「腎臓がんに良い食べ物」とは?腎臓がんの患者さんが避けたほうがよい食習慣も解説!

腎臓がんの治療後、「どのような食べ物を食べればいいのだろう?」と不安に感じる患者さんやご家族は多いでしょう。手術で腎臓を一部または片方摘出した場合、残った腎臓の機能によっては食事に気をつけるポイントが変わります。また、治療中は食欲が落ちてしまうこともあります。この記事では、腎臓がん術後の身体の状態と食事の注意点をわかりやすく説明し、どのような食べ物がよいのか、食事制限のポイント、そして食欲不振への対処法について解説します。

監修医師:
西田 陽登(医師)
目次 -INDEX-
腎臓がんの術後の状態
腎臓がんの手術後は、人によって腎臓の働きの状態が異なります。腎臓は通常2つありますが、がんの手術で片方の腎臓を摘出した場合、残ったもう一つの腎臓が代わりに働くことが多いです。そのため、腎機能が十分保たれている方もいれば、腎機能の低下がみられる方もいます。それぞれの場合について、身体の状態と食事への影響を見ていきましょう。
腎機能の低下がみられる場合
手術後に残った腎臓だけでは十分な働きができず、腎機能が低下している場合、体内の老廃物や水分を処理する能力が落ちています。この状態が続くと慢性腎臓病と呼ばれる状態になります。この状態では、腎臓の機能悪化をこれ以上進めないように生活習慣や食事に注意する必要があります。例えば、塩分やタンパク質を控えめにするなど、腎臓に負担をかけない食事が求められます。腎機能が大幅に低下してしまった場合、最終的には人工透析が必要になることもあります。しかし多くの場合、適切な食事療法や血圧管理によって腎機能の悪化を抑えることができます。
腎機能の低下がみられない場合
一方、残った腎臓が正常に働いており腎機能に問題がない場合は、基本的に特別な食事制限は必要ないとされています。この場合、術前とほぼ同じように生活できます。ただし、「何でも好き放題に食べてよい」という意味ではありません。身体に負担をかけないよう、暴飲暴食を避けて規則正しい食生活を送ることが大切です。
また、腎臓を一つで頑張らせている状態ですから、塩分をとりすぎないことも引き続き重要です。塩分の摂り過ぎは高血圧につながり、腎臓に負担をかけます。後述するように減塩に努め、水分も適度にしっかり補給しましょう。
腎臓がんの患者さんによい食べ物はある?
結論からいえば、「これさえ食べれば腎臓がんによい」という特別な食べ物はありません。現在の医学では、特定の食品が腎臓がんの治療効果を高めたり再発を防いだりすることが証明されているわけではありません。大切なのはバランスのよい食事をとり、体力や栄養状態を維持することです。手術や治療で体力が落ちているときこそ、タンパク質、ビタミン・ミネラル、エネルギー源をバランスよく摂取して、身体の回復を助けることが重要です。腎機能の低下を指摘されている場合、生野菜やフルーツを取りすぎると不整脈が起こることがあるので、よく主治医の先生に確認しましょう。そして偏った食事でなく、バランスの良い食事を心がけましょう。
腎臓がん治療中の食事の制限と注意点
腎臓がん患者さんの食事で一般的に注意すべきポイントをまとめます。特に、腎臓の負担を減らし、体調を整えるための工夫として、以下の点を意識してみてください。
塩分を控える
塩分の取りすぎは腎臓に負担をかける大きな要因です。塩分を過剰にとると体内のナトリウムバランスが崩れ、水分を溜め込みやすくなります。その結果、血圧が上昇し、腎臓の細い血管に負担がかかって腎機能が低下しやすくなります。特に腎臓を一つ失った場合や元々腎機能が低下している場合は、高血圧が残った腎臓を痛める原因になりかねません。そこで、減塩を心がけましょう。具体的には、1日6g未満の塩分摂取を目標にしましょう。
太らない食生活を心がける
適正体重の維持も腎臓がん患者さんの食生活で重要なポイントです。肥満は腎臓への負担を増やし、高血圧や糖尿病など腎臓を悪くする病気を引き起こしやすくなります。実際、腎臓がんの発症リスクにも肥満が関与することが知られており、術後も体重の増加には注意が必要です。太らないようにするには、カロリーのとりすぎに気をつけることが基本です。油っこい揚げ物や菓子類、甘い清涼飲料など高カロリーのものを控えめにし、野菜やきのこ類でかさ増しして満腹感を得る工夫をしてみましょう。どうしても食事だけで体重管理が難しい場合は、軽い運動も取り入れて消費エネルギーを増やすことも有効です。無理のない範囲で散歩や体操を行い、筋力を維持することは体調回復にも役立ちます。
水分摂取を忘れない
腎臓の働きを助けるために、こまめな水分補給も大切です。水分をしっかりとることで、腎臓が老廃物を尿として排出しやすくなります。反対に水分不足になると、尿が濃くなって腎臓に負担をかけたり、脱水によって腎機能が急に悪化する場合もあります。
ゆっくりよく噛むように心がける
一口ごとにゆっくりよく噛んで食べることも、食事療法の基本かつ重要なポイントです。よく噛むことで食べ物が細かくなり、消化管への負担が軽くなります。また、唾液がたくさん出るため、口の中や喉が潤って飲み込みやすくなります。抗がん剤治療などで口内が渇きやすい方や、食べ物の味を感じにくい方にも、ゆっくり噛むことは役立つ工夫です。飴をなめたりガムを噛んだりするのも唾液の分泌を促す助けになります。
腎機能の低下がみられる場合はタンパク質を制限する
腎機能が低下している患者さんでは、タンパク質の摂取制限が求められる場合があります。タンパク質は筋肉や臓器の材料として欠かせない栄養素ですが、同時に分解産物が出ます。これら老廃物は腎臓から排泄されますが、腎機能が落ちていると十分に捨てきれず身体に溜まってしまうことがあります。そのため、腎臓に負担をかけないよう必要最低限のタンパク質だけ摂ることがすすめられます。
腎臓がん治療中の食欲不振への対処法
治療中や術後に、食欲が出ないという時期があるかもしれません。食欲不振はがん患者さんにはよく見られる症状です。腎臓がんの場合も、手術直後や薬物療法中に一時的に食欲が落ちることがあります。ここでは、腎臓がん治療中の食欲不振への対処法をいくつかご紹介します。
- 食べやすいものを少量ずつ食べる
- 冷たくて喉ごしのよい食品を活用する
- においを抑えるため料理を冷ましてから食べる
- 栄養価の高いものを選ぶ
以上のような対処法を試しても食欲不振が続く場合や、体重がどんどん減ってしまう場合は、早めに主治医に相談しましょう。
腎臓がんの食事についてよくある質問
ここまで腎臓がんの食事について紹介しました。ここでは「腎臓がんの食事」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腎臓がんの患者さんが避けたほうがよい食習慣を教えてください。
- 塩分過多の食事
- 暴飲暴食
- 高カロリー・高脂肪の食事
- 動物性タンパク質の過剰摂取
- 水分不足
これらを守れているか不安な場合は、主治医や管理栄養士に普段の食事内容を相談し、改善点をアドバイスしてもらうとよいでしょう。
腎臓がんの発生と食習慣に関係はありますか?
腎臓がんの発生要因として、食習慣がまったく無関係とはいえません。腎臓がんの危険因子として医学的に確立しているのは、喫煙と肥満です。肥満になりやすい食生活、つまり高カロリーで野菜や果物が少ない偏った食事は、結果的に腎臓がんのリスクを高める可能性があります。
腎臓がんの再発を避けるためにできることを教えてください。
- 禁煙
- 適度な運動と体重管理
- 減塩
- バランスのよい食事
- 十分な水分補給
- 規則正しい生活
- 定期検査と受診
これらで再発を完全に避けられるわけではありませんが、これら生活習慣に取り組むことで再発しづらく、そして早期発見につなげることが期待されています。
まとめ
腎臓がんの治療後も、食事は人生の大きな楽しみの一つでしょう。 残念ながらこれだけ守れば、腎臓がんにならないという食生活はありません。医師の指導を守りつつ、あまり神経質になりすぎず、心も満たされる食生活を送っていただければと思います。本記事がその食生活を見直すきっかけになれば幸いです。
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