歯医者さんはどんな歯磨きをしているの? お答えします! プロフェッショナルのブラッシングテクニック

こんにちは。日本歯周病学会専門医の武内崇博と申します。日々診療をしているなかで、患者さんのお口の状態は様々だと感じます。若くして歯周病に罹患し何本もの歯を失っている方や、80歳を超えていても一本の歯を失うことなく元気にお食事されている方など。日本は世界三位の経済大国であり、国民皆保険制度も制定されたれっきとした先進国であるにもかかわらず、なぜそのようなことが起こるのでしょうか? 遺伝子レベルで歯周病や虫歯になりやすい方、なりにくい方がいるのは事実です。しかしお口の健康を保っている方に共通しているのは、適切なブラッシング方法を身につけ、歯科に定期的メインテナンスに通っていることです。毎日3回歯を磨いているのになんで歯周病になるの?患者さんからこんな問い合わせを受けることは少なくありません。歯を“磨いていること”と“磨けていること”は違います。そこで今回は末永くお口の健康を保つために、適切なブラッシング法を学んでいただけたらと思います。

武内 崇博

執筆歯科医師
武内 崇博(日本歯周病学会認定医)

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歯科医師、歯学博士。東京歯科大学歯周病学講座講師(非常勤)。日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会の各会所属。

歯周病や虫歯の原因は細菌!

まず知っていただきたいのは歯周病や虫歯は細菌感染により起こるということです。歯の表面に高密度に細菌が密集した柔らかい付着物をプラーク・歯垢といい、その中には歯周病や虫歯の原因となる菌が数多く存在しています。いずれも原因となる菌は特定されており、またそれぞれの細菌がネットワークを形成し、より強固に歯に付着していきます。時間が経てば経つほど除去は難しくなるため、早めにブラッシング等による除去が必要ということです。歯周病になるメカニズムなどは他の記事でより詳細に記載しているため、そちらをご参考ください。

まずは歯ブラシの選択から?

我々は、手用の歯ブラシ電動歯ブラシどちらがいいですか? という質問をよく受けます。除去効率はさほど変わらないとされていますが、メーカーによっては手用を上回る電動の商品もあります。しかし正しいブラッシング法やブラシを当てる位置が分かっていない方には電動はオススメしていません。どうしても電動歯ブラシを用いることで磨いた気になり、かえって病状が悪化するケースがあるからです。よってまずはどこでも手に入る手用の歯ブラシを選んでいただきます。ドラッグストアなどに行くと、一面色々なメーカーから歯ブラシが並びどれを選んでいいか悩まれると思います。それではどんな歯ブラシを選べばいいのでしょうか。
基本的にはヘッドの小さなもので、形状に加工が施されていないものがいいでしょう。硬さは炎症が強いときには“やわらかめ”あるいは“ソフト”、炎症が落ち着いてきたら“ふつう“あるいは“ミディアム”が推奨されます。横から見たときに毛先が開いてきたら交換のサインであり、新しいブラシに交換してください。開いてしまっているブラシで磨いても、除去効果はかなり低いとされています。実際ご自身で判断するのは難しいと思いますので、歯科医師や歯科衛生士などに相談なされるといいでしょう。

その他のブラッシングツール

歯ブラシだけでは歯と歯の間や、奥歯の一番うしろの部分を磨くのは困難です。歯周病は歯と歯の間の部分から起こるとの報告もあり、虫歯の好発部位の一つに歯と歯が接しているコンタクトポイントがあります。その部位を効率よく清掃するために歯間ブラシフロス(糸ようじ)といった補助的清掃用具を用います。歯磨きが上手な方でも歯間部にプラークが残っていることは数多く見受けられます。しかし出先や勤務中にそれらを用いることは時間的に難しいと思われますので、最低でも夕食後や就寝前に一日一度用いるようにしてください。欧米諸国ではこれらの普及率はかなり高く、高い予防の意識が伺えます。歯間ブラシはサイズ展開が数多くあり、迷われることも多いと思います。細すぎてもプラークは除去できず、太すぎても歯肉を傷つけてしまいます。歯ブラシ同様に歯科医院で部位別に適切なサイズを聞いてみるとわかりやすく教えてくれますよ。
また歯並びは人によりさまざまで、特に下の前歯などは重なって生えている(叢生)ことが多く、通常の歯ブラシだけでは毛先が届かないのが現状です。叢生のある部位や歯列の一番うしろの縁の部分はタフトブラシというヘッドが極端に小さい歯ブラシがありますので、用いてみることをおすすめします。

歯磨き粉やうがい薬はどんなものを使ったらいい?

歯ブラシ同様、歯磨き粉うがい薬にはさまざまな種類があり、どれを選んでいいか悩まれると思います。最近では美容ブームも相まってホワイトニング効果を売りにする歯磨き粉が数多く売り出されています。基本的には研磨剤が多く含まれ、毎度の歯磨きで用いることは歯の摩耗の原因になる恐れがあります。歯の表面に付着する茶渋などのステインを除去するためには優れていますが、歯自体を摩耗させてしまうと知覚過敏を引き起こす可能性があるため、毎回用いるのではなく基本的には研磨剤が含まれないものを用い、たまに研磨剤入りのものを用いることがいいでしょう。ステインが気になる方は定期的に歯科に通い、専門的なクリーニングを受けることをおすすめします。
うがい薬は各種さまざまな薬効作用がありますが、基本的には補助的なものであり、歯ブラシのかわりになるものではありません。“液体ハミガキ”なんて言葉がみなさんの認識を迷わせてしまっているのかもしれません。歯ブラシによる物理的なプラークの除去が大原則であり、あくまでも補助的なものであるという認識を持ちましょう。

具体的にどうやって磨いているの?

では具体的にどのように磨くのが正しいやりかたでしょうか。まず歯ブラシの持ち方ですが、握るように持つ(パームグリップ)のではなく、ペンを持つように指先で持つ(ペングリップ)ことが推奨されています。歯磨きの適切な圧は200g-250gといわれています。握るように持つことで力が入りすぎ、適切な圧から外れてしまいます。
磨き方は数多くありますが、スタンダードとされているのが歯面を磨くのに適するスクラッビング法、歯周ポケットのプラーク除去に適するバス法の二つの方法があります。スクラッビング法は頬側では歯に対して垂直に、舌側では45度歯茎側に向けて小刻みに数ミリ単位動かす方法です。バス法は両側とも45度歯茎側に傾けて小刻みに振動させながら磨く方法です。いずれも大きなストロークになりすぎないよう、細かく磨くように心がけましょう。
また磨き残しを防ぐため、いろいろな部位を飛ばし飛ばしに磨くのではなく順番を決め流れるようにみがいていくのがいいでしょう。例えば右上奥の表側からスタートし、左上に到達したら裏側に移行し、また右上に戻っていくなど途切れずに磨いていくことがコツです。患者さんのお口をみていると、裏側や奥歯のあたりの磨き残しが多いため、表と裏は同じ時間をかけるようにしましょう。奥は筋肉や顎の骨が邪魔で磨きにくいことが多いため、あまり大口を開けず半開きで磨くこともコツの一つです。

まとめ

いかがでしたか? 歯周病や虫歯の予防に最も大切なのは日々のブラッシングです。今回の記事が参考になれば幸いですが、どんなに器用な方で正しいブラッシング方を習得されていても、お口の中の細菌をゼロにすることはできません。定期的に歯科を受診しブラッシングのチェックを受け、専門的クリーニングを受けることがお口の健康につながります。日々の頑張りと、定期的歯科受診でいくつになっても自分の歯で食事ができるお口を目指してみませんか?

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