ドライアイは日本でも多くの人が悩まされている目の病気です。目の渇きや違和感をはじめ、目の痛み、かすみ目などのさまざまな症状が出ます。特に困っていないからとドライアイを放置してしまうと、症状が重くなる場合もあります。ひどいドライアイになると、どのような症状が出るのでしょうか。ドライアイのリスクや原因、治療方法から日頃気を付けておくことなどをご紹介します。ドライアイについて正しい知識を身に着けて、大切な目をドライアイから守りましょう。
目次 -INDEX-
ドライアイの基本知識
多くの人が悩まされているドライアイとは、どのようなものなのでしょうか。ドライアイの基礎知識として、ドライアイとは何か、主な症状や原因を解説します。
ドライアイとは
涙には目の表面を乾燥から守ったり、栄養や酸素を供給したりする働きがあります。また、目の表面を洗い流して、菌や異物からも目を守ってくれています。こうした働きを持つ涙の量が不足したり、涙の質のバランスが崩れたりすることによって目が乾燥し、涙が均等に行き渡らなくなる目の病気がドライアイです。乾燥によって角膜や結膜に傷がつくこともあります。ドライアイというと涙が出ないものだと考えられることもありますが、実はドライアイは涙が出るのも症状の1つです。
乾燥や加齢など、ドライアイの原因はさまざまですが、パソコンやスマートフォンの普及などが影響して、近年患者数は増加傾向にあるといわれています。
ドライアイの主な症状
ドライアイの主な症状としては、目が乾く、目に痛みや異物感がある、かすんで見える、眩しく感じる、風が当たると涙が出る、風が当たるとしみるなどが挙げられます。これらの症状を放置して重症化してしまうと、肩こり、頭痛、めまいといった不調が起きやすくなります。また、実用視力が下がったり、自律神経が乱れたりするリスクもあがりますので、ドライアイが疑われる場合には早めに治療を行いましょう。
ドライアイになる原因
ドライアイになる原因には以下のものが挙げられます。
・環境要因
エアコンなどによる空気の乾燥によってドライアイが引き起こされることがあります。エアコンの風が直接当たる場所などは特に乾燥しやすいので注意が必要です。
パソコンやスマートフォンでの作業をVDT(Visual Display Terminals)作業といいます。VDT作業ではまばたきの回数が減少し、涙が行き渡らずに乾燥しやすくなります。特にスマートフォンは至近距離で画面を凝視することになるため、目を酷使する状況を作り出してしまいます。こまめに休憩をとったり、意識的にまばたきをしたり、目を休めるように気を付けましょう。
コンタクトレンズの装着もドライアイの原因になると考えられています。特にソフトコンタクトレンズは、長時間装着することでレンズが乾くと、涙を吸い取り水分を補おうとする性質があるため注意が必要です。
・ほかの病気が原因
マイボーム腺の詰まりもドライアイの原因になります。マイボーム腺とは、まつ毛の付け根付近にあり、油分を分泌して涙の蒸発を防いでいる器官のことです。加齢やアイメイクによってマイボーム腺が塞がれてしまうと、油分がうまく分泌されずに涙が蒸発してしまい、ドライアイになりやすくなるのです。
また、シェーグレン症候群やスティーブンスジョンソン症候群などの病気によって、涙が分泌されずにドライアイになることもあります。涙が出ない疾患の場合は、そもそもの原因となる病気の治療が必要になりますので、一度医師に相談しましょう。
ドライアイになりやすい人の生活パターン
ドライアイになりやすい人の生活パターンとして、以下のものが考えられます。
・コンタクトレンズの長時間使用
コンタクトレンズの装着はドライアイの原因になると考えられています。特にソフトコンタクトレンズは、長時間装着することでレンズが乾くと、涙を吸い取り水分を補おうとする性質があるため注意が必要です。長時間使用する場合は、特にドライアイをはじめとする目のトラブルのリスクがあがります。
・ディスプレイを長時間見ている
パソコンやスマートフォンのディスプレイを長時間見ていると、まばたきの数が減ったり、まぶたをしっかり閉じ切らないまばたきになっていたりすることが多く、涙が行き渡らずに乾燥してしまうことが多くなります。
・空気が乾燥した部屋での生活
エアコンを使用している室内など、空気が乾燥している場所では目も乾燥しやすくなります。特に冬場のエアコン暖房は乾燥しやすいため要注意です。室内でなくても、冬などの乾燥しやすい季節にも気を付けましょう。
ドライアイは完治する?
ドライアイにはいわゆる完治はありません。点眼薬や過ごし方を工夫することで症状を改善しながら、うまく付き合っていく必要があります。日頃からドライアイになりやすい習慣を避けるようにすることが重要です。
ドライアイがひどい場合のリスク
ドライアイを放置すると、症状の悪化のほかにも、さまざまなリスクがあがります。ドライアイがひどくなるとどのようなことが起きるのでしょうか。
実用視力の低下
ドライアイがひどくなると、実用視力の低下が起こる可能性があります。実用視力とは、日常的な見え方のことです。視力検査で測定する瞬間的な視力ではなく、日常生活を送るなかでの視力のことをいいます。実用視力の場合は時間帯や環境によって見え方に差があるのが特徴です。実用視力が低下すると日常生活に影響が出てしまいます。
実用視力の低下を招くのは、主にBUT短縮型ドライアイだと考えられています。BUT短縮型ドライアイとは、目の表面に目立った傷がなく涙の量も正常でありながら、涙液層が破綻しやすく目が乾いてしまう状態のドライアイのことです。目の表面が涙で均一に覆われなくなるため、目に入ってきた光が乱反射して視界がぼやけてしまいます。
精神的ストレス
ドライアイの症状によって精神的ストレスを感じる人は少なくありません。目の渇き、見えにくさ、目の痛みなどが継続して起きている状態はとても煩わしく感じるでしょう。ストレスが溜まると自律神経のバランスが乱れ、血流が悪くなるなどの悪循環を招きます。また、ドライアイにより目の負担が大きいと、眼精疲労が溜まって肩こりや頭痛、集中力の低下といったトラブルも起きやすくなります。
ドライアイのセルフチェック方法
自分がドライアイかどうかをチェックする方法として、10秒チェックがあります。これは、10秒間まばたきをせずにいられるかをチェックするだけの簡単な方法です。10秒間まばたきをせずにいられない場合は、ドライアイの可能性が高いと考えられます。
10秒チェックのほかにも、症状によるセルフチェック方法もあります。目が疲れやすい、目が乾いた感じがする、目が痛い、目がゴロゴロするなどの異物感がある、目が赤くなりやすい、目やにが出る、物がかすんで見える、光を眩しく感じやすい、理由がないのに涙が出る、目が重たい感じがする、何となく目に不快感がある、目がかゆいといった症状があるかをチェックしましょう。これらの症状のうち、5つ以上当てはまる場合はドライアイの可能性が高いといわれています。
ドライアイの治療方法
ドライアイになってしまったらどのような治療を受けることになるのでしょうか。ドライアイの主な治療方法をご紹介します。
点眼治療
ドライアイと診断されたら、多くの場合はまず点眼治療が行われます。点眼治療とは目薬による治療のことです。涙液の補充や安定化、角膜の傷の修復を図るための点眼薬が処方されます。人工涙液、角膜上皮保護点眼液、涙液分泌促進点眼液といった点眼薬が主に用いられます。油分が不足している場合は油性点眼が処方されることもあるでしょう。重症化している場合には、症状を緩和するためのステロイド点眼薬を使用することもあります。
場合によっては複数の目薬が処方されることもあるでしょう。点眼治療は医師の指示に従い、用法や用量を守って正しく行うことが大切です。
涙点プラグの挿入
涙点プラグとは、目頭にあり涙を排出する働きをする涙点に、シリコンなどで作られた小さなプラグを挿入する治療方法です。涙点を塞ぐことで涙の流出を抑え、目の表面に涙を溜めるようにします。
涙点プラグの挿入は、特に水分が不足している場合や、シェーグレン症候群と合併したドライアイの場合に行われます。治療は外科処置で行われ、点眼による麻酔の後に涙点プラグを挿入します。処置時間は数分程度で、痛みもあまり感じません。
また、涙点を塞ぐ方法としては、涙点プラグのほかにも、体温で固まるコラーゲンで涙点を塞ぐキープティア、涙点を手術で閉じる涙点閉鎖術もあります。
温罨法(おんあんぽう)
温罨法とは、目の周辺を温めることで、マイボーム腺の詰まりを緩和する方法です。目の周辺を温めることで油が溶けてドライアイ症状が改善するというものです。マイボーム腺機能不全があり、油分の不足によってドライアイが生じている場合に有効な方法だと考えられています。
温罨法は自宅で簡単にできることがメリットの治療法です。やり方は、タオルを1枚、50度程度のお湯に浸して絞り、すぐにポリ袋に入れます。温める方法としては電子レンジを使用してもよいでしょう。温タオルが入ったポリ袋を、乾いたもう1枚のタオルでひと巻きして、瞼のうえに置き5分程度リラックスします。これを1日に朝晩2回行うとよいでしょう。タオルは冷えやすいため、市販の目を温めるシートやカイロを使用するのもおすすめです。
IPL治療
新しいドライアイの治療法として注目を集めているのがIPL治療です。IPLとはIntense Pulse Lightの略で、特殊な光のことです。IPLを充てることで、マイボーム腺の詰まりを解消して、炎症を改善、涙の油層を正常化することで、ドライアイを改善することができると考えられています。ドライアイと診断されて点眼治療を行っているのによくならない場合や、涙点プラグ挿入をしたがドライアイの改善が見られなかった場合には、IPL治療によって効果が出る可能性があります。
なお、IPL治療は妊娠中や授乳中の人、日焼けをしている人、光敏感症の人などは受けることができません。希望する場合は、事前に可能かどうか医師に相談しましょう。
ドライアイにならないための予防方法
ドライアイは、生活パターンが原因で起こることがある病気です。日頃の行動を見直すことで、ドライアイの予防になります。普段の生活で取り入れやすい、ドライアイにならないための予防方法をご紹介します。
ディスプレイ見過ぎない
デジタル機器のディスプレイの見過ぎは、まばたきを減らしドライアイの原因になります。ディスプレイを見る場合には、画面の位置に気を付け、こまめな休憩をとりましょう。意識してまばたきをすることも有効です。
コンタクトだけでなくメガネを活用する
コンタクトの長時間使用はドライアイのリスクをあげます。コンタクトはできるだけ装着時間を減らし、メガネを活用して裸眼で過ごすようにしましょう。コンタクトをする場合には、使用方法を守ることはもちろん、使用するコンタクトレンズの種類を乾燥しにくいタイプにする、きちんとケアをするなど、目に負担をかけないように気を付けましょう。
エアコンによる乾燥を防ぐ
エアコンによる乾燥はドライアイの大敵です。エアコンを使用する場合は、湿度を50%以上に保つ、エアコンの風が直接当たらないようにする、意識的にまばたきする、目薬を使用するなど、目が乾燥しないように心がけてください。
まばたきの回数を増やす
まばたきは涙の分泌を促してくれます。まばたきの減少もドライアイにとっては大敵です。まばたきの回数を増やすことは、ドライアイ予防には有効でしょう。特にまばたきの回数が減りやすいパソコンやスマートフォンの使用時には、まぶたをしっかりと閉じてからパッと開く、まばたき体操を取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
乾燥した部屋にいる、コンタクトレンズの長時間使用、ディスプレイの見過ぎなど、ドライアイは主に環境要因によって起こることがある目の病気です。ひどい状態になると、実用視力の低下や精神的ストレスを生じることにもなります。
ドライアイと診断された場合には、基本的にはまず点眼治療が行われます。症状や状態によっては涙点プラグの挿入やIPL治療が行われることもあるでしょう。ドライアイは残念ながら完治することはありません。ドライアイになりやすい行動はできるだけ避け、もしドライアイが疑われる場合には早めに治療を行いましょう。
参考文献