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認知症予防のための食べ物は?効果的な栄養素や食事方法・リスクを高める食材

 公開日:2024/10/10

高齢化社会に伴い認知症の方も年々増えています。将来、認知症にならないようにするためにはどうしたらいいのか、認知症の予防法が気になる方も少なくないでしょう。

認知症の予防法はいくつかありますが、普段の食生活を見直すことで、進行を遅らせたり発症を抑えたりしやすいといわれています。

そこで本記事では、認知症予防のための食べ物や予防に効果のある栄養素や食事方法、認知症のリスクを高めてしまう食材についてわかりやすくお伝えします。

認知症予防に興味がある方や効果的な食べ物を知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

認知症予防のための食べ物

野菜を持つ男性と女性

認知症予防に効果があるとされる食べ物として、以下のような食べ物が挙げられます。

  • 青魚
  • 緑黄色野菜・豆類・果物
  • コーヒー・緑茶・赤ワイン
  • カレー
  • オリーブオイル

下記ではこれらの食べ物が認知症予防に、どのような効果があるのかを解説します。

青魚

青魚

サバやサンマなどの青魚には、n‐3系脂肪酸という認知症予防の効果が期待できる栄養素が含まれています。

n‐3系脂肪酸は体内で合成することができない必須脂肪酸です。DHAEPAα-リノレン酸のことを指します。

青魚にはDHAとEPAが含まれています。n‐3系脂肪酸は脳内の炎症を抑える効果があり、そのなかでもDHAとEPAには以下のような働きがあります。

  • DHA:記憶力や判断力を向上させる
  • EPA:血管を拡張し生活習慣病を予防

これらの働きが、認知症予防につながるのです。

緑黄色野菜・豆類・果物

緑黄色野菜にはビタミンAが豊富に含まれており、認知症予防に効果があるといわれています。

ビタミン不足は認知症の原因として重要であるとされており、認知症を予防するためには、ビタミンAビタミンB6ビタミン12葉酸が含まれている食材をバランスよく摂取することが大切です。

ビタミンB群の一種である葉酸が不足すると、悪玉アミノ酸であるホモシステインと呼ばれる物質が増えます。このホモシステインは動脈硬化を進行させたり、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの作用を強めるとされています。

ホモシステインは脳血管障害を招くこともあり、注意が必要です。

ビタミンAや葉酸はかぼちゃ・人参・イチゴに多く含まれており、ビタミンB6はかつおやレバー、ビタミン12は貝類に多く含まれています。

また、豆類に含まれるイソフラボンが認知症の改善に効果があるといわれています。

コーヒー・緑茶・赤ワイン

コーヒー・緑茶・赤ワインなどの飲み物も認知症予防の効果が期待できます。

コーヒーにはポリフェノールの一種である、クロロゲン酸
が含まれています。クロロゲン酸は抗酸化作用を持っています。

抗酸化物質は酸化ストレスレベルを下げることにより、脳のDNA損傷やアミロイドβの発生を抑制するといわれています。

特に赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用は強力です。認知症予防だけではなく、動脈硬化や高血圧の予防にも効果を期待できるでしょう。

緑茶のなかでも特に新茶に多く含まれるテアニンといううまみ成分は血圧の上昇を抑制する働きがあります。

脳の神経細胞を保護する働きもあるため、認知機能の低下を抑えるといわれています。

カレー

カレーライス

カレーのスパイス、クミンにはクルクミンというファイトケミカルが含まれています。アミロイドβが脳内にたまる速度を抑制したり、すでにできた老人班の分解を促したりする作用があります。

老人班は脳にできるシミのことで、アミロイドβが蓄積するときに形成され、アルツハイマー型認知症はこの老人班が原因とする説もあるそうです。

クルクミン500ppmを混ぜた餌を、17ヵ月齢のアルツハイマー病モデルマウスに与えるという実験が行われています。その結果、22ヵ月齢のマウスの老人班面積は17ヵ月齢時のマウスの老人班面積より30%減少していたそうです。

この実験結果から、カレーが認知症予防に効果があると考えることができます。

オリーブオイル

オリーブオイルを摂取することで、アミロイドβの減少血液脳関門機能の向上記憶力の改善などが期待できます。

オリーブオイルは認知症予防に効果的な食べ物ではありますが、オリーブオイルだけではなく、ほかの認知症予防に効果的な食材と組み合わせてバランスの取れた食生活をおくることが重要です。

認知症予防に効果的な栄養素

野菜

認知症予防の食べ物でも栄養素について触れましたが、認知症予防に効果的な栄養素は以下の通りです。

  • DHA
  • ポリフェノール
  • ビタミンA
  • ビタミンC
  • ビタミンB群
  • ビタミンE
  • ドコサヘキサエン酸
  • レチシン
  • オレイン酸
  • カフェイン

脳機能の原因の1つが、ニューロン(神経細胞)機能の低下です。そのため、ニューロン機能を回復させることができれば、脳機能の回復もできると考えられています。

上記で紹介した栄養素は、ニューロン機能の低下を防ぐ効果や、アルツハイマー型認知症の発症原因となるアミロイドβを分解したり抑制したりする働きがあります。

これらの栄養素が含まれる食材を積極的に摂取することで、認知症予防に効果を期待できるでしょう。

認知症予防のための食事のポイント

さまざまな食物

ここまで、認知症予防に効果のある食べ物や栄養素を紹介しました。では、食事の際にはどのようなことに注意したらいいのでしょうか。

認知症予防のための食事のポイントを紹介します。

栄養バランスのよい食事

認知症予防には、栄養バランスの良い食生活が大切です。

認知症予防に効果が期待できる食材を意識して、積極的に摂取することは大事です。しかし、認知症予防によいからと同じ栄養素ばかりを摂るのは逆効果になる場合もあります。

栄養バランスと摂取量が大切です。

適正なカロリー・食事量

外食や偏った食事が多いと、食べ過ぎてしまったり高カロリーになってしまったりします。摂取カロリーが高いと肥満になりやすくなります。

肥満はアルツハイマー型認知症になりやすいです。また、血管性認知症を引き起こす可能性も否定できません。

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により起こる認知症を血管性認知症といいます。

内臓脂肪が蓄積すると、糖尿病や高血圧などの病気を引き起こすことがあります。糖尿病や高血圧は動脈硬化を進める原因です。

動脈硬化が進むと、脳梗塞になったり脳血管が破れたりするため、血管性認知症が起こる可能性があります。

満腹になるまで食事をせずに、腹八分目を意識すると、適正な食事量になりやすいです。

塩分の摂り過ぎに注意

塩

塩分の摂り過ぎは高血圧を引き起こし、脳の細い血管へダメージを与えることがあります。

ダメージを受けることで十分な栄養が脳にまで行き渡らず、血管性認知症のリスクが高くなる可能性があります。

1日に摂取する塩分の摂取目標は、男性が7.5g未満、女性が6.5g未満です。みそ汁1杯あたりの塩分量は1.5〜2gとされています。

そのため、1日3回みそ汁を飲んだとしても塩分の摂り過ぎにはなりません。しかし、醬油や漬物などにも塩分が含まれているため、あわせて食べるメニューによっては1日の摂取目標を超えてしまうこともあるでしょう。

出汁を使い薄味で調理する、減塩されたものを使うなど、1回で摂取する食塩の量を減らせるように工夫することが大事です。

食塩にはナトリウムが含まれており、カリウムは血液中のナトリウムを排泄する働きがあります。なので、カリウムを多く含む海藻類や野菜・果物もあわせて摂取するようにするとよいでしょう。

糖分の摂り過ぎに注意

糖分の摂り過ぎは、血糖値が急激に上がる食後高血糖になりやすいです。

普段から糖分の多い食生活を送っていると、血糖値が上がりやすく膵臓への負担が大きくなります。

血糖値が急激に上昇すると、血管がダメージを受けて動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高くなり、血管性認知症のリスクも同時に高くなります。

糖分が多い甘いお菓子やうどん、食パンなどの炭水化物を中心とした食事を控え、血糖値をコントロールしましょう。

食物繊維は野菜・きのこ類・海藻類から摂取するようにすることで、血糖値の上昇を抑えられます。

認知症のリスクを高める食材

枝豆とビール

認知症予防に効果のある食べ物もあれば、認知症のリスクを高める食材もあります。

  • 肉の脂身
  • マーガリン・ショートニング
  • 菓子パン

これらの食べ物は認知症のリスクを高めるといわれています。魚を除く動物性の油は血中のLDLコレステロールを増やします。

LDLコレストロールが増えると動脈硬化を引き起こし、脳梗塞が起こりやすくなるでしょう。

また、過度の飲酒にも注意が必要です。

下記ではこれらの食べ物がどのような影響を与えるのか、解説します。

肉の脂身

肉の脂身を食べ過ぎると、動脈硬化のリスクが高くなり、認知症へとつながりやすくなります。

背脂やラードなどの肉の脂身には、飽和脂肪酸が含まれているためです。飽和脂肪酸を摂り過ぎると血液中の悪玉コレステロールが増え、動脈硬化を引き起こします。

脂身の少ない鶏肉や魚介類に変えるだけでも認知症のリスクは減らせるので、積極的に取り入れるのがおすすめです。

マーガリン・ショートニング

マーガリンやショートニングはトランス脂肪酸が含まれており、高脂血症や高血圧を引き起こして血管性認知症になるリスクが高くなるといわれています。

トランス脂肪酸も血液中の悪玉コレステロールを増やすためです。

しかし、現在はトランス脂肪酸の含有量も以前より大きく減ってきています。低トランス脂肪酸のマーガリンもあるので、選ぶときは低トランス脂肪酸のマーガリンを選ぶといいでしょう。

菓子パン

菓子パン

菓子パンなどの加工食品にはトランス脂肪酸が多く含まれています。米神経学会誌で発表された研究結果によると、血中濃度が高い方は低い方に比べるとアルツハイマー型認知症になる確率が50%から70%高くなるそうです。

トランス脂肪酸は菓子パン以外にも揚げ物、ケーキやクッキーなどの加工食品に多く含まれています。

ファーストフードや市販のお惣菜をよく食べる方や、お菓子や菓子パンが食事のメインとなっている方は注意しましょう。トランス脂肪酸を摂り過ぎないように、適切な量を食べるようにしてください。

過度の飲酒

過度の飲酒は、脳が小さくなる脳萎縮を引き起こします。施設に入所している認知症の高齢者のうち、29%が過度の飲酒が原因の認知症と考えられるという調査結果もあります。

脳の萎縮だけではなく、加齢に伴う記憶や学習低下を促進することもわかっています。

しかし、まったくお酒を飲まない人と少量のお酒を飲む人を比較したとき、少量のお酒を飲んでいる人の方が認知症のリスクが低いという結果もあるそうです。

ただし、飲酒に認知症予防の効果があるという研究結果はありません。

飲酒をする際は適度な量で楽しむようにしましょう。

認知症予防には自分で調理することも大事

笑顔の男性と女性

認知症予防には、自分で調理をしてバランスのよい食生活を意識することが大切です。

外食やコンビニの食事が中心になってしまうと、高カロリーになったり、脂質を多く摂り過ぎたりするリスクがあります。

自分で調理することで、味付けも意識して薄味にするなど、自分の身体に合った食生活が送れるでしょう。特に和食中心の食事はバランスがよいとされています。

バランスのよい食事は認知症予防だけでなく、生活習慣病のリスクを減らす効果も期待できるなど、多くのメリットがあります。

料理は頭も体も使うため、脳の前頭前野の活性化を促す可能性もあるそうです。料理中はずっと立っているため、身体機能の維持にもつながるでしょう。

このように、料理は食生活の面以外でもさまざまな効果を得られます。

まとめ

女性の介護士

認知症にはいくつか種類があり、女性がなりやすい認知症・男性がなりやすい認知症などもありそれぞれ特徴も違います。

認知症を予防するには、毎日の食生活や栄養素を意識することが大切です。普段の食事に取り入れやすい食品もあるので、積極的に、かつバランスよく摂取してみてください。

2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.