虫歯が痛くなくなった。これって自然に治ったってこと?

公開日:2021/03/26

こんにちは、東急田園都市線たまプラーザの日本歯周病学会認定歯周病専門医が在籍する歯医者「美しの森デンタルクリニック」院長の村野嘉則と申します。
皆さんは虫歯になってしまって、歯に痛みが出た経験がおありでしょうか? 虫歯は初期の段階ではほとんど症状がないのですが、ある程度進行すると甘いものや冷たいものがしみてしまったり、噛むと痛いなどの症状が出ることがあります。
実は、日本では国民がどの程度虫歯になっているかの調査をしています。12歳の子供において文部科学省が調査してものでは平成元年の平均虫歯数が4.30本だったものが、平成28年には0.84本に減少しており、虫歯になるお子様は現在では確実に減ってきています。
しかし、厚生労働省の調査で平成5年と平成28年までの虫歯有病率を比べると、20代までは減少傾向にあったものが30代から横ばいになり50代から増加傾向に至ってしまっています。また、30代以降では歯周病の増加により歯茎が痩せてしまい、歯の根の部分が露出することによって起きる「根面虫歯」も問題になっています。
このように、大人になってからの虫歯は現在も問題になることが多くあります。私自身、歯周病の患者さんを拝見することが多いですが、歯周病治療後に起きる根面の虫歯には細心の注意を持ってメンテナンスを行っています。
さて、この虫歯の痛みですが、痛かったはずの症状が突然なくなってしまうことがあります。そのため、虫歯を放置してしまい状態を悪化させてしまう方もいます。今回は『虫歯が痛くなくなった。これって自然に治ったってこと?』をテーマにお話ししたいと思います。

村野 嘉則

執筆歯科医師
村野 嘉則(美しの森デンタルクリニック 院長)

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《保有資格》
日本臨床歯周病学会認定医。日本歯周病学会認定歯周病専門医。厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医等。
《自己紹介》
美しの森デンタルクリニック院長の村野です。歯を失う原因である歯周病の治療を専門としておりますが、歯周病は歯だけでなく、全身の健康にも被害を及ぼすのではと懸念されている疾患の一つです。各科の専門医と協力することで、「なるべく歯を残す治療」を心がけています。

そもそも「虫歯」とは?

虫歯とは、ミュータンス菌などの虫歯菌によって作り出された酸により、歯が溶けてしまう病気です。
虫歯菌は砂糖や炭水化物などの糖質をエネルギー源としてネバネバした物質と酸を作り出します。このネバネバがプラーク(歯垢)と言われる細菌の塊の元となり、酸は歯の表面のカルシウムなどを溶かしてしまい歯に変色をおこしていきます。
お口の清掃をしっかりと行ってプラークを除去し、虫歯菌の数を減らしていれば虫歯にはなりにくいと思われます。そして通常、虫歯の出した酸は唾液の作用により中和されます。しかし、もともとの唾液の分泌量や性質のため酸を中和する力が弱い方もいて、そういった方は虫歯リスクが高くなります。また、間食を頻繁にとったり、砂糖入りのコーヒーなどを仕事の合間に飲むなどにより酸の中和が間に合わない場合も虫歯になりやすく、リスクが上がります。

虫歯の症状

虫歯は症状の出にくい初期虫歯から段階的に症状が出て進行し、最終的には我慢できないぐらいの痛みが出ることがあります。
虫歯の痛みは、歯の中の神経に刺激が伝わったり、障害を受けることによって生じます。鈍い痛みというよりは鋭い「ズキっ」とした痛みが多いです。
初期の虫歯では虫歯は硬いエナメル質にとどまっているため通常症状が出ることはありません。
進行して象牙質に達すると、象牙質は細かい管で神経のある歯髄につながっているために冷たいものや甘いものがしみたり、噛むと痛いなどの一時的な症状が出てきます。
そしてさらに進行すると虫歯が神経のある歯髄に到達し細菌感染が起きることで炎症を起こしてしまい、冷たいものに加えて温かいものにもしみるようになり、持続する強いズキズキとした痛みが出てしまいます。時には夜眠れないほどの激痛となります。
しかし、この状態を我慢して放置していると次第に痛みがなくなり、全く症状がなくなることがあります。

虫歯の進行度合

〇〇歯科医院photo

虫歯のなり始めは白色〜乳白色で穴はまだ空いていません。しっかりとしたブラッシングなどのプラークコントロールを行うことで再石灰化を促し、元に戻る可能性がある状態です。
しかし、さらに進行してしまうと徐々に黄色味を帯び薄茶色、黒色と変化してついには歯の表面に穴が開いてしまうのです。
歯は実は層状の構造をしています。一番外側の部分をエナメル質と呼び、毎日の食事に耐えられるよう体の中で一番硬い組織でできています。その内側は象牙質というエナメル質より軟らかい組織でできており、細かい管で中心部にある歯髄という神経や血管などからなる組織とつながっています。
虫歯の酸になんとか抵抗していた硬いエナメル質に穴が開いてしまうと、虫歯は進行してしまい、やがてその下にある象牙質に到達します。象牙質はエナメル質より軟らかいため虫歯はさらに拡大、細かい管の内部にも細菌が侵入してしまいやがて歯髄に達する虫歯となってしまうのです。

虫歯が痛くなくなった理由とは?

「痛みがなくなった! 治った?」と喜んではいけません。症状がなくなったからと言って虫歯が治ったわけではなく、歯の中の神経が死んでしまったからなのです。
歯髄は本来、強い抵抗力を持っていますが、細菌の感染を放置すると炎症は進行悪化して組織壊死をおこしてしまうのです。
そして、壊死した状態を放置し続けると、細菌はさらに増殖して根の先端にまで炎症が広がり膿もたまってきます。根の先端に炎症が起きると再び痛みなどの症状が出てしまいます。

痛くなくなった虫歯の治療方法

歯の寿命を考えると歯の神経や血管の入っている歯髄を守ることがとても大切になります。
虫歯が原因となって感じる症状は、虫歯の初期から末期へと段階的に変化していきます。虫歯にならないに越したことはありませんが、もしも虫歯になってしまった場合、なるべく症状のない初期の段階で発見することがベストです。治療回数も1回で済むことがほとんどです。
症状が出てしまった場合でも噛む時だけ痛みがある場合や、冷たいものや甘いものを食べた時だけ沁みるような症状であれば、ほとんどの場合、神経を保存する治療が可能です。最近では神経まで達した虫歯であってもMTAセメントなどの特殊なお薬を応用することで神経の保存が可能になってきています。治療も1回から数回で終了します。
何もしなくてもズキズキ痛いというような症状が出てしまうとすでに手遅れなことが多く、歯の歯髄を取り除かないと症状が改善しない結果となってしまいます。完治までの治療内容も複雑化するため、回数もそれなりにかかってしまいます。

まとめ

いかがでしたでしょうか? 最初にお話しした通り、大人の虫歯が昨今とても問題になっています。今回は虫歯の症状について詳しくお話ししてきましたが、皆さん虫歯や歯周病予防のために歯科医院での検診を定期的に受けていますでしょうか?虫歯も歯周病も、なってしまってからではマイナスの多い病気です。しみるなど症状を感じたら、なるべく早くかかりつけの歯医者さんに相談することをお勧めします。歯の寿命にとって、虫歯は早期発見がとても重要となってきます。