検討しましょう。
熱はないのですが喉がむずむずして空咳が止まりません。ストレスが原因でしょうか?
伊藤 陽子(医師)
以下のような病気の場合、ストレスが原因で咳が悪化する可能性があります。
・心因性咳嗽
・気管支喘息
・アトピー咳嗽
ただし、感染症の後に咳が残っている、アレルギーが関係して喉がむずむずしているなどの可能性も考えられます。一度呼吸器内科を受診することをおすすめします。



