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お酒を飲むと歯周病が悪化する?

 更新日:2023/03/27

こんにちは、千葉県市川市行徳にございます『杉澤デンタルクリニック行徳』の杉澤幹雄(日本歯周病学会認定医)と申します。歯周病治療を行っている患者さんに「お酒歯周病を悪くするの?」と聞かれることがございます。確かに習慣的にお酒を飲まれる方も多くいらっしゃると思います。また、お酒は飲みすぎると体に悪いことは一般的に周知のことですが、歯周病との関連はどうでしょうか。今回は「お酒を飲むと歯周病が悪化する?」という内容を書いていこうと思います。

杉澤 幹雄

執筆歯科医師
杉澤 幹雄(日本歯周病学会認定医)

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《自己紹介》
杉澤デンタルクリニック行徳 院長の杉澤幹雄です。歯周病の専門的な治療を行ってきましたので、その知識と経験を活かして、歯の土台となる歯茎や骨からしっかりと健康な状態にしていくことを大切にしています。歯周病をそのままにした状態で、歯だけきれいにしても長持ちしません。まずは歯を支えている土台からきれいにし、いつまでも健康な歯を使い続けられるようにしましょう。

 お酒を飲むと体はどうなる?

お口から入ったアルコールは胃や腸で吸収され血液に溶け込み全身へ循環します。全身へ循環したアルコールはその到達した部位で様々な作用を引き起こします。脳に作用することで脳が麻痺し、知覚や運動、記憶などの障害が生じます。また、血管に作用することで血管が拡張し血液の流れがよくなります。血流がよくなることで、更にアルコールが全身へ循環しやすくなります。他にも胃に作用し胃の蠕動運動が増強され食欲が進むことがあります。
このようにアルコールは全身に循環し全身の臓器へ作用し様々な影響が生じます。では歯周病へはどのような影響があるのでしょうか。その前にそもそも歯周病とはどのような病気か知る必要があります。

 歯周病とはどのような病気?

歯周病は歯周組織への歯周病原細菌への感染により生じる炎症病変です。歯の周りに付着したプラーク中の細菌が長く停滞することで、歯周組織(最初は歯肉)に感染します。細菌の侵入を防御する機構を炎症と言います。細菌と免疫細胞たちの戦いによりその場は戦場となり破壊が生じていきます。最初は歯肉炎から始まり、それが進行すると歯を支える歯槽骨まで炎症が波及し骨が溶け、歯は支えがなくなり動揺し、しまいに抜けてしまう、これが歯周病です。
症状が少なく気が付きにくい疾患です。また失ってしまった組織が回復することも難しく、歯周病にならないようにするまたは、進行をストップさせる必要があります。歯周病の原因は歯周病原細菌です。歯周病原細菌の棲み処であるプラークを付着させない・徹底的に除去することで歯周病の発症や進行を防ぐことができます。また、歯周病の進行を早めてしまう要因(リスクファクター)があります。それには遺伝的なものや年齢性別、喫煙、ストレス、糖尿病などの全身疾患などの全身的なリスクファクターや、口腔内のプラークを停滞しやすくする局部的なリスクファクターが存在します。よって、歯周病の予防または治療は原因であるプラークを付着させないことと、リスクファクターをうまくコントロールする必要があります。
それでは、お酒は歯周病のリスクファクターとして関連するのでしょうか。

お酒と歯周病の関連

結果から申し上げますと、少量のお酒を時折摂取し、歯周病が悪化することは考えにくいです。たしかにアルコールは全身に循環し全身の組織に影響を及ぼします。しかし、少量のアルコールは一時的であり、口腔内の歯周組織に大きな影響を当たることはありません。また、アルコールが直接歯肉などに触れることにより歯周組織に炎症が生じることも考えにくいです。しかし、多量の飲酒を習慣的に摂取し続けると歯周病を悪化させる恐れがあります。

お酒を飲むことで歯周病が悪化する理由

1.最も歯周病を悪化させ得る理由はブラッシングがおろそかになることです。

歯周病の原因はプラーク中の歯周病原細菌です。長期的にプラークを停滞させることが歯周病の発症または悪化につながるため、飲酒による歯周病の悪化の最も可能性のある要因です。

2.炎症の増強

アルコールによる血管拡張作用により血流がよくなります。歯周病は炎症ですので、炎症が増強する恐れがあります。習慣的に歯周病による炎症が増強されると、歯周組織の破壊も進行しやすくなる恐れがあります。

3.お酒が原因で二次的に歯周病が悪化する

お酒はpHが低い飲料のため、習慣的な多量の飲酒は歯が溶ける虫歯になるリスクがあります。虫歯が原因で歯に穴が開くとそこがプラークが停滞しやすく除去しにくい場所になってしまうため、お酒は二次的に歯周病を悪化させることが考えられます。
また、飲酒による糖尿病や肥満などになることでも歯周病を悪化させてしまうことも考えられます。

 まとめ

お酒自体で歯周病を引き起こすことはありませんが、多量の飲酒習慣はプラークの残存リスクが高まり、歯周病を悪化する恐れがあります。適度の飲酒で、その後のブラッシングをしっかりすることで歯周病の悪化は阻止できます。しかし、飲酒前にはそう思っていても、ついつい飲みすぎ、寝てしまう恐れがあるのもお酒です。歯周病の治療をしている方や既往のある方は多量の飲酒習慣を改善することを強くお勧め致します。

この記事の監修歯科医師