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【闘病】「ネフローゼ症候群」 異様な疲れから下半身・陰茎が浮腫んでいき…

 公開日:2023/08/28
【闘病】「ネフローゼ症候群」 異様な疲れから下半身・陰茎が浮腫んでいき…

闘病者の安部弘祐さんは、高校卒業から大学進学の大切な時期に難病「ネフローゼ症候群」を発症し、誰にも相談できず孤独感で自殺まで考えたそうです。現在は病状も安定しており、さまざまな活動をおこなっています。果たして、ネフローゼ症候群とはどのような病気なのか、安部弘祐さんに話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年2月取材。

安部弘祐さん

体験者プロフィール
安部 弘祐

プロフィールをもっと見る

宮崎県出身。沖縄県在住。1999年生まれ。一人暮らし。高校卒業後、大学合格と同時にネフローゼ症候群を発症。大学一年生のときは入院生活をしながら大学に通った。自身で企画して本を出版。座右の銘は「辛い経験は己を強くする」。難病と診断されて「孤独」と「将来の不安」に襲われている人に寄り添える場所を作りたいと考え行動している。現在は奨学金のスタートアップにて、長期インターン生として修行中。
◆各種SNSリンク
https://linktr.ee/Abe_kousuke

副島 裕太郎

記事監修医師
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

病名がわかるまでは病院を転々と

病名がわかるまでは病院を転々と

編集部編集部

ネフローゼ症候群とは、どのような病気なのでしょうか?

安部弘祐さん安部さん

ネフローゼ症候群は、尿に蛋白がたくさん出てしまって、血液中の蛋白が減ってしまう病気です。そのため、血管の中の水分が減って血管の外に水分と塩分が増えるため、浮腫が起きてしまいます。 ネフローゼ症候群のうち、糖尿病などの全身性疾患が原因で起こるものを二次性ネフローゼ症候群といい、明らかな原因がないものを一次性ネフローゼ症候群と分けられます。私の場合は後者になります。

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

安部弘祐さん安部さん

3月頭に高校を卒業後、部活動(ハンドボール)に参加させてもらったときに、異様に疲れを感じました。当初は「受験勉強で、1年間くらい運動していないから疲れているんだ」と思っていました。しかし、違和感があってからどんどん体重が増加していき、下半身が浮腫むようになりました。

編集部編集部

病院にはすぐに行きましたか?

安部弘祐さん安部さん

3月中旬にハンドボールの卒業試合があったので、卒業試合が終わるまで部活動に参加していました。卒業試合が終わった後に、かかりつけの病院を受診しました。

編集部編集部

どのような症状がありましたか?

安部弘祐さん安部さん

症状は、体重増加とちょっとした息苦しさやだるさ、陰茎の浮腫み、下半身の浮腫みです。最初は症状から性病と診断を受けました。薬も貰い「1週間くらいで治るよ」と言われましたが、日を追うごとに呼吸が苦しくなり、夜間救急を1日に2回受診したこともありました。

編集部編集部

その後は再度受診されたのですか?

安部弘祐さん安部さん

夜間救急ではカロナールを処方してもらい、翌日の受診したときには自分が住んでいた市内で検査設備が整っている病院に紹介状を書いてもらいました。紹介状を持って翌日に受診するころには、自分で歩くのもやっとで呼吸も苦しく、病院内の移動は車椅子を使用しました。

編集部編集部

難病の診断はどのように受けたのでしょうか?

安部弘祐さん安部さん

その病院では「ネフローゼ症候群の疑いがある」と告げられ、翌日に腎臓専門医がいる地元の大きい病院を受診することになりました。その際には、息苦しさとだるさで、意識がもうろうとしていました。記憶もあいまいなのですが「微小変化型ネフローゼ症候群」と診断を受け、その日のうちに入院しました。そして、入院した日の夜に呼吸困難で気絶し、翌日起きたらナースセンターに一番近い個室に移動しており、酸素マスクをした状態でした。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

安部弘祐さん安部さん

入院翌日の3月24日に医師から治療方針を聞きました。肺のCTを見せてもらい「右の肺が2/3、左の肺が1/3ほど黒くなっている。これは全部水で、この水が原因で息苦しくなっていると思う」とのことでした。そして、「まずは今の呼吸困難をどうにかするために、横腹から肺に細長い針を刺し水を抜く治療が必要。次に、ネフローゼ症候群の治療として、ステロイド治療をおこなう。最後に、浮腫みを取るための利尿剤点滴をする」と説明を受けました。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

安部弘祐さん安部さん

病名が判明した時のことは、意識がもうろうとしていたので覚えていません。ただ、前の病院で「ネフローゼ症候群の可能性がある」と医師から言われたとき「イタリア料理みたいですね」と返事したのは覚えています。医師からは「それどころじゃないよ」と言われましたね。これからのことよりも、現状の息苦しい、歩けない、だるすぎる状態をどうにかしてほしいという気持ちの方が勝っていました。

編集部編集部

入院や治療の内容を教えてください。

安部弘祐さん安部さん

病名がわかってすぐの入院が2018年3月23日~5月2日でした。このときの治療は、プレドニン経口60mgのみです。退院後に15mgまで減量したものの再発してしまい、外来で40mgに増量したのですが尿蛋白は消えず、6月23日に再入院になりました。ステロイドパルス療法で寛解しましたが、プレドニンは50mgに増量となりました。

編集部編集部

その後も再発などはあったんでしょうか?

安部弘祐さん安部さん

再発や寛解を繰り返しながら、都度、入院治療をおこなってきました。リツキサン点滴による治療を決意し、2019年6月に1回、2020年1月に1回、2020年7月に1回の計3回点滴治療をおこないました。現在は寛解状態を維持しています。

コロナ以前から感染対策

コロナ以前から感染対策

編集部編集部

発症後、生活にはどのような変化がありましたか?

安部弘祐さん安部さん

病気を発症してからは、健康と食べるものに気を付けるようになりましたね。食べるものを記録して、どの栄養が足りないかを確認し、運動や筋トレをして記録も付けるようになりました。また、発症してから2年ほどはネフローゼ症候群の症状も落ち着かない(ステロイド減量と再発を繰り返す)状況だったので、減塩生活をしていました。具体的には、塩分を1日に6g以内に抑えました。購入品の場合は、ナトリウム量から食塩相当量を計算し、アプリを使って自己管理をしていました。

編集部編集部

ほかにも気をつけていたことはありますか?

安部弘祐さん安部さん

感染症予防という点で、外出を意識的に避け、人が多いところには極力行かないようにしています。新型コロナウイルスの影響で2020年から本格的に外出ができなくなりましたが、それ以前の2018年から自主的に外出を控えていました。大学以外の外出は、多い時でも週に2回ほどでした。もちろん、手洗い、うがい、部屋の掃除やマスクの着用も2018年の4月から習慣になりました。2018年、2019年の2年間は、外出時に夏でも冬でもマスクを着用していたため、友達や知人からは少し不思議がられていました。

編集部編集部

治療中の心の支えはなんでしたか?

安部弘祐さん安部さん

治療中の心の支えは、時期によって大きく変わります。発症から5月2日までの入院期間中は、一緒に入院していて仲良くしてくれた若い患者さんと大学の友達ですね。2回目の入院のときは、高校の友達や大学の友達、部活の先輩や同期でした。3回目からは、ブログやSNSで繋がった難病の方々の存在が大きかったです。毎回違うというより、支えになってくれた人たちの種類が広がっていき、再発や入院を経験するに連れて支えが増え、心の負担も少なくなっています。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

安部弘祐さん安部さん

大きく3つあります。1つ目は、もっと周りを頼ること。自分でできないことをやろうとして、入院中も退院した後の一人暮らしでも何度か失敗したことがあるので、周りに頼れるときがあったら甘えていいんだよということを伝えたいですね。

編集部編集部

2つ目はなんでしょうか?

安部弘祐さん安部さん

2つ目は、SNSやブログの繋がりで支えられた経験を伝えたいです。特に、4月に沖縄に来てから一人暮らしになって、自分自身でどうにかするという考え方にとらわれて、辛い気持ちも押し殺していた時があったので、その時の自分に伝えたいですね。

編集部編集部

最後の1つはなんでしょうか?

安部弘祐さん安部さん

3つ目は「難病になったことを何年後かの僕は、むしろ個性として受け止めている。難病になって良かったといえる日が、いつか来ると信じている」と伝えたいですね。本当だったら「あのときの入院や、再発した経験は、後々のこういう場面で活きて、僕の成功の糧になった」と伝えたいのですが、今の自分自身が成功しているかと言われるとまだまだなので、まだ言えません。でも、いつの日かそういう日が来ると信じて、今を全力疾走しています。

編集部編集部

現在の体調や生活の様子について教えてください。

安部弘祐さん安部さん

現在は、とくに食事制限も運動制限もなく、ほぼ病気になる前と同じ生活をしていると思います。ただ、新型コロナウイルスの影響で大学がオンラインになったことや、自分自身の生活状況が発症時と比べて変わったので、別のストレスを感じています。マスクをつけて外出することや、手洗いうがいなどの感染症対策は、コロナ禍以前からおこなっているため、そこまで気にならないですね。今は、大学に通いながらリモートで仕事をしたり、自分の活動をしたり、たまに外出したりという生活を送っています。

伝えたい想い

伝えたい想い

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

安部弘祐さん安部さん

まず、ほとんどの人が病気を意識していないのは当然だと思います。僕も病気になる前は、そもそもこの病気の存在を知りませんでした。ただ、別の難病でもそうですが、免疫抑制や免疫を破壊する治療をおこなっている人は意外と多いので、特に新型コロナウイルスの感染リスクも含め「体調が悪かったら休んでください」と伝えたいです。免疫治療をしていると感染症にかかりやすいし、感染症になるだけで一大事になる可能性があります。風邪のまま仕事に出たり、学校に行ったりせずに、しっかり休んでしっかり治してほしいと思います。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

安部弘祐さん安部さん

健康に気を使っていただければと思います。お医者さんや看護師さんが「一番健康であるべき」だと思うので、健康に気を使って休めるときは休んでいただきたいと思います。

編集部編集部

読者に向けてのメッセージをお願いします。

安部弘祐さん安部さん

病気などで辛くなったときや苦しくなったときは、お守りにしている理論があります。通称「スーパーサイヤ人理論」です。ドラゴンボールを知っている方ならなんとなくイメージができるかもしれません。ドラゴンボールに出てくる「サイヤ人」という人種は、瀕死の状態から回復すると大幅にパワーアップするという、とんでもない体質を持っています。そのサイヤ人になぞって、辛いことや苦しいことが起こったときには「回復し、落ち着いたときには、人間的にパワーアップしているはずだ」と思うことにしています。

編集部編集部

最後に、同じように病気で悩んでいる方に伝えたいことはありますか?

安部弘祐さん安部さん

今の時代、SNSやインターネットが普及したことで、同じ病気や同じ世代の方と簡単につながり、相談できる可能性が高いです。私もブログで日記を書いていたら、同じ病気の方からコメントが来て、そのコメントに励まされたり、寄り添ってもらえたりしました。だから「ひとりじゃないよ」と伝えたいですね。

編集部まとめ

現在は体調も安定しており、さまざまな活動を通して社会貢献活動をされている安部さん。「今では、Twitterで相談を受けることもあります。難病の治療や入院には孤独な状況が多くあります。僕でよければいつでも相手になるのでSNSやブログからご連絡ください」とも語っていました。相談できる相手がいるのは、精神面の安定につながるので、このような取り組みがどんどん普及すれば、安心して生活できる環境ができそうですね。

この記事の監修医師