「イライラして眠れない」ときの対処法はご存じですか?考えられる病気も医師が解説!


監修医師:
草山 好以(医師)
2011年4月 KDDI株式会社入社
2016年7月 KDDI株式会社退社
2016年 9月 東海大学医学部医学科 社会人編入学
2022年 東海大学医学部医学科卒業
2022年 国際医療福祉大学熱海病院
2024年 東海大学医学部付属病院
2024年 産業医、心療内科クリニック勤務
目次 -INDEX-
イライラして眠れない症状で考えられる病気と対処法
「イライラして眠れない」という訴えは、日常生活のストレスから精神疾患まで、さまざまな原因で起こり得ます。一時的なストレスによる不眠であれば、生活習慣の改善で回復することもありますが、長引く場合や気分の波を伴う場合には、心の病気が背景にあることも少なくありません。本記事では、主な原因疾患とその治療法・対処法について解説します。イライラして眠れない症状で考えられる原因と対処法
イライラに伴う不眠は主に入眠障害として現れます。強い焦燥感のために脳が休息モードに入ることが難しくなります。20分経っても眠れない場合は、一度寝室を出てリビングでリラックスできる単調な活動をし、眠気を感じてから床に戻りましょう。また、腹式呼吸や筋弛緩法で、意図的に身体の緊張を緩め、高ぶった交感神経の働きを鎮めることも有効です。考えられる病気には、ストレスが原因となる適応障害や、常に漠然とした不安が持続する全般性不安障害があります。気分が落ち込むだけでなく、イライラや焦燥感が強く出るタイプのうつ病もありますので、喜びの喪失や強い疲労感を伴う場合は要注意です。不眠が2週間以上続き、日中の生活に支障が出ている場合は、精神科または心療内科を受診してください。イライラが制御できず自傷や他害の衝動がある場合は、緊急性が高いです。仕事や対人関係でイライラして眠れない症状で考えられる原因と対処法
仕事のプレッシャーや人間関係の軋轢が原因の場合、燃え尽き症候群やうつ病に発展しやすいです。対処法として、帰宅後の仕事モード終了のルーティンを設けたり、寝る前に翌日のタスクを紙にすべて書き出すことで、脳の緊張状態を落ち着かせます。対人関係のストレスについては、家族やパートナーへの怒り、言えなかった後悔などが蓄積していることが原因となる事があります。この場合の対処法は、怒りを日記に書き出すなど安全な方法で感情を排出し、マインドフルネスの手法で思考と自分自身を切り離す訓練をすることが有効です。【女性】イライラして眠れない症状で考えられる病気と対処法
女性はホルモンバランスの変動が、脳の神経伝達物質に影響を与え、イライラや不眠を引き起こしやすいです。生理中・妊娠中にイライラして眠れない症状で考えられる原因と対処法
生理前はプロゲステロンの変動により月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)でイライラと不眠が強く出やすいです。この場合は、まずは婦人科でホルモンバランスを評価し、低用量ピルや漢方薬などで治療を検討します。妊娠中はホルモンの高値に加え、身体的な不快感や出産への予期不安が不眠を招きます。産婦人科で相談し、不調が重い場合は周産期メンタルヘルスを専門とする精神科と連携します。すぐに病院へ行くべきイライラ・ストレスと不眠に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。イライラして眠れず気分が高揚しすぎる症状の場合は、精神科へ
不眠に加え、気分が異常に高揚し、眠らなくても平気、自分が偉大だと感じるなどの症状がある場合、躁うつ病・双極性障害の可能性が高いです。脳機能が過度に活動している緊急性の高い状態であり、すぐに精神科での気分安定薬による治療が必要です。病院受診・予防の目安となる「イライラして眠れない」ときのセルフチェック法
・不眠が2週間以上続き、週3日以上眠れない・ストレスが改善されたにも関わらず不眠が続く場合
・食欲不振、体重減少、強い疲労感、興味・喜びの喪失などの抑うつ症状や、自傷他害の衝動がある
「イライラして眠れない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「イライラして眠れない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。睡眠障害
不眠症は、睡眠の質の低下が原因で日中の生活に支障をきたします。イライラが不眠を引き起こす精神生理性不眠症も含まれます。治療は睡眠衛生指導と認知行動療法(CBT-I)が中心で、症状が続く場合は医療機関への受診が必要です。うつ病
気分が落ち込むだけでなく、イライラや焦燥感が強く出るタイプのうつ病もあります。原因は、脳内の神経伝達物質の機能低下です。休養と抗うつ薬による治療が中心で、抑うつ気分と喜びの喪失が2週間以上続いたら精神科を受診してください。躁うつ病・双極性障害
うつ状態と、気分が異常に高揚する躁状態を繰り返す病気です。躁状態ではイライラと不眠が同時に現れ、緊急性が高いです。治療は気分安定薬が中心で、社会生活に支障が出るほどの気分の波がある場合は精神科受診が必要です。更年期障害
閉経前後の女性に多く、エストロゲン減少による自律神経の乱れからイライラ、不眠、ほてりなどが生じます。治療にはホルモン補充療法(HRT)などが用いられます。日常生活に支障が出始めたら、婦人科または更年期外来を受診してください。自律神経失調症
ストレスや不規則な生活により、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、イライラ、不眠、頭痛など全身に不調が現れます。治療は生活習慣の改善と薬物療法が中心です。内科で異常がないにもかかわらず不調が続く場合は精神科・心療内科へ受診が必要です。PTSD(心的外傷後ストレス障害)
トラウマ体験のフラッシュバックと、常に警戒している過覚醒が特徴で、強いイライラや不眠が生じます。専門的な精神療法(トラウマ焦点化CBTなど)と薬物療法が必要です。フラッシュバックを伴う不眠が続く場合は、トラウマ治療を専門とする精神科を受診してください。「イライラして眠れない」ときの正しい対処法は?
イライラを抑え込まず、アサーション(適切な自己表現)やマインドフルネスで感情と距離を取るスキルを身につけることがストレス解消法となります。イライラ・ストレスが気になるときの睡眠改善法
睡眠改善法として、就寝90分前のぬるめの入浴で体温を上げ、その後下げるリズムを利用します。入眠・寝付きを良くするのに音楽は有効?おすすめの音楽は?
歌詞がなく、単調で予測可能なリズムのクラシックや自然音などの音楽の活用は、リラックス効果を高めます。イライラして眠れないときに市販の睡眠薬を服用しても大丈夫?
市販の睡眠薬は抗ヒスタミン薬の眠気を利用したもので、連用や根本治療には繋がりません。緊急時の応急処置に留め、症状が続く場合は専門医へ相談してください。イライラ・ストレスの解消法
・生活リズムを整える起床・就寝時間を一定に保ち、休日の寝だめを避けることが大切です。寝る前のスマホ使用やカフェイン摂取を控え、リラックスできる習慣を取り入れましょう。
・ストレスを溜め込まない
軽い運動や趣味の時間を設け、ストレスを外に出す工夫をしましょう。日記やマインドフルネスも有効です。
・寝室環境を整える
寝具や照明、室温を快適に保ち、眠りに入りやすい環境を整えます。アロマやヒーリング音楽を取り入れるのも効果的です。
「イライラして眠れない」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「イライラして眠れない」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
日中の嫌なことを思い出してむかついて眠れないときの対処法を教えてください。
草山 好以
「考えないようにしよう」とすることは逆効果になります。対処法として、「思考の分離(ディフュージョン)」をお勧めします。頭の中でネガティブな考えが浮かんだら、「ああ、またイライラがやってきたな」「これはただの思考だ」と、自分自身を客観視し、その思考と自分自身を切り離すトレーニングを試してみてください。また、腹式呼吸や筋弛緩法で、意識を身体感覚に集中させることも有効です。
イライラで眠れない時、目をつぶるだけでも睡眠の効果はありますか?
草山 好以
はい、目をつぶっているだけでも、ある程度の心身の休息効果はあります。外部からの視覚情報が遮断されるため、脳の活動量やエネルギー消費は低下します。眠れなくても「横になって目を閉じているだけでOK」と自分に許可を与えることは、入眠へのプレッシャーを減らす上で非常に大切です。
イライラで眠れなくなるのはなぜでしょうか?
草山 好以
イライラや怒り、強い不安といったネガティブな感情は、脳の扁桃体を刺激し、交感神経を優位にします。本来、睡眠に入るためには、脳が活動を抑え、副交感神経が優位になる必要があります。しかし、イライラが続くと、心拍数や体温が上がり、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が抑制されず、脳が「危険な状態だ」と誤認識し続けるため、睡眠の中枢が「休止」の指令を出せなくなるためです。
ストレスや怒りの感情で寝付けないことがあります。心療内科を受診すべきでしょうか?
草山 好以
週に3回以上、不眠が2週間以上続き、日中の生活(仕事、学業、家事)に支障が出ている場合は、受診を推奨します。一時的なストレスによるものであっても、不眠が慢性化すると不眠症そのものが病気となり、さらに治りにくくなります。特に、イライラや怒りの感情のコントロールが難しく、人間関係や仕事に影響が出ている場合は、適応障害や気分障害の初期症状である可能性もあるため、早期に専門医の診察を受けてください。
まとめ イライラして眠れないのときは「心身のSOS」と捉え、専門家へ相談を
イライラして眠れないという症状は、単なる寝不足ではなく、心身が発している重要なSOSサインです。多くの場合、背後には過度なストレスや、適切に対処すべき精神疾患・身体疾患が隠れています。生活習慣の見直しで改善しない場合や、気分の波がある場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。適切な治療とサポートにより、安定した睡眠と心の平穏を取り戻すことができます。「イライラして眠れない」症状で考えられる病気
「イライラして眠れない」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。内科の病気
- 更年期障害
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
循環器系の病気
- 心不全
- 不整脈(特に頻脈性不整脈・期外収縮)
「イライラして眠れない」に似ている症状・関連する症状
「イライラして眠れない」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 動悸・息苦しさ
- 全身倦怠感
- 頭痛・肩こり
- 食欲不振または過食