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「インフルエンザの効果的な予防法」はご存知ですか?家庭内での対策も解説!

 公開日:2025/10/24
「インフルエンザの効果的な予防法」はご存知ですか?家庭内での対策も解説!

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の感染症です。毎年特に冬になると流行し、高熱関節痛全身倦怠感などの症状が現れます。感染力が強く、学校や職場で集団感染が起こることもあります。特に高齢の方や小さな子ども、基礎疾患のある方は重症化しやすいため、適切な予防対策が重要です。この記事では、インフルエンザの流行時期や感染経路、効果的な予防法、そして家族が感染した場合の対策について解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

インフルエンザが流行しやすい時期と感染経路

インフルエンザが流行しやすい時期と感染経路

インフルエンザが流行しやすい時期を教えてください

インフルエンザは、毎年12月頃から徐々に患者さんの数が増え始め、1月から2月にかけて流行のピークを迎えます。 この時期に流行しやすい主な理由は、気温と湿度の低下です。インフルエンザウイルスは、気温が低く乾燥した環境で生存しやすい性質があります。冬は空気が乾燥しているため、ウイルスを含んだ飛沫が空気中に長く漂いやすいです。

インフルエンザはどのような経路で感染しますか?

インフルエンザの主な感染経路は、飛沫感染接触感染の2つです。 飛沫感染は、感染者がくしゃみや咳をした際に飛び散る飛沫を、周囲の方が鼻やお口から吸い込むことで起こります。飛沫は通常1〜2m程度飛散するため、感染者の近くにいる方ほど感染リスクが高くなります。満員電車や教室、オフィスなど、人が密集する場所では知らないうちに感染者と接触している可能性があるため、注意しましょう。

接触感染は、ウイルスが付着した物に触れた手で、自分の鼻やお口、目などの粘膜に触れることで起こります。ドアノブ、電車のつり革、エレベーターのボタンなど、多くの方が触れる場所にはウイルスが付着している可能性があります。インフルエンザウイルスは、ステンレスやプラスチックのような硬くて穴のない表面では24〜48時間程度生存できるとされています。

通常、インフルエンザは空気感染(飛沫核感染)はしませんが、換気が悪い場所では、まれに空気感染が成立することがあります。これは、飛沫の水分が蒸発して小さくなった飛沫核が空気中を長時間漂い、それを吸い込むことで感染するものです。空気感染は感染の拡大につながります。

参照:『Survival of Influenza Viruses on Environmental Surfaces』(The Journal of Infectious Diseases,1982)

インフルエンザの予防法

インフルエンザの予防法

インフルエンザの予防接種を受けることでどの程度予防できますか?

インフルエンザワクチンの予防効果は、年齢や体調、その年の流行株とワクチン株の一致度などによって異なります。 ワクチン接種の有効性は、ワクチンを接種しなかった方が感染するリスクを基準として、どれだけ減少したか、で判断されます。2015年から2016年のシーズンに行われた研究では、ワクチン接種による6歳未満の有効性は約60%と報告されています。

健康な成人では約70~90%の発症予防効果があるとされています。 ワクチンを接種しても100%予防できるわけではありませんが、感染しても症状が軽くなる効果が期待できます。特に高齢の方では、ワクチン接種により肺炎などの重篤な合併症や死亡のリスクを大幅に減らすことができます。65歳以上の施設入所中の高齢の方では、ワクチン接種により死亡リスクを約80%減少させるという報告もあります。

ワクチンの効果が現れるまでには接種後約2週間かかり、効果は5ヶ月程度持続するとされています。そのため、流行が始まる前の10月から11月頃に接種を受けることが推奨されています。13歳未満の子どもは、十分な免疫を獲得するために2回接種が必要です。

毎年接種が必要な理由は、インフルエンザウイルスが頻繁に変異し、流行する型が年によって異なるためです。世界保健機関(WHO)によってその年に流行するウイルス株が選定され、ワクチンが製造されます。

参照: 『インフルエンザワクチンの効果に関する研究』(厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業,平成11年度) 『新型インフルエンザワクチン接種事業(平成22年度)に関するQ&A』(厚生労働省)

マスクでインフルエンザを予防できますか?

マスクには一定の予防効果がありますが、完全に感染を防ぐことはできません。マスクの効果は、着用する方が感染者か非感染者かによって異なります。

感染者がマスクを着用する場合は、咳やくしゃみによる飛沫の飛散を防ぐ効果が高く、周囲への感染拡大を防ぐことができます。これを咳エチケットと呼び、感染拡大防止の重要な対策とされています。

一方、健康な方がマスクを着用する場合の予防効果は限定的です。一般的な不織布マスクでは、ウイルスを含む微小な飛沫核を完全に防ぐことはできません。これまでの研究においても、マスクによる発症予防に関しては、明確な統計的優位差はでていません。ただし、現実的に感染者の飛沫を直接浴びるリスクを減らしたり、ウイルスが付着した手で無意識に鼻やお口に触れることを防いだりする効果は期待できます。

マスクを効果的に使用するためには、正しい着用方法が重要です。鼻とお口を完全に覆い、顔とマスクの間に隙間ができないようにします。また、マスクの表面にはウイルスが付着している可能性があるため、着脱時は紐の部分を持ち、ウイルスの付着部に触れないように気をつけて廃棄することが大切です。また、マスクは必ず使い捨てるようにし、再利用はしないようにしましょう。

手洗いやうがいにはインフルエンザを予防する効果がありますか?

手洗いは、インフルエンザ予防において基本的で効果的な方法の一つです。手に付着したウイルスを物理的に洗い流すことで、接触感染のリスクを減らすことができます。

効果的な手洗いのためには、流水石けん最低15秒以上かけて洗う必要があります。また、アルコール濃度60%以上の手指消毒剤も有効です。アルコールが完全に揮発するまで両手を擦り合わせるようにしましょう。

うがいについては、インフルエンザ予防効果に関する明確な科学的根拠は限られています。インフルエンザウイルスは鼻や喉の粘膜に付着すると、すぐに細胞内に侵入するからです。そのため、その前にウイルスをうがいで排泄させることは困難です。ただし、うがいには喉の乾燥を防ぎ、粘膜の防御機能を保つ効果があるため、間接的な予防効果は期待できるかもしれません。

参照:『事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン』(厚生労働省)

そのほかにもインフルエンザの予防法があれば教えてください

インフルエンザを予防するためには、日常生活で以下のようなことに気をつけましょう。

  • 十分な睡眠をとる
  • バランスのよい食事
  • 適度な運動(過度な運動は逆に免疫力を低下させることがある)
  • 低温や乾燥を防ぐ空調管理

これらによってどの程度感染を防ぐことができるかという、確固たる統計はありません。しかし、免疫力を低下させず、ウイルスが好む環境を防ぐことは感染対策として有効です。

家庭内でのインフルエンザ感染対策

家庭内でのインフルエンザ感染対策

家族がインフルエンザを発症するとほかの家族も感染しやすくなりますか?

家族がインフルエンザを発症した場合、同居している家族への感染リスクは高くなります。 コロナ禍前は、インフルエンザが家族内感染する確率は約20%とされていましたが、コロナ禍では、約50%と報告されました。これは感染者に接触する時間が増えると感染率が増加することがわかります。

感染者の発症前日から発症後1〜2日間は特にウイルス量が多く、6〜7日かけて減少していきます。家庭内感染を完全に防ぐことは困難ですが、適切な対策を講じることで感染リスクを下げることは可能です。

参照:『パンデミックH1N1インフルエンザに関連する推定疫学的パラメータと罹患率』(CMAJ 第182巻 第2号,pp.131-136,2010)

家庭内でのインフルエンザ感染対策を教えてください

家族がインフルエンザを発症した場合は、可能な限り感染者を個室で療養させることが基本です。看病する方は最小限にし、できれば1人に限定します。また、看病する方および感染者もマスクを着用することで、ウイルスの飛散を防ぐことができます。部屋の換気を定期的(1〜2時間ごと)に行うことも重要です。 また、共用物の使用は避け、食器やタオルなども分けて接触機会を少しでも減らすようにしましょう。

家族がインフルエンザを発症したときに抗インフルエンザ薬の予防投与を受けることはできますか?

抗インフルエンザ薬の予防投与は可能ですが、誰でも受けられるわけではありません。 予防投与の対象となるのは、インフルエンザ患者さんと同居・共同生活をしていて、インフルエンザに感染すると重症化するリスクが高い方に限られます。 具体的には、以下のような方が対象です。

  • 65歳以上の高齢の方
  • 慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、糖尿病などの代謝性疾患、腎機能障害のある方

また、予防投与は、感染者と接触してから48時間以内に開始する必要があります。代表的な抗インフルエンザ薬であるオセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物などが使用されます。予防投与の効果は約70〜90%とされています。 また、予防投与は原則として自費診療となるため、費用負担が発生します。予防投与を希望する場合は、かかりつけ医に相談し、リスクと利益を十分に検討した上で判断することが大切です。

編集部まとめ

編集部まとめ

 インフルエンザは毎年冬に流行する感染症で、適切な予防対策により感染リスクを下げることができます。特に効果的な予防法は、流行前のワクチン接種です。完全な予防はできませんが、重症化を防ぐ効果が期待できます。日常生活では、手洗いの徹底、マスクの着用、十分な睡眠と栄養、適度な運動など、基本的な健康管理が重要です。インフルエンザは誰もがかかる可能性がある病気ですが、一人ひとりが適切な予防対策を実践することで、自分自身と周囲の人々を守ることができます。

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