歯周病は遺伝する?

こんにちは。メープルデンタルクリニック大久保の剣持正浩(日本歯周病学会認定医)と申します。
日々の臨床において、歯周病で悩まれている患者様から・「歯周病は遺伝しますか?」・「自分が歯周病だと子供にうつることはありますか?」・「歯周病にかかりやすい人はいますか」などと質問を受けることが多々あります。親として子供に「自分と同じ思いをさせたくない」と心配されることは非常によく理解できますし、人にうつすかもしれないと心配する気持ちも非常に理解できます。
今回は、歯周病は遺伝するのか?子供にうつるのか?歯周病のかかりやすさはあるのか?をテーマにお話をさせていただきます。

 歯周病とはなにか?

口の中には、歯周病の原因となる歯周病原細菌を含めると500種類以上の大変多くの細菌がいるといわれています。この中の歯周病原細菌によって引き起こされる歯の周りの組織(歯肉・セメント質・歯根膜・歯槽骨)に起こる病気が歯周病です。
主な原因は、プラークと呼ばれる歯にくっつく細菌の塊ですが、Down症候群などの遺伝性の病気や、白血病などの血液の病気、皮膚の病気、降圧剤を含めた特定の薬によって歯ぐきを含めた歯の周りの組織に症状が出ることがあります。
多くの歯周病はプラークが原因であり、歯ぐきに炎症が起き、歯と歯ぐきの間の溝が深くなり、歯周ポケットができます。歯周ポケットが深くなると、細菌が活動しやすくなり、炎症が他の部位(歯ぐきから歯を支えている骨などへ)にも広がっていきます。
歯周病は大きく分けると歯肉炎歯周炎に分かれており、歯ぐきが腫れたり、出血していても、炎症が歯の周囲の骨まで広がっていなければ、それは「歯肉炎」です。しかし、歯を支えている骨にまで炎症が広がると「歯周炎」となります。歯周炎まで病状が進行してしまうと、歯が揺れるや膿が出るなどの症状も出てきますし、プラークコントロールや簡単な治療では改善が難しくなってしまいますから、早期発見とメンテナンスが非常に重要になります。
 
上記から、歯周病の主な原因は、プラークが主な原因となります。では、歯周病は遺伝するのでしょうか?

 歯周病は遺伝するのでしょうか?

歯ぐきが増殖性に腫れる遺伝性歯肉線維腫症という非常にまれな病気はありますが、歯周病そのものが遺伝するということはありません。
 
しかし、主な歯周炎である慢性歯周炎は35歳以降に発症するといわれていますが、一般的にはプラークがそんなに付着していないにもかかわらず、10〜30歳代で急速に病状(歯を支えている骨などの破壊)が進行する侵襲性歯周炎といわれる特殊な歯周炎があります。この歯周炎は、特定の家族内に発生するという家族内集積という特徴と、患者様によっては、防御機能や免疫に異常が認められるという二次的な特徴があります。このことから、侵襲性歯周炎である場合は、歯周病にかかりやすい体質というものが遺伝する可能性は考えられます。
このように、近年は遺伝子診断により、本当に遺伝的になりやすい人、なりにくい人がいるかどうか科学的に解明されつつあるといわれています。
 
以下にあげる疾患は、歯周病そのものが遺伝しているわけではありませんが、ひとつの症状として急速に進行する歯周炎を伴うといわれていますので、歯周炎に対する予防や治療を含む口の中のケアが必要です。
 

  • 家族性周期性好中球減少症
  • ダウン症候群
  • 白血球接着能不全症候群
  • パピヨン-ルフェーブル症候群
  • チェディアック・東症候群
  • 組織球症症候群
  • 小児遺伝性無顆粒球症
  • グリコーゲン代謝疾患
  • コーエン症候群
  • エーラス・ダンロス症候群(Ⅳ・Ⅷ型)
  • 低ホズファターゼ症
  • その他の疾患

 

 歯周病である親から子供へ歯周病はうつるのか?

なんらかの接触でお子さんの口の中にもともといなかった細菌自体がうつる可能性はありますが、細菌がうつったからといって歯周病がうつるということではありません。なぜなら、歯周病はプラークとよばれる細菌の塊が原因ですから、しっかり歯磨きをして口腔内のケアを行っていれば、歯周病がうつることはないといわれています。
ただし、重度の歯周炎の場合は、歯周病になりやすい体質というものが遺伝している可能性もあるため、より一層徹底したブラッシングが必要だと思われます。

 歯周病にかかりやすい人はいる?

歯周病のかかりやすさは、大きく分けると、お口のなかの問題と全身的な問題に分かれます。
お口のなかの問題は、ブラッシングがしづらい歯並び・プラークが蓄積されやすい歯石や不適合な詰め物やかぶせもの・歯周病細菌の種類・粘膜の形などです。
全身的な問題は、喫煙などの生活習慣・心理的社会的ストレスなどの社会的因子・糖尿病などの病気、遺伝的影響などのさまざまな要素が関わってきます。
これらの要素が関わることで、歯周病にかかりやすくなります。
 
また、遺伝子診断、免疫応答・炎症反応の検査により歯周病にかかりやすい患者様がいると報告されています。
 

 歯周病にならないようにするには?

細菌の塊であるプラークが付着しないような口腔内の環境をつくることが一番大事ですし、歯の表面や歯と歯の間、歯と歯肉の境など、かなり行き届いた歯磨きが必要です。
 

  1. 食べたら歯磨きを心がけましょう。
  2. 歯周病認定医や専門医のいる歯科医院を受診して、正しいブラッシング方法や補助器具(フロス・歯間ブラシ)の使い方を身につけましょう。
  3. プラークが残りやすい部位を把握しましょう。

奥歯や、歯の間、歯ぐきの境目、噛み合わせのない歯の表面、入れ歯の支えになっている歯などは、特に付着しやすいです。

  1. フロスや、歯間ブラシなどの補助器具を正しく使用しましょう。
  2. 磨き残しがないように、染め出し液などを使用してみましょう。
  3. 歯石がついている場合や、すでに歯周病により深い歯周ポケットがある場合は、ブラッシング等だけでは限界があります。歯周病専門医や認定医がいる歯科医院を受診しましょう。

 

 まとめ

非常にまれな疾患を除いて、歯周病自体が遺伝するということはありません。
多くの歯周病は、細菌の塊であるプラークが原因であることがほとんどです。すでに歯周病になってしまった場合の治療やお口の中のケアはもちろんですが、歯周病にならないようなお口の中のケア・歯周病にかかりやすくなってしまう因子の除去・定期的に歯科を受診し早期発見し治療することが非常に重要です。
参考文献:
日本歯周病学会 歯周治療の指針2015