歯周病は自然に治るって本当?

公開日:2018/12/28  更新日:2020/02/05

こんにちは。メープルデンタルクリニック大久保の剣持正浩(日本歯周病学会認定医)と申します。
歯周病で悩まれている患者様から、「なかなか歯医者に行く時間がとれないので、このまま手や足を擦りむいた時のように自然治癒することはないでしょうか?」、「歯ブラシだけでダメでしょうか?」、「薬効のある歯磨き粉やうがい薬だけでは治りませんか?」、「飲み薬では治らないでしょうか?」などなど、質問を受けることが多々あります。
歯磨き時の過度なブラッシング圧により歯ぐきが傷ついただけであれば、手や足を擦りむいた傷と同じように放っておけば、自然に治癒します。傷の大きさにもよりますが、特殊な場合(免疫の異常など)を除き、手や足の擦り傷を負った時に傷口のばい菌(細菌)を取り除き清潔な状態にすれば、免疫によって守られ新しい細胞ができて、傷が治癒するのと同じことです。しかし歯周病に関しては、自然に治ることはありません。なぜでしょうか?
今回は、歯周病はなぜ、自然に治癒しないのか?をテーマにお話をさせていただきます。

 歯周病とはなにか?

口の中には、歯周病の原因となる歯周病原細菌を含めると500種類以上の大変多くの細菌がいるといわれています。この中の10〜30種類の歯周病原細菌によって引き起こされる歯の周りの組織(歯肉・セメント質・歯根膜・歯槽骨)に起こる病気が歯周病です。
 
主な原因は、プラークと呼ばれる歯にくっつく細菌の塊ですが、Down症候群などの遺伝性の病気や、白血病などの血液の病気、皮膚の病気、降圧剤を含めた特定の薬によって歯ぐきを含めた歯の周りの組織に症状が出ることがあります。
多くの歯周病はプラークが原因であり、歯ぐきに炎症が起き、歯と歯ぐきの間の溝が深くなり、歯周ポケットができます。歯周ポケットが深くなると、細菌が活動しやすくなり、炎症が他の部位(歯ぐきから歯を支えている骨などへ)にも広がっていきます。
 
歯周病は大きく分けると歯肉炎と歯周炎に分かれており、歯ぐきが腫れたり、出血していても、炎症が歯の周囲の骨まで広がっていなければ、それは「歯肉炎」です。しかし、歯を支えている骨にまで炎症が広がると「歯周炎」となります。歯周炎まで病状が進行してしまうと、歯が揺れるや膿が出るなどの症状も出てきますし、プラークコントロールや簡単な治療では改善が難しくなってしまいますから、早期発見とメンテナンスが非常に重要になります。
 
上記から、歯周病の主な原因は、プラークが主な原因ということはお分りいただけたと思います。つまり、プラークと呼ばれる細菌の塊を除去しない限り、細菌が増殖し、炎症が広がり続けることになってしまいます。歯肉炎や軽度の歯周炎の状態であれば、適切なブラッシングや、細菌のすみかとなっている歯石を除去することで、歯周病は治癒に向かいます。
 
つまり、歯周病を治すには、プラークの除去を行うことが大切になります。プラークを除去することが大事だということは、おわかりになっていただけたと思いますが、プラークがある状態では、なぜ歯周病は治らないのでしょうか?免疫は働いていないのでしょうか?
次はプラークについて、もう少し詳しくお話しさせていただきます。
 

 プラーク中の細菌は、自然にはやっつけられない?

唾液中の糖タンパクをペリクルというのですが、これが、歯に接触すると、歯の表面にはペリクルの層ができます。そこに、粘膜や舌に存在する細菌がくっつきます。これが、プラークの始まりです。
唾液の流れによる洗い流し作用や、唾液や歯肉溝滲出液(歯肉溝と呼ばれる歯と歯ぐきの溝から、溝の外に向かって流れている体液)の各種免疫物質によって細菌の増殖は、最初は抑えられます。しかし、歯の表面に居座り続けたプラークは8時間ぐらいするとゆっくり増殖し始めます。さらに8〜48時間で、細菌は爆発的に増加します。このままプラークを除去しないと、3〜5日後には、成熟プラークとなり、成熟プラークの中の細菌は500種類を超えてきます。
 
想像しづらいと思いますが、おおよそプラーク1mm3を1mgと考えると、1mgのプラーク中に10億個の細菌がいると考えられています。すごい数の細菌が、プラーク中で共同生活をおくっていることがおわかりになったと思います。
 
このように、歯根面のような固い層と、歯肉溝滲出液のような体液との界面で、細菌が集団生活をする生活様式を細菌バイオフィルムといいます。つまり、細菌歯バイオフィルムという細菌の家をつくっているのです。
 
それでも、白血球やマクロファージ、リンパ球などが対処しようと働いてくれますが、細菌の家のように成熟したプラークの中の細菌自体にはなかなか対処できませんし、プラーク中の細菌が出すゴミのようなVesicleというものの処理だけで手一杯になってしまいます。また、細菌に効果のある抗生物質をつかっても、プラークというバイオフィルムのなかに閉じこもっている細菌には十分な効果が得難いことがわかっています。その訳として、表面にいる細菌には効果がかっても、家にとじこもっている細菌には抗生物質の有効な濃度で行き渡らないことになります。
 
よって、このバイオフィルムを除去しなくては、歯周病の原因となっている細菌をやっつけることはできませんし、治癒しないということになります。
では、どうやって、バイオフィルムを除去したらいいのでしょうか?
 

 バイオフィルムの除去

答えは簡単です。
バイオフィルムを除去することと、バイオフィルムが出来づらい環境をつくることです。

  • 患者様による適切なブラッシングや補助器具の使用や、歯科医院でのスケーリング・ルートプレーニングといった処置によりプラークを除去すること
  • プラークがたまりやすくなってしまった適合の悪い修復物や被せものを除去し、清掃性がよく適合のいい修復物や被せものにかえることや清掃のしやすい歯並びへの改善などによる口腔内の環境改善

となります。
 

 まとめ

多くの歯周病は、細菌の塊であるプラークが原因であることがほとんどであり、プラークの除去を行わない限り、放っておいて自然に治るものではありません。しかし、歯肉炎などの軽度のものであれば、ブラッシング等のホームケアで十分に改善が見込めますし、予防することは可能です。
すでに歯周病になってしまった場合の治療やお口の中のケアはもちろんですが、歯周病にならないようなお口の中のケア・歯周病にかかりやすくなってしまう因子の除去・定期的に歯科を受診し早期発見し治療することが非常に重要です。
そのためにも、専門知識のある歯周病学会専門医や認定医がいる歯科医院の受診をおすすめします。