歯周病とタバコの恐ろしい関係

こんにちは。日本歯周病学会認定医の武内 崇博と申します。2020年の東京オリンピックに向けて禁煙の流れが進んでいますね。つい10年ほど前までは路上喫煙をしている方をよく見かけました。最近では路上や各商業施設などに設けられた喫煙所に所狭しと、喫煙者が肩を寄せ合いながらタバコを吸っている景色も珍しくありません。タバコがガンなど様々な病気に悪影響を及ぼすことはみなさんご存知かと思われます。実は喫煙と歯周病と密接な関係があり、様々な研究が行われています。喫煙者と非喫煙者を比較すると、喫煙者は2-8倍、歯周病になりやすいと報告されています。歯周病は自覚症状が出にくく、気付いたら重症化しているケースもある大変恐ろしい病気です。また歯周病は歯を抜く原因として第1位でもあります。タバコを吸っている方で最近歯を磨くと血が出る、なんてことはありませんか?今回は歯周病喫煙の関係についてお話ししようと思います。

執筆歯科医師
武内 崇博(日本歯周病学会認定医)
プロフィールをもっと見る
歯科医師、歯学博士。東京歯科大学歯周病学講座講師(非常勤)。日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会の各会所属。

 タバコとは?

みなさんの中にはタバコを吸う方も吸わない方もいらっしゃると思いますが、意外とタバコについてよく知らないことが多いと思います。そこでまずはタバコについて簡単にまとめてみたいと思います。
日本にはおよそ16-17世紀に渡来したといわれています。当初はキセルを用いて吸うことが多かったそうですが、日本で独自の進化を遂げ現在の形になったと言われています。
一番ポピュラーな紙巻きタバコや、近年大流行している加熱式タバコ、葉巻、水タバコ、電子タバコなど様々な種類があります。
我が国における喫煙率は年々減少する一方ですが、成人男性で約27.8%、女性で8.7%と推定約1880万人いるとされ、諸先進国と比較すると依然高い値を示しています。
加熱式タバコの誕生により禁煙が成功できていた人が再びタバコを吸い出すというケースも珍しくないそうです。

 一般的なタバコの害について

タバコの煙には約4000種類の化学物質が含まれています。そのうち250種類が有害で、さらに約70種類が発ガン性を有しているといわれています。ガンだけでなくCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患、脳卒中などの循環器疾患など様々な病気の原因になるとされています。喫煙により寿命は10年縮まるとされ、70歳時の生存率は23%も下がるとされています。また、吸った本人だけでなくタバコの煙による受動喫煙による非喫煙者の健康被害もあるとされ、法が制定されるまでになりました。毎年受動喫煙が原因で約60万人の方が亡くなられています。有害物質の中で有名なのがニコチン、タール、一酸化炭素、ヒ素、カドミウムなど公害の原因物質とされるものまで含まれています。
また、単に発がん性などの有害性だけでなく強い依存性を持つこともタバコの恐ろしい特徴の一つです。驚くべきことにヘロインやコカインなどの麻薬より依存度は高いとされ、禁断症状も強く現れるといわれています。現在はニコチン依存症と病名がつき、ニコチンへの依存度や喫煙本数により健康保険の適応のもと、禁煙治療を受けることが可能です。

 そもそも歯周病とは?またその原因と症状

歯周病とは歯周組織とよばれる4つの組織(歯肉=歯ぐき、歯槽骨=顎の骨、セメント質=歯の根を覆う硬い組織、歯根膜=歯と骨をつなぐ靭帯)に起こる感染性の炎症性疾患のことをいいます。歯肉に限局して起こるものを歯肉炎、その他3つの組織まで炎症が広がると歯周炎と定義され、総じて歯周病とよばれています。
歯周病の原因は細菌性プラーク(歯垢)です。細菌性プラークと生体防御機構(免疫)のバランスが崩れると発症し、細菌性プラークの持続的な刺激が起こることで歯肉炎から歯周炎へと増悪していきます。リスクファクターには前述の細菌因子の他に、宿主因子(自身の先天的な因子)、環境因子(後天的な因子)などが挙げられます。後で詳しく述べますが、喫煙は環境因子に含まれます。要するに、細菌により起こった歯周病がその他の様々な因子により進行・増悪すると思っていただければいいかと思います。
歯周病の症状はどのようなものでしょうか?健康な歯肉は一般的に薄いピンク色をしており、歯間乳頭とよばれる歯と歯の間の歯肉はかたく引き締まっています。歯周炎に躍患すると、歯肉は腫れ赤みを帯びていきます。さらにブラッシングなどの刺激により歯肉から出血するようになります。炎症が拡がり歯周炎になると、歯と歯肉との溝(歯肉溝)が深くなり、歯周ポケットとよばれる3mm以上の深い溝ができるようになります。さらに炎症が進むと歯を支える骨が溶けて失われていき、歯が揺れたり動いていったりします。

 歯周病とタバコの関係

歯周病について簡単に説明させていただきましたが、いかがでしょうか。今回は歯周病とタバコの関係についてがメインテーマのため、より詳細に記載している記事がその他にあるのでそちらを参考にしていただけるとより理解が深まるかと思われます。
冒頭にも述べたように、喫煙者は非喫煙者に比べて2-8倍、歯周病になりやすいと報告されています。それは主にタバコの成分(主にニコチン)により歯肉の血行が妨げられたり、免疫系に悪影響を及ぼしたり、歯周組織を構成する細胞そのものの機能を低下するためといわれています。先程述べたように、歯周病に罹患すると数少ない自覚症状の一つとして歯肉から出血しやすくなりますが、喫煙の影響により出血しにくくなり発見が遅れるといわれています。また喫煙者は歯肉が茶色く変色するため、同じく歯肉の色の変化に気付きにくくなるといわれています。
また歯周病治療を行ったとしてもタバコは組織の治癒を遅らせるため、治療の効果が低下するとも報告されています。
歯科を受診した際に最初の問診で喫煙の有無を問われたり、禁煙を強く勧められたりすることがあるかと思います。関係ないかと思われがちですがこのような影響があることに起因しているわけですね。

 まとめ

いかがでしたか?タバコは全身だけでなくお口の健康にも悪影響を及ぼす恐ろしいものです。タバコがかっこいいという風潮は一昔前のもので、今はタバコを吸わないことが全てにおいて有益で常識的であるという風潮に変わりつつあります。それでもやめられない方がいるとしたら一度禁煙外来を受診してはいかがでしょうか?また、現在タバコを吸われている方は何かしらお口にトラブルを抱えている方が多いのが現状です。歯科を受診し、検診を受けてみてください。なににおいても早期発見できることで、その後の治療や予防がしやすくなっていきますよ。