歯周病を悪化させる原因はストレスにあった!?

こんにちは、埼玉県さいたま市浦和区にある『ナカニシデンタルクリニック』院長で日本歯周病学会歯周病専門医の中西伸介と申します。
 
ストレスは万病の元と言われますが、現代人はどんな生活を送っていてもストレスと無縁で生活することはできません。忙しく働く方や、子育て中の方はもちろん最近では中学受験の勉強のストレスで歯ぎしりから顎関節症になってしまう小学生も多く、ストレスは身近なものになってきています。
仕事でも運動でも適度なストレスは緊張感を保ち、モチベーションを維持するために人間にはある程度は必要とされています。24時間連日、全くストレスがなかったら職場でも家でも働く意欲がなくなってしまいます。では、過度のストレスが加わった場合はどうなのでしょうか。体も心もボロボロなのに口腔内まで追い打ちをかけるように調子が悪くなったらそれこそ余計にストレスがかかってしまいます。

ストレスは歯周病をも悪化させる因子となるのでしょうか。今回は過度なストレスと歯周病の関係について詳しく説明してみたいと思います。

その前に、歯周病発症において、大前提となるのがまず、口腔内の歯周病細菌が歯周病を引き起こすということです。ブラッシング不良だと歯周病菌が歯周ポケット内に定着し、炎症を起こすことで歯周病が発症します。つまり歯周病細菌が口腔内に存在しなければ歯周病はそもそも起こらないということです。歯肉の炎症が軽度で、もう一度ブラッシングを見直すことで炎症が改善するのか、磨かない状態が続いている上に、その他の修飾(悪化)因子が加わり一気に歯周病が進行してしまうかで状態はかなり変わってくると言えます。その悪化させる因子にストレスは入ってくるのでしょうか?

中西 伸介

執筆歯科医師
中西 伸介(日本歯周病学会専門医)

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《保有資格》日本歯周病学会認定歯周病専門医、臨床歯周病学会歯周病認定医等。
《自己紹介》ナカニシデンタルクリニック院長の中西です。近年、歯周病と全身疾患との関連性もわかってきています。歯周病や虫歯は一度なってしまうとそのあといくら頑張って磨いても治ることがないのが実情です。そこでどうせ治らないとあきらめないで一日でも早めの治療をしましょう。

 過度のストレスがもたらすもの

 免疫力の低下

これは口腔内に限った話ではありませんが、過度のストレスにより人体の免疫力は低下します。体の免疫を担当しているのは白血球で、その中にはリンパ球、顆粒球、マクロファージなどが存在しています。免疫反応は自律神経支配を受けていて、活発な状態では交感神経が優位になり、落ち着いた状態では副交感神経が優位になりバランスを取っています。過度なストレスが加わると自律神経のバランスが崩れ自律神経失調症や重症になるとうつ病を引き起こしたりします。

私たちが持続的な強いストレスを受けると、脳からストレスに反応してステロイドホルモンや神経伝達物質が分泌され、白血球中のリンパ球や細胞の働きを低下させます。この免疫系の細胞の働きが弱くなるということが問題で、普段は歯周病菌と戦ってくれるはずの細胞が組織を守れず、歯周病菌の産生する毒素の影響を受けやすくなってしまいます。そのため歯周病が短期間で進行してしまいます。

 ストレスによる歯ぎしり

歯ぎしりに関しては、何故するのかなどまだはっきりと解明できていないこともあるのですが、一般的には日中のストレスを歯ぎしりによって解消していると言われています。そのため夜間の歯ぎしりはやめる必要はありませんが(寝ている最中に意識できないというのもありますが)、もともと歯周病がある方は歯周組織(歯槽骨)が溶けて歯を支える骨が少なくなっていることが多いので、歯ぎしりの揺さぶる横方向の力が歯とその周囲組織に加わると歯槽骨が急激に溶けてしまったり、揺れが大きくなってしまうことがあります。

そのため急激に歯周病が悪化してしまう可能性があります。これの対策としてはマウスピースが有効で、上下の歯を保護する、歯周組織を保護することができます

 不十分なブラッシング・ブラッシングに対するモチベーションの低下

ブラッシングがきちんと行えていないと当然、口腔内の歯周病菌は増加し、歯周病のリスクは上がってきます。仕事や育児、勉強で疲れてしまって食後やお風呂上がりに寝てしまう。とにかく家にいる時は疲れて気力がない、歯磨きを忘れてしまう、ということもあると思います。歯医者さんに通ってブラッシングをきちんとしてくださいと言われても、わかっているけど忙しくてできないという方も実際いらっしゃると思います。

しかし、そこで歯周病が悪化してしまっても誰も責任を取ってくれず結果は自分に返ってきてしまいます。歯周病まで悪化してしまったら、落ち込んでいたところにそのことがストレスを増やしてしまいますよね。忙しくて時間が取れないのであればなんとか歯磨きの時間を確保できるようにやり方や固定の考えかたを変えてみてもいいと思います。

いつもお風呂に入り、夕食を取ってそのまま横になって寝てしまう方は、食事とお風呂の順番を変えてお風呂で血流が良くなっている時に一緒に歯磨きも済ませてしまう。また子育て中で、お子さんが寝てからゆっくりテレビを見てお菓子を食べるのが至福の時という方はテレビの前にお菓子と飲み物を準備する時に一緒に歯ブラシも用意してください。歯ブラシを取りに行くのが面倒で立ち上がれないという方ははじめに歯ブラシも準備しておけばお菓子が終わって少ししたらそのままテレビを観ながらブラッシングを行って仕舞えばいいのです。歯科医によってはながら磨きをするのはダメです。必ず鏡の前で汚れを確認しながら行ってくださいと言う先生方も多いと思います(実際当院でも基本的にはそのように指導しています)が、ブラッシングは毎日行っていただきたいので、ブラッシング自体がストレスになってしまい、やらないこともあるというのは一番の問題です。

上に示したのはあくまで例ですが工夫の仕方次第でブラッシングに対してのモチベーションを下げないというのはできると思います。

 まとめ

ストレスにより歯周病が悪化する原因として、ストレスが歯周病菌に直接作用し歯周病菌が産生する毒素が強力になるということはありませんが、ストレスにより2次的にブラッシング不良になるようであれば歯周病の進行に影響すると考えられそうですし、ストレスが人体の組織に影響を及ぼし、組織の抵抗力が弱くなり、歯周病菌の影響を受けやすくなるというストレスがもたらす、組織へ影響などの2通りのパターンが考えられそうです。

このことから考えると歯周病が悪化する原因は他にも存在するため、必ずしも原因はストレスだ、とは言い切れないですが、悪化させる原因の1つであると考えられると思います。ストレス自体を軽減するのにはバランスの良い食事、充分な睡眠、軽い運動が良いとされています。あとは自分のリラックスできる時間を持つ。何よりブラッシングで口腔内をさっぱりするだけでも気分も変わってくると思います。ストレスが辛い時だからこそ、夜時間をかけてブラッシングをして、気分転換もできる、そして歯周病を悪化させないというサイクルにしていけると良いと思います。