虫歯を放置することで起こる病気とは?

公開日:2020/12/31  更新日:2020/12/28

こんにちは、有楽町デンタルオフィス勤務、日本歯周病学会歯周病認定医の佐藤正敬と申します。
皆さん虫歯になった経験はありますでしょうか。甘いもので痛くなったり、歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなったり、逆に何も症状が無いけれど歯医者に行ったら虫歯だと言われたり、虫歯の症状と状態は多岐にわたります。今回は虫歯について、そして虫歯を放置した場合、どのようなことが起こるのかについてお話ししたいと思います。

佐藤 正敬(日本歯周病学会認定医)

執筆歯科医師
佐藤 正敬(日本歯周病学会認定医)

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東京歯科大学卒業。日本歯周病学会認定医、日本口腔インプラント学会会員。

虫歯の状態と進行度について

虫歯は歯科用語では齲蝕(うしょく)と言います。齲蝕の原因は細菌が作り出す酸が歯質を溶かすことにあります。我々人間が食事をして排泄をするのと同じように、細菌は口腔内の食渣(食べ残し)などを栄養源として、結果的に酸を産生し、その酸が歯質を溶かしてしまうのです。齲蝕はその進行度で大きく分けると以下の4つの段階に分かれます。
  C1:齲蝕がエナメル質に限局している
  C2:齲蝕が象牙質まで進行している
  C3:齲蝕が歯の神経まで到達している
  C4:齲蝕により歯質の大半が喪失している

歯は内部に歯髄(歯の神経)があり、その周りを象牙質が覆い、さらにその上をエナメル質が覆っています。つまり齲蝕の進行度はC1からC4にかけて重症になっていきます。

C1:齲蝕がエナメル質に限局している

エナメル質は人体で最も硬い組織であり、神経はありません。つまり、C1の段階では痛みなどの症状は起こりませんし、エナメル質は再石灰化(歯の自己修復)を起こすため、状態によってはしっかりと歯磨きを行い、再石灰化を促すことで治療が必要にならないこともあります。痛みはありませんが、歯と歯の間にC1が発生した場合は、歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなったり、フロスがその部分で切れたりほつれたりすることがありますので、気になった場合は歯医者さんを受診することをお勧めします。

C2:齲蝕が象牙質まで進行している

エナメル質の下に位置する象牙質には、神経が通っています。そのため冷たいものや甘いものでしみる症状(誘発痛)が出てきます。虫歯の治療を行う大半がこのC2の状態であり、齲蝕の発生した部位や大きさによって、コンポジットレジン(白いプラスチック)や、インレー(銀の詰め物)での治療が必要になります。

C3:齲蝕が歯の神経まで到達している

C3では神経まで齲蝕が到達することで、激しい痛みが伴います。C2の状態とは違い、拍動性の痛みが何もしなくても発現します(自発痛)。ここまでくると、歯の神経を保存することは困難になり、神経を除去し根の中を清掃、殺菌する治療(根管治療)が必要となってきます。根管治療をした歯は経年的に破折しやすくなるため、最終的には歯に被せ物を装着し治療終了となります。

C4:齲蝕により歯質の大半が喪失している

C4まで進行すると歯の神経は完全に死滅し、症状としては何も痛くなくなります。C4の状態では、残存歯質が不足し、歯の保存が困難になる事が多く、大半の場合は抜歯となります。

「急性齲蝕」と「慢性齲蝕」という分け方

また、齲蝕にはC1~C4の分類とは別に急性齲蝕慢性齲蝕という分け方があります。急性齲蝕は急速に歯髄に向かって進行し、痛みがでるもので、若年者によくみられます。逆に慢性齲蝕は進行が緩やかで、エナメル質と象牙質の境目に沿って進行するため痛みが出にくいのが特徴です。慢性齲蝕は比較的高齢者でみられます。

このように、虫歯はその進行度によって症状や治療法は様々であり、年齢によって進行するスピードが違うのも特徴です。

虫歯を放置するとどうなる?治療方法は?

では次に、虫歯を放置してしまうとどうなるのか説明していきたいと思います。

激しい痛みが発生する

先に述べたように、齲蝕が進行した時の症状は、フロスのほつれや食べ物が歯に詰まる→誘発痛の発現→自発痛の発現→無症状、歯の破折や崩壊というような順序になります。齲蝕は細菌の酸によって引き起こされるため、進行するにつれ、増殖した細菌が歯の内部に侵入していくことになります。C3の状態、つまり歯髄にまで細菌が到達すると、神経が侵入してきた細菌を排除しようと炎症反応が起こるため激しい自発痛が起こります。

痛くなくなるが細菌は増殖する

そこからさらに放置すると、内部の神経が完全に細菌に感染し、神経自体は無くなるため逆に症状は無くなります。ここで治ったと勘違いしてしまう人や、痛くなくなったし忙しいからと歯科医院に行かなかったという人も多いです。しかし実際には細菌が歯の内部でどんどん増殖しており、痛みという危険信号さえも機能しなくなっているだけなのです。

根尖性歯周炎になる

歯の内部だけではなく、次に細菌は根の先から顎の骨に侵攻していきます。顎骨に侵入した細菌を止めようと、生体の免疫機構が働く結果、根の先の顎骨は溶け、内部に膿が溜まります。この状態を根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と言います。この細菌侵入と生体の免疫による炎症の内圧が高まると痛みが伴います。

歯茎から膿が出るようになる

ここでも放置してしまうと、顎の骨と粘膜を突き破り、今度は歯茎から膿の出口が出現します。ここまでくると内圧は下がり、痛みが消失しますが、常に歯茎から膿が出る状態になります。

命の危険に及ぶこともある

さらに放置すると、炎症は顎の骨全体に波及し、上顎では目や鼻や脳、下顎では細菌が動脈に乗って全身へ細菌が波及する恐れがあります。ここまでくると命の危険性もありますので、早急に歯科医院へ行く必要があります。

まとめ

虫歯は口腔内で一般的な病態ですが、放置すると痛みだけではなく、細菌感染が顎から全身へ波及することもある恐ろしい病気です。そして、痛みは人体の危険信号であり、本当に恐ろしいのはその痛みさえ消えた時だという事を覚えておいてください。虫歯を軽視せず、是非定期的に歯科医師の診察を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう。