歯茎ケアのコツまとめ

公開日:2020/08/06

こんにちは、埼玉県さいたま市中央区にある『ナカニシデンタルクリニック』院長で日本歯周病学会歯周病専門医の中西伸介と申します。

皆さんは歯肉ケアと聞くとどのようなことを思い浮かべますか? 歯ブラシの毛先を優しく歯肉に当てマッサージをする、指に塩をつけて歯肉をゴシゴシこする。かかりつけの歯科医院で教わった方法から、民間療法までたくさん思いつくことがあると思いますが、今回はまとめということでプロの視線からわかりやすく簡単に実践できるようにまとめてみたいと思います。

中西 伸介

執筆歯科医師
中西 伸介(日本歯周病学会専門医)

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《保有資格》日本歯周病学会認定歯周病専門医、臨床歯周病学会歯周病認定医等。
《自己紹介》ナカニシデンタルクリニック院長の中西です。近年、歯周病と全身疾患との関連性もわかってきています。歯周病や虫歯は一度なってしまうとそのあといくら頑張って磨いても治ることがないのが実情です。そこでどうせ治らないとあきらめないで一日でも早めの治療をしましょう。

 歯肉マッサージとブラッシングの違いは?

最近よくテレビや雑誌などで耳にする歯科医院でもできるエステのような『歯肉マッサージ』と歯周病治療の歯肉を中心としたブラッシングは目的が異なります。指などで歯肉をこするような『歯肉マッサージ』には治療的な効果は現段階では認められておらず、どちらかというと肩こりなどでマッサージをしてもらい血行が良くなり気持ちが良いのと同じような感覚です。その為、多少血行は良くなるかもしれませんが、そのことが直接歯周病の治癒に結びつくかというと歯周病の原因はあくまで歯周病菌なので治癒はしません。ただ、歯肉の血行が良いというのはとても重要なことです。血流に乗って歯肉への栄養は局所に届くので、歯肉の健康は保たれ、また免疫系も活性化するのでそういった意味では歯周病菌に対する抵抗性は間接的に上がると考えられます。反対にヘビースモーカーの方はニコチンの作用で毛細血管が収縮し、栄養が歯肉局所に供給されにくいことや、免疫系統の異変が起きて細菌に対する抵抗性が下がるということはエビデンスのあることとして知られています。プラスαとして歯肉マッサージを行うことは良いかと思いますが、中高年の男性の方でたまにいらっしゃるのですが、塩は引き締まるというイメージなのでしょうが、男らしく指に粗塩をつけて思い切りゴシゴシするというのは逆に歯肉を傷つけることになるのでやめたほうがいいでしょう。

 歯ブラシによる歯肉ケアは?

歯ブラシによる歯肉ケアについてはいわゆる皆さんが知るブラッシングについてお話ししてきたいと思います。様々なブラッシング方法がありますが歯科医院で教えてもらうのは主に歯面に毛先を垂直に充てる「スクラビング法」か、毛先を歯周ポケット方向に斜め45度方向からあて小刻みに動かす「バス法」だと思います。歯肉のケアに向いているのはバス法です。毛先で歯肉をマッサージしながら、直接ポケット内のプラークを掻き出すことができ一石二鳥なのですが、スクラビング法に比べると少し技術が必要です。この際も歯周ポケットのプラークを掻き出したいとイメージするあまりに強い圧でこすりすぎる方がいらっしゃいますが強すぎる力は歯肉をケアするどころかむしろ健康な歯肉を傷つけ歯肉の下りすら引き起こす原因となってしまいますので絶対のやめてくださいね。
そしてもう一つの方法としてあまり馴染みのない磨き方だと思いますが、柔らかめの歯ブラシを用いて、毛先を歯根の方に向け歯ブラシの毛のサイドを歯肉に当て小刻みにマッサージするように動かす(この時歯肉に強い力や傷をつけるようなブラッシングは厳禁)マッサージ用の「ブラッシング法」があります。この方法を用いると過度な歯ブラシ圧で下がってしまった歯肉のクリーピング(歯肉が上がる)を促すことができるという報告も多くされていますが技術的にもかなり高度なので歯科医院でも先生にこの磨き方を指導されたことのある方は少ないでしょう。しかしこの方法には難点がありソフトに当て過ぎるのと歯肉をマッサージする磨き方のためプラークの除去能率が悪いということです。かといって優しくマッサージするように磨いた後、ゴシゴシ強く磨いては意味がないので毛先の細いタフトブラシなどを用いて歯肉縁ギリギリのところまで磨くと良いでしょう。

 まとめ

□ 歯肉マッサージはあくまで血流を良くするという補助的役割、歯周病に対して効果はないと考えよう
□ 歯周病が気になる人はバス法(毛先を歯周ポケット方向に向け斜め45度の角度であて細かく振動する)でのブラッシング法を心がける
□ 過度な歯ブラシ圧で歯肉がさがってしまった場合、柔らかめの歯ブラシの毛のサイドを歯肉に当てマッサージをするように磨くと歯肉の上がりが期待できる
ただし、プラーク除去効果は低いのでその後改めてブラークを除去可能な方法で磨き直しが必要(歯肉には触れないように注意)

一口に歯肉ケアといっても自分が歯周病なのか、そうでないのかなど、また何を目的としているかによってもケアの仕方が変わってきます。重度の歯周病で、歯肉が下がっているところに自己判断で柔らかめの歯ブラシでいくら歯肉をマッサージしても歯肉は上がってくることはありません。まずは自分がどのような状態にあるのかしっかりと定期検診でチェックすることが大切です。まだ定期検診に行く習慣ができていない方も今からでも遅くありません、自分の健康は自分でしか守っていくことはできないので定期的なクリーニング、通院をお勧めいたします。歯周病専門医は治療をするだけではなく患者さんの相談にのり、アドバイスすることも重要な役目ですので気軽に相談していただければと思います。