歯周病と心臓病の関係とは?

公開日:2021/01/14  更新日:2021/07/18

こんにちは、日本歯周病学会認定医の太田功貴と申します。
近年、歯周病が全身的な他の病気とも関係していることが解明されてきており、マスコミやテレビでも取り上げられています。歯周病との関連が報告されている病気には、『脳血管疾患・心臓病』、『糖尿病』、『誤嚥性肺炎』、『関節リウマチ』、『腎臓病』、『早産・低体重児出産』などがあります。今回はこれらの中で、歯周病と心臓病の関係についてご説明します。

太田 功貴(日本歯周病学会認定医)

執筆歯科医師
太田 功貴(日本歯周病学会認定医)

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東京歯科大学卒業。歯学博士。日本歯周病学会認定医、日本口腔インプラント学会会員、東京歯科大学歯周病学講座非常勤講師。

 歯周病とは?

歯周病とは、一部を除いて歯垢(デンタルプラーク)の中に含まれる歯周病の原因菌よって引き起こされる感染性の炎症性疾患です。炎症が波及すると、歯の周囲の歯茎や、歯を支えている骨にまで影響を及ぼします。その結果、歯茎の腫れや出血などの症状に始まり、進行すると、歯を支えている骨が吸収することで、歯がグラグラするといった症状を引きおこします。

 心臓病とは?

心臓病とは、心臓に関連する疾患の総称で、その主な疾患には以下のようなものが挙げられます。

1.虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
2.不整脈
3.弁膜症
4.心筋症
5.動脈・静脈疾患
6.心不全
7.先天性心疾患
8.心筋炎・心膜炎

厚生労働省人口動態統計によれば、心臓病は悪性新生物(がん)に続いて、日本人の死因第2位であり、この心臓病の中の狭心症や心筋梗塞は、動脈硬化が発症の大きな要因になっていると言われています。

 

動悸、ふわふわするめまいに関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

 動脈硬化とは?

動脈壁にコレステロールが沈着し、血管が硬化することで弾力性が失われた状態で、動脈硬化にはいくつかの種類があります。
比較的太い動脈の内膜に血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)などが沈着して、粥状の塊(アテローム性プラーク)をつくるのが、粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)です。このプラーク形成によって、血管が狭くなり、心筋への酸素供給が不十分となり、胸痛などを主症状とする狭心症を発症させます。さらにプラークが破綻すると、止血機構によってその部分で血液凝固が起こり、大きな凝固塊は血管を封鎖し血流を止め、心筋梗塞を引き起こします。
動脈硬化は、血中コレステロール喫煙高血圧不適切な食生活運動不足ストレスなどの生活習慣によって起こることは既に明らかになっていますが、それによって説明がつかない心血管系の疾患については歯周炎のような炎症の関与が考えられています。

 歯周病と心臓病の関係性

現在、歯周病と心臓病との関係性としてわかっていることには以下のようなことが挙げられます、
➀炎症性マーカーであるC反応性タンパク(CRP)は動脈硬化性疾患のリスクマーカーとして有用であり、歯周病によりこの値が上昇する。
②歯周病のない人と比較して、歯周病患者において虚血性心疾患に罹患している者の割合が有意に高かった。
③歯周病の患者で心冠状動脈のバイパス手術を受けた人の血管壁から歯周の原因菌の検出を行うと、約25%の患者から菌が認められた。
④歯周病の原因菌の検出率は、歯周炎の重症な患者のほうが軽度の患者に比べ高かった。
と報告されています。しかし、現在でもいまだ歯周病による、動脈硬化発症・心臓病への関与の詳細なメカニズムは解明されていません。現在のところ、歯周病の原因菌が産生する内毒素などが血液に入ると、炎症細胞が増加します。これらの炎症細胞が産生するサイトカイン(TNF-α、IL–1、IL–6など)が、血流を通じて、心臓や血管に移動し、血管そのものを硬化させたり、アテローム性プラークの進展や血栓を形成するように働いて動脈硬化を進行させ、その結果、狭心症や心筋梗塞といった心臓病などの重篤な病気を引き起こすリスクが上がってしまうのではないかと考えられています

 歯周病治療が心血管系に与える影響

最後に歯周病治療が心臓病に与える影響ですが、実際、心臓病のリスクを減らせるのでしょうか。
まず、動脈硬化性疾患のリスクマーカーとして、

1.血清中炎症マーカー(CRP、IL-6などの上昇)
2.血清脂質(LDLの上昇、HDLの低下)
3.血管内皮細胞機能や動脈の弾性の低下

などが挙げられます。 いくつかの研究によると、

➀歯周病の治療を行うことでCRPIL-6などの炎症性マーカーの値が低下する。
②血清脂質量に関しては歯周治療によってHDL値が改善する。
②高度の歯周治療を行うことで動脈壁の状態が改善される。

と報告されています。歯周治療によって動脈硬化性疾患の発生が抑制されるという明らかな根拠は示されていませんが、歯周病によって引き起こされた炎症は動脈硬化性疾患のリスク因子となりうることが考えられることから、今後、詳細なメカニズムの解析と、発症への関連性が解明されることにより、さらに歯周病治療の重要性が明らかにされていくと考えられています。

 まとめ

歯周病は日本の成人の約8割が罹患している感染症ですが、実際に治療を受けている患者はかなり少ないといわれています。その理由としては、歯周病は重症になるまで症状が出にくいため、歯周病であることに気づかない、また、気づいていても治療をしないでいる人が多いことが考えられます。今回お話しさせていただいたように、歯周病は口の中だけの病気ではなく、心臓病をはじめ様々な全身の病気とのかかわりがあることがわかってきました。ぜひ、この機会に歯科医院のもとで定期的な検診を受けていただき、治療の必要性がある場合は、適切な歯周病治療を受け、お口の中だけでなく全身の健康を保ちましょう。

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