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「乗り物酔いの対策」はご存知ですか?なりにくい食べ物や飲み物も解説!【医師監修】

 公開日:2025/09/19
「乗り物酔いの対策」はご存知ですか?なりにくい食べ物や飲み物も解説!【医師監修】

乗り物酔い(車酔い・船酔い・飛行機酔いなど)は、乗り物の移動中に起こる吐き気やめまいなどの症状の総称です。子どもの頃にバスや車で気分が悪くなった経験がある方も多いでしょう。実際、小中学生の約3~4割が乗り物酔いを経験するとされ、女子の方がやや多いとの統計もあります。大人でも長時間のドライブや船旅で酔ってしまうことがあり、楽しい旅行が台無しになることもあります。本記事では乗り物酔いの原因や予防法、酔ってしまったときの対処法について、新しい医学的知見に基づきわかりやすく解説します。

高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

乗り物酔いの基礎知識

乗り物酔いの基礎知識

乗り物酔いとはどのような状態ですか?

乗り物酔いとは、車やバス、船、飛行機などの乗り物の揺れや動きによって起こる一連の不快な症状のことです。典型的には、乗り物に乗ってしばらくすると 顔面が青白くなり、吐き気やめまいを感じ、冷や汗が出たり呼吸が乱れたりします。ひどい場合は実際に嘔吐してしまうこともあります。乗り物酔いは医学的には「動揺病」とも呼ばれ、乗る乗り物に応じて俗に「車酔い」「船酔い」「空酔い」などともいいます。遊園地のコーヒーカップやジェットコースターのような激しく回転・揺動する乗り物でも起こりえますし、最近ではVR映像や3Dゲームでも乗り物酔いに似た症状を感じることが知られています。

乗り物酔いの原因を教えてください

乗り物酔いの主な原因は、内耳と視覚からの感覚情報が一致しないことにあります。例えば、車内で本やスマートフォンを見ていると目は動きを感じませんが、内耳は揺れを感じて脳が混乱します。そのほか、睡眠不足、ストレス、不安感、疲労、空腹や満腹状態なども症状を誘発する要因になります。

前日までの対策|乗り物酔いの予防法

前日までの対策|乗り物酔いの予防法

乗り物酔いを防ぐために前日に気を付けることを教えてください

乗り物酔いを防ぐためには、前日からの体調管理が重要です。まずは睡眠を十分にとり、疲労を溜めないことを心がけましょう。また、前日の食事では脂っこいものや刺激の強い食品を避け、消化がよく胃に負担をかけない食事を選びます。アルコール摂取も控え、体調を整えるよう努めましょう。

乗り物酔いになりにくい食べ物や飲み物はありますか?

必ず酔わなくなる食べ物はありませんが、いくつか酔いにくくなると期待される食べ物・飲み物があります。まず挙げられるのがショウガ(生姜)とペパーミントです。ショウガは古くから吐き気止めに効果があるとされ、生姜を使ったキャンディーやジンジャーティーは乗り物酔いの予防・緩和に有用とされています。

ペパーミント(ハッカ)も胃の不快感を軽減し、気分をスッキリさせる作用が期待できます。車中では温かい飲み物より冷たいミントティーやジンジャーエールなどの方が自律神経の乱れを抑えやすいので、ミントやショウガを使った冷たい飲料を少しずつ飲むのがおすすめです。例えばペパーミントティーや冷やしたジンジャーティーを水筒に用意したり、コンビニで生姜入り飲料(ジンジャーエールやショウガ蜂蜜ドリンクなど)が手に入れば活用するとよいでしょう。 絶対的な予防薬ではありませんが、「これさえあれば酔わない」というお守り代わりの存在になることも大切です。好きな飲み物や飴を携帯しておくと安心感につながり、それ自体がプラセボ効果(暗示効果)となって酔いにくくなる可能性もあります。ご自身に合った酔い止めフードを見つけて上手に取り入れ、こまめに気分転換しながら乗り切りましょう。

当日の対策|乗り物酔いの予防法

当日の対策|乗り物酔いの予防法

乗り物酔いを防ぐために当日何をすればよいですか?

当日は、軽めの食事をして空腹や満腹を避け、揺れが少ない座席(車は前方席、飛行機は翼付近、船は中央部)を選びましょう。遠くの景色を見ることを意識し、スマートフォンや本など近くを凝視する行為は控えます。また、新鮮な空気を取り入れるため、適宜換気を行うことも大切です。服装は締め付けのないゆったりしたものを選び、リラックスして過ごせる環境作りを心がけてください。

乗り物酔いの予防薬の効果と副作用を教えてください

乗り物酔いを防ぐための酔い止め薬(乗り物酔い予防薬)は、市販薬・処方薬あわせていくつか種類があります。一般的な酔い止め薬の多くは、抗ヒスタミン成分を主成分としています。抗ヒスタミン薬は本来アレルギーの薬ですが、一部の成分には内耳の前庭(平衡感覚を司る部分)の過剰な刺激を抑え、自律神経の乱れを調整してくれる作用があります。これにより、乗り物酔い特有のめまいや吐き気を予防・緩和してくれるのです。加えて、脳の嘔吐中枢への刺激も和らげてくれるため、吐き気そのものを起こりにくくしてくれます。

製品によっては、抗ヒスタミン成分に加えて抗コリン成分(副交感神経遮断薬)を含むものもあります。有名なのはスコポラミンという成分で、経皮パッチ(貼り薬)や飲み薬で使われます。スコポラミンは副交感神経の興奮を抑えて胃腸の動きを鎮め、吐き気を抑制する効果があります。このほか、ビタミンB6(吐き気に効果あり)やカフェイン(中枢神経を興奮させてめまいや頭痛を軽減)、アミノ安息香酸エチル(胃粘膜の表面を麻酔して吐き気を和らげる)といった成分を組み合わせ、総合的に酔いを防ぐ工夫がされた薬も市販されています。

例えばジメンヒドリナートジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン)、メクリジン(抗ヒスタミン)、プロメタジン(抗ヒスタミン)+カフェイン配合、などさまざまな薬剤が利用されています。

副作用としては眠気、口の渇き、視界のぼやけが現れることがあります。特に運転予定のある方は注意が必要で、薬を選ぶ際には薬剤師や医師と相談しましょう。

効果的な乗り物酔い予防薬の飲み方はありますか?

乗り物酔い予防薬は、乗車の30分〜1時間前に服用するのが効果的です。水かぬるま湯で服用し、アルコールやジュース、カフェイン飲料は避けます。長時間移動の場合は、効果が長続きする持続型の薬を選ぶのがおすすめです。

乗り物酔いになりにくくするための工夫を教えてください

前述の基本対策に加えて、日頃からできる体質改善的な工夫もあります。例えば、三半規管を鍛える訓練は一定の効果が期待できます。乗り物酔いの原因の一つは平衡感覚のズレに身体が慣れていないことなので、普段からバランス感覚を養う運動をするとよいという考え方です。具体的には、バランスボールに座る、片足立ちをしてみる、目を閉じて足踏みするといった簡単なものでも内耳や平衡感覚のトレーニングになります。また車に慣れていない方が急に長時間乗ると酔いやすいので、少しずつ乗車時間を延ばして慣らしていくのも一法です。

乗り物酔いになったときの対策

乗り物酔いになったときの対策

乗り物酔いになってしまったときは薬を飲めば治りますか?

症状が現れてからの薬の服用は予防効果に比べ即効性が低くなります。軽い症状であれば緩和できますが、重度の場合は安静にすることが一番です。症状が軽いうちに服用することを心がけましょう。

乗り物酔いの辛さを緩和する飲み物や食べ物を教えてください

吐き気や頭痛には冷たい水やスポーツドリンクを少しずつ飲んで身体を冷やしましょう。生姜やミントの飲み物も吐き気の緩和に効果的です。症状が軽くなったら、消化のよいクラッカーやビスケットを摂取すると回復が促されます。

乗り物酔いの吐き気や頭痛などを和らげる方法を教えてください

症状がひどくなった場合は、可能であれば乗り物から降りて安静にし、横になって休むことをおすすめします。冷たいタオルで額や首筋を冷やし、ゆっくり深呼吸を行いましょう。また、内関のツボを押すことも吐き気軽減に有効です。場所は、手のひら側の手首のしわから肘方向に指3本分進んだ、2本のスジ(腱)の間にあるくぼみです。

乗り物酔いで医療機関を受診することはできますか?

頻繁に症状が出る場合や重症の場合は、耳鼻咽喉科や神経内科で相談し、専門的な検査や治療を受けることが可能です。

編集部まとめ

編集部まとめ

 乗り物酔いは誰にでも起こりえる身近なトラブルですが、適切な予防策と対処法を知っておけば恐れる必要はありません。事前の準備と心のゆとりで予防・軽減できます。今回紹介したポイントを押さえて、快適な旅路をお楽しみください。

この記事の監修医師