黒い歯石は放置してはいけない!その理由とは?

公開日:2020/08/11

こんにちは、日本歯周病学会認定医で千葉県市川市行徳にございます杉澤デンタルクリニック行徳の杉澤幹雄と申します。

歯周病の原因となる歯石の種類に黒い歯石があります。時折、その黒い歯石が歯に付着していて、黒いため虫歯と勘違いされる方もいらっしゃいます。その黒い歯石は通常の歯石と比較して、歯周病により大きく関わってきます。今回はこの黒い歯石に関して書いていこうと思います。

杉澤 幹雄

執筆歯科医師
杉澤 幹雄(日本歯周病学会認定医)

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《自己紹介》
杉澤デンタルクリニック行徳 院長の杉澤幹雄です。歯周病の専門的な治療を行ってきましたので、その知識と経験を活かして、歯の土台となる歯茎や骨からしっかりと健康な状態にしていくことを大切にしています。歯周病をそのままにした状態で、歯だけきれいにしても長持ちしません。まずは歯を支えている土台からきれいにし、いつまでも健康な歯を使い続けられるようにしましょう。

 歯石とは?歯石の種類について

まず歯石といって思い浮かべるのは、歯と同じような白っぽく少し硬くなって歯に付着しているのを想像される方が多いと思います。その歯石は縁上歯石といって、歯肉の縁(ふち)より上部(歯の方)にできるものを言います。

 【歯肉縁上歯石】

縁上歯石は歯に付着したプラーク(細菌の塊)に唾液中のカルシウムやリンが沈着し硬化することで形成されます。プラークは歯と歯茎の境目に停滞することが多いので、歯の歯茎寄りや歯と歯の間に沈着していることが多いです。

また、縁上歯石の主成分は唾液由来であるため、唾液がよく当たる歯面に多く形成されます。耳下腺でできた唾液は頬の裏から分泌されるため、上顎の大臼歯(前から6番目当たり)の頬側や、顎下腺・舌下腺でできた唾液は舌の下から前方に分泌されるため、下顎の前歯部の裏側に歯石が沈着しやすい傾向にあります。縁上歯石の歯との付着強度は歯ブラシで取れるほど弱くありませんが、歯石を取る器具で比較的容易に取れます。

縁上歯石が長期的に付着することで、その歯石にさらにプラークが停滞し、歯周病の初期病変となる歯肉炎へと発展していきます。それでは黒い歯石はどういったものでしょうか?

 【歯肉縁下歯石】

歯肉の縁より下方(根の方)に付着した歯石を縁下歯石と言います。歯肉縁下は根の方にありますので肉眼で見えづらい位置に歯石が形成されます。縁上歯石を放置して黒くなるわけではなく、歯石のでき方が縁上歯石と異なっています。

縁下歯石の主成分は血液由来となります。唾液はわかるけど血液ってどういうこと?と思われるかもしれません。それでは成り立ちを見ていきましょう。

そもそも縁下歯石はすぐ形成されるものではありません。なぜなら、健康な歯肉の縁下のスペース(歯肉溝といいます)はそもそも小さく深さも1~3mm程度しかないためです。しかし、歯周病が進行することで歯と歯茎の境(歯周ポケット)は深くなっていき、その深いポケットに入り込んだプラークは深いために歯ブラシでも取れにくくなっていきます。そうなるとポケット中のプラークと接する歯肉では感染が持続的に起こり出血しやすい環境となっていきます。血液成分とポケット中のプラークが結合することにより縁下歯石が形成され、その色は黒褐色を呈するのです。

黒い縁下歯石は歯周ポケットの中に形成されるため、肉眼ではわかりづらく付着の有無が確認しづらいですが、歯周ポケットが深ければ深いほど縁下歯石が多量に付着していることが考えられます。また、縁上歯石と比べ歯の根の表面に強固に付着しています。また見えづらいところに形成されるため除去することが容易ではありません。

 黒い歯石を放置していると・・・

この黒い縁下歯石の表面も本来の環境である歯根表面と異なり粗造であります。そのためさらにプラークが歯石表面に停滞し、歯周病の原因となる細菌が歯周ポケット内で多量に増殖していきます。そうすると、さらに歯周病が進行し、さらに歯周ポケットが深くなり縁下歯石の付着するスペースは更に広くなっていきます。

重度に歯周病が進行することにより歯を支える歯周組織は破壊され、歯は支持を失い動揺し始め最終的には抜けてしまいます。また、その状態は歯周ポケット内の細菌は多く存在し、細菌の代謝産物として口臭の原因物質も多量に放出され、病原性の口臭も強くなっていることが考えられるでしょう。

黒い縁下歯石を放置することで、歯周組織への歯周病原細菌の感染は更に広まり、歯周病の重篤化が進行してしまうでしょう。

黒い歯石を取る治療方法

黒い縁下歯石を取ることは容易ではありません。そもそも肉眼で確認しづらい部位にあり、またその歯根表面への付着は強固です。しかし、その黒い歯石の放置は歯周病の進行を助長するため取り除く必要があります。

 【スケーリング・ルートプレーニング】

歯周病の治療において初期に行う方法にスケーリング・ルートプレーニングという治療方法があります。一般的に歯科医院で行うクリーニングやメンテナンスは縁上歯石を取り除くことを言います。スケーリング・ルートプレーニングはそれと異なり、歯周ポケット内に歯石を取るための器具を挿入し歯根表面に強固に付着した歯石を掻き出します。また、その歯石の病原性は歯根表面に存在するセメント質に及んでいる為、病的なセメント質も除去し、滑沢な歯根表面になるようにします。この治療は感染が進んだ歯周ポケット内で行う必要があり、触るだけでも痛みを伴うため、一般的には歯科局所麻酔下で行います。

しかし、歯周病が重度に進行したポケットは深く歯石も多量についていて、いくら熟練した技術があっても取り残してしまう恐れがあります。スケーリング・ルートプレーニングでも除去しきれず細菌感染による歯周組織の炎症が改善しない場合は外科的に縁下歯石を取り除く方法を選択する場合があります。

 【歯周外科治療】

取り残した縁下歯石をより効率よく取り除くために、歯根表面を目視できる状態に歯肉の一部を切開し開きます。そうすることで歯根表面に付着した縁下歯石は目で確認することができ、より取り除きやすくなります。もちろん歯科局所麻酔下で行い、入院するようなことはありません。また、切開した歯肉は縫合することで再度歯面を覆ってくれます。歯周病の原因となる縁下歯石を除去することで細菌の感染をストップし、安定した歯周組織を取り戻すことを目標にします。

しかし、歯周病で失った歯周組織が元に戻るとは限りません。特に歯を支える歯槽骨は破壊の程度によっては再生が期待できない場合があります。また、歯周外科治療により歯肉は大きく下がることで審美的な障害が起こることがあります。そもそも、持病である全身的な疾患の為、外科治療を行えない場合もあります。安易に行うのではなく、歯周外科治療を行う際には十分な歯科医師との相談を事前に行う必要があります。

 まとめ

黒い歯石は歯周病の更なる進行への大きなリスクとなるため、そのまま放置してはいけません。しかし、黒い歯石は歯周ポケットの中に存在し、肉眼でその存在を確認することが困難であります。久しく歯科医院での歯周病のチェックを行っていない方は歯周病の精密な検査を行い、黒い歯石が付着していないかチェックしてもらうことを強くお勧め致します。また、黒い歯石は歯周病が進行してから沈着する傾向にあります。定期的に歯科医院にてメンテナンスを行うことにより、歯周病の進行を防ぐことで黒い歯石が付く環境を作らないことが大切です。