「変形性脊椎症」になると現れる初期症状はご存知ですか?医師が監修!
高齢化社会になりロコモ外来が新設されるなど加齢による疾患や介護が必要な患者数は増えています。その中でも変形性脊椎症は4千万人近くいるといわれています。
スマートフォンやパソコンを見る時の前かがみの姿勢は現代病であるストレートネックになりやすく、そこから変形性脊椎症に繋がる恐れも…。
首・腰・足にしびれや痛みが続いたら脊椎変形のサインかもしれません。将来、介護にならないよう今から対策していきましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
変形性脊椎症の症状と原因
変形性脊椎症の症状は何ですか?
変形性脊椎症の原因は何ですか
加齢により椎間板からみずみずしさが失われ、クッション機能がなくなり椎間板が潰れてくることで、周囲の関節・靱帯・筋肉に負担がかかり首や腰の痛みが出やすくなるのです。また、この椎間板が変性する原因は加齢・労働・喫煙・遺伝が関係しており、加齢に伴い臓器や組織に対して酸化ストレス(炎症性サイトカイン・ニトロタイロシン)が増えることが分かっています。椎間板変性のあるラットと人のそれぞれで実験を行い酸化ストレスの指標である炎症性サイトカインとニトロタイロシンの発現の増加があったと研究結果で明らかになっており、これらの酸化ストレスが変性を引き起こしている可能性も考えられています。
そのためNACやビタミンEなどの抗酸化剤を加えると椎間板変性を抑制する効果があると判明したため、できるだけ手術を受けずに済むよう新規治療薬の研究開発中です。
受診を検討するべき初期症状を教えてください。
- 体が変形してきた
- 背中・手足のしびれが1ヶ月近く続いている
- 尿や便が出にくい・漏らしてしまう
- 肛門周りがしびれて感覚がない
- 首・腰・足に強い痛みやしびれ、麻痺や脱力があり歩けない
- 高いところから落ちたり大きな交通事故などで体を強打したりした後である
- 夜も痛む・楽な姿勢がない
- 背中や胸がひどく痛い
- 全般的に体調が良くない
「寝違い」や「ぎっくり腰」は動けなくなるほどの強い症状が出ることもありますが、楽な姿勢で安静にしていると通常は2~3日で動けるようになるため、この時点で受診しても遅くはありませんので慌てる必要はありません。首や腰の痛みと同時に上記のような症状がある場合や、手の使いにくさ・歩きにくさなどを自覚した場合は重大な病気が隠れている可能性がありますので早めに整形外科専門医を受診してください。
変形性脊椎症の検査と治療法
変形性脊椎症の検査方法について教えてください。
変形性脊椎症はどのようなリハビリを行いますか?
水中運動療法も推奨します。水中では浮力による体重の軽減により腰痛が軽減しますので、腹背筋群・下肢筋群の緊張がゆるみ、脊柱の運動がスムーズになり左右対称のバランスのとれた筋力増強運動が可能になるのです。有酸素運動により全身の持久力の向上が望めます。この水中運動療法は腰痛患者に週2回、1回1時間の短時間の運動療法にも関わらず全例に腰痛の軽減がみられ、更に腹背筋群・下肢筋群の増強効果も確認されています。
手術が必要な場合があるか教えてください。
若者でも変形性脊椎症になる可能性はありますか?
変形性脊椎症は完治しますか?
変形性脊椎症の予防
変形性脊椎症はストレッチや筋トレで予防できますか。
腰痛体操も推奨されている変形性脊椎症の予防法であり、リハビリ療法としても効果的です。腰椎を支える主な4つの筋肉は腹筋・背筋・ハムストリングス・腸腰筋で、これらの4つの筋力の維持と柔軟性を保つことが重要になります。また、骨粗鬆症にならないように気を付けることも予防の一つです。骨密度は50代を過ぎると急激に減少します。骨粗鬆症に伴う腰椎圧迫骨折と大腿骨頸部骨折の発生率が上がり、脊椎の骨折により背中が曲がりやすくなります。カルシウムを摂り、適度な運動・日光浴をして骨を強くすることも必要です。反り返った姿勢(歯科治療、美容院の洗髪時など)は症状を悪化させることがありますので、なるべく脊椎に負担をかけない正しい姿勢を心掛けましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
機能が改善し笑顔で退院した後も、好きなことを始める・楽しむといった生活の質を向上させることもできます。2036年には3人に1人が65歳という超高齢化社会になるといわれていますので、健康寿命をのばすためにも老化現象に負けない健康な体をつくっていきましょう。
編集部まとめ
スマ―トフォン・パソコンの使用で肩こりも低年齢化しているそうです。長時間同じ姿勢でいると筋肉が硬くなり骨が曲がりやすくなります。
首・背中・腰・股関節・膝など普段よく動かす関節は、加齢と共に骨に負担がかかる部位です。予防に体操やストレッチで柔軟にしておきましょう。
また、変形した骨は元の状態に戻すのが難しいので姿勢に注意を払うことが大切です。健康寿命をのばしいつまでも元気な体で過ごしていきたいですね。
参考文献