フロスは使い方が難しい!? 簡単に使えるポイントをご紹介

こんにちは。日本歯周病学会歯周病専門医・歯学博士の武内崇博と申します。歯周病や虫歯の予防には日々の歯磨きは欠かせません。1日1回しか磨かない方もいれば、毎日3回以上磨く上にフロスや歯間ブラシなどを駆使して完璧に磨く方などさまざまです。フロスという言葉を聞いたことはありますか? 糸ようじと聞くとテレビCMなどで聞いたことがあり馴染みがあるかもしれません。主に歯と歯の間を清掃するために用いる糸状の清掃器具のことをいいます。歯ブラシだけで歯に付着する汚れを全て取り除くことは難しく、フロス歯間ブラシを併用すると、より効率よく歯を磨くことができます。そこで今回は特にフロスにフォーカスを当てて、お話しをしてみようと思います。

武内 崇博

執筆歯科医師
武内 崇博(日本歯周病学会認定医)

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歯科医師、歯学博士。東京歯科大学歯周病学講座講師(非常勤)。日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会の各会所属。

歯周病とは

歯周病とは歯の周りの組織(歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質)に起こる炎症性の疾患です。歯と歯茎の境目にある溝を歯肉溝といい、その溝にたまった細菌が原因で起こります。発症初期には歯茎が赤く腫れたりするだけですが、進行すると歯を支える骨が溶け抜歯に至る大変恐ろしい病気です。自覚症状はないことが多く、歯がぐらぐら揺れるのが気になり歯科医院を受診すると抜歯を宣告された、なんていう話も珍しくありません。また口臭の原因にもなります。厚生労働省により行われた調査によると、成人の約8割が歯周病であるという恐ろしい結果がでました。さらに歯周病と全身疾患は関連性があることが報告されています。報告されている疾患は糖尿病や心疾患、低体重児出産などさまざまです。歯を失うだけでなく全身にも悪影響を与える歯周病の恐ろしさは分かっていただけましたか?

なぜ歯磨きが大切なの?

歯周病の予防には歯磨きが大切! ということはみなさんなんとなくご存知かと思います。ではなぜ歯磨きが大切なのでしょうか。前述のように歯周病の原因は細菌です。歯に付着するプラーク・歯垢と呼ばれる沈着物は細菌とその代謝産物の塊です。そのプラークが除去されず慢性的に歯肉溝に貯まることで炎症は始まります。つまり炎症が始まる前にプラークが除去できていれば理論上、歯周病が起きることはありません。しかし実際、歯磨きは非常に難しく、歯に沈着するプラークを0にすることはなかなか困難です。そのため限りなく0近くまで除去することが目標であるといえます。歯の表面のプラークは除去できても、歯と歯の間は狭く、そこを歯ブラシだけで除去するのはほぼ不可能です。そのためフロス歯間ブラシといった補助的な清掃器具を併用し、限りなく理想に近付けていくことを推奨いたします。

歯磨きに用いる道具

では具体的に歯磨きに用いる道具にはどのような種類があるでしょうか。以下に簡単にまとめてみました。

手用歯ブラシ

現在も一般的に歯磨きに用いられており、毛の材質、植毛部の大きさ、毛の直径と長さ、毛束の数と列、把柄部の形と大きさなどにより多くの種類と形があります。

電動歯ブラシ(広義)

1960年代から開発され、電動歯ブラシ(広義)には動源により電動歯ブラシ、音波歯ブラシ、超音波歯ブラシに分類されます。除去効果は手用歯ブラシと差は無いとされていますが、ブラッシング時間の短縮や簡易に行えるという利点があります。

フロス(デンタルフロス)

細いナイロン繊維製の補助的清掃器具で、歯間部の汚れを除去するためのものです。詳細は別の項にてまとめています。

歯間ブラシ

細い針金にナイロン毛をつけたものやゴム製の小さなブラシで、歯間部の汚れを除去するための補助的清掃器具の一つです。歯間部の隙間が広いときに適しています。ハンドルにはストレートタイプとL字タイプがあり、前歯や奥歯など部位別に使い分けます。太さによりサイズがかなり細かく分けられており、適切なサイズを見分けるのはご自身で判断するのが難しいため、歯科医師や歯科衛生士に相談してみるのが良いでしょう。

フロスとは?

デンタルフロスが正式名称で、歯ブラシの毛先が届きにくい隣接面(歯と歯が接している部位)のプラーク除去、および歯石や虫歯の探索に用いられます。歯ブラシのみだとプラークの除去効率が58%なのに対し、フロスを併用することで86%まで上昇するという報告もあります。ナイロン毛でできており、表面にワックスコーティングされているものとされていないものがありますが、プラーク除去効果の差はないとされています。糸巻きタイプが一般的ですが、ホルダーに糸が巻き付けてあるホルダータイプもあります。形状により下の前歯に用いるF字タイプ、上の前歯や奥歯に陥るL字タイプに大別されています。いずれにせよ、歯ブラシの補助的清掃器具として位置づけられています。

具体的にフロスはどうやって使うの?

では具体的にどのようにフロスは使うのでしょうか。糸巻きタイプホルダータイプに分けて説明していこうと思います。
糸巻きタイプはまず30〜40cmほど出し、両手中指に2〜3回巻き付けます。15cmくらいの長さにし、ピンと張ります。両手の人差し指と親指で持ち操作をします。歯と歯の間に入れノコギリを引くように挿入しましょう。その際、力任せに勢い良く入れてしまうと歯肉を傷つけるので注意が必要です。そして歯に巻きつけるように上下にこすってプラークを除去していきます。詰め物などに引っかかって抜くのが大変であれば無理に抜かず、片方の指から糸を外していけば容易に引き抜くことができます。
ホルダータイプはすでにプラスチックのホルダーに糸が装着されているので糸巻きタイプ同様にノコギリを引くように挿入し、歯の面に合わせて上下動するようにプラークを除去していきます。引き抜きにくい時も慎重に力任せにせず、ゆっくり動かしながら引き抜きます。
いずれも慣れるまでは鏡で見ながら、挿入できる場所と強さを確認しましょう。フロスは操作性が難しいため、歯科医師や歯科衛生士に使い方をレクチャーしてもらうことで、より正確にプラーク除去が行なえます。

フロスを用いる順番は?

またフロスと歯ブラシはどちらを先に行うのか?という疑問にぶつかったことはありませんか? 実際調べてみるとメーカーにより歯磨きの前に行ってください、と注意書きがあったり、歯ブラシのあとに用いてくださいと記載があったり、まちまちです。教科書レベルでも明確な記載はなく、我々歯周病専門医ですら認識は曖昧なところがあります。論文ベースで調べてみると、2本の論文でフロスを先に行ったほうが歯の汚れを効率よく取り除くことができ、フッ素を残すことができるということが分かりました。しかし一般的なコンセンサスを得られている話ではなく、あくまで二つの研究結果がフロスを先に行ったほうがいい、ということなので参考にする程度にしてみるといいかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は歯磨きの中でも特にフロスに絞ってお話しをしてみました。歯周病や虫歯の予防に歯磨きが大切なことはもちろんですが、フロス歯間ブラシといった補助的清掃器具を用いることでより確実に歯の汚れを除去することができます。一度歯科医院に足を運び、フロスの使い方を学んでみませんか?