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「卵巣がんにかかる確率」はどのくらい?卵巣がんのリスク要因も解説!【医師監修】

 公開日:2025/05/31
「卵巣がんにかかる確率」はどのくらい?卵巣がんのリスク要因も解説!【医師監修】
卵巣がんは、女性の卵巣に発生する悪性腫瘍です。子宮頸がん・子宮体がんなどほかの婦人科がんと比べて発症数は多くありませんが、発見が遅れがちなため死亡率が高いことが知られています。この記事では、卵巣がんとはどのようながんなのか、その患者数や発症する確率、年代別の発症状況、そしてリスク要因を解説します。
井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

プロフィールをもっと見る
大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

卵巣がんとは

卵巣がんとは、子宮の両側にある卵巣から発生するがんです。卵巣には卵子を育てて排卵する機能と、女性ホルモンを分泌する機能があります。その卵巣にできる腫瘍のうち、悪性のものが卵巣がんです。大部分の卵巣がんは卵巣の表面にある上皮から発生するタイプです。また、卵巣がんは初期には症状が出にくいため、早期発見が難しいがんとして知られます。

卵巣がんの特徴

卵巣がんは初期には自覚症状が乏しく、進行してから発見されることが多いという特徴があります。そのため約半数が進行がん(III期・IV期)で見つかり、子宮頸がんや子宮体がんと比べて予後が悪い傾向があります。年間の新規患者数はほかの主要ながんほど多くはありませんが、年間約5,000人が卵巣がんで命を落としており、婦人科がんのなかでは最も死亡者数が多い疾患です。

卵巣がんの初期症状

初期の卵巣がんでは目立った症状がない場合が多いですが、卵巣がんが進行すると、腹部にある臓器や腹壁の内側などをおおっている腹膜や、胃から垂れ下がって大腸と小腸をおおっている大網にがんが広がることがあります。これを腹膜播種といいます。卵巣がん自体が大きくなったり、腹膜播種になったりすると下記のようなさまざまな症状が出ることがあります。

  • 腹部の膨満感
  • 腹部が張る感じ
  • 下腹部の痛み
  • 尿の頻度が多い
  • 急な激しい腹痛
こうした症状は卵巣がん以外の病気でも起こりえますが、特に腹部の膨満感や痛みが長引く場合は注意が必要です。症状が一時的なものではなく、続いてしまう場合は婦人科を受診するようにしましょう。

卵巣がんの患者数と発症する確率

進行した状態で見つかることが多い卵巣がんの患者数はどのくらいなのでしょうか。また、その患者数と発症する確率を本章では解説します。

日本における卵巣がん患者数

日本では卵巣がんの新規患者数は年々増加しています。2020年には日本全国で12,738人の女性が卵巣がんと診断されました。現在は年間約1.3万人前後と推定されます。卵巣がんの患者数は1980年代以降右肩上がりで増えており、将来も増加が予測されています。

卵巣がんを発症する確率

それでは女性が卵巣がんになる確率はどのくらいなのでしょうか。日本人女性が生涯のうちに卵巣がんを発症する確率は1.5%とされています。決して高い数字ではありませんが、年齢とともにリスクは高まります。発症は30代後半から増え始め、閉経前後の50代〜60代でピークに達します。ただし、遺伝的な体質によって卵巣がんになる確率が極めて高くなる場合もあります。

年代別卵巣がんの患者数

年齢層によって卵巣がんの発症頻度には大きな差があります。年齢が上がるほど患者数が増加し、中高年で発症が最も多くなります。日本では発症は40代後半頃から増え始め、50代〜60代前半でピークに達し、その後は高齢になると次第に減少します。若年(20〜30代)での卵巣がん発症はまれですが、絶対に起こらないわけではありません。

卵巣がんのリスク要因

卵巣がんのリスク要因として、年齢、妊娠・出産歴、遺伝的要因などが知られています。これらの要因に当てはまるからといって必ず卵巣がんになるわけではありませんが、複数の要因を持つ場合には注意が必要です。

年齢

加齢は卵巣がん発症の大きなリスク要因です。卵巣がんは中高年以降での発症が多く、閉経前後の年代にリスクが最も高くなります。年齢が若いうちは罹患率が低いですが、歳を重ねるにつれて卵巣がんになる可能性が高まっていきます。

妊娠、出産経験の有無

妊娠・出産の回数が少ないことは卵巣がんのリスクを高める要因の一つです。女性は妊娠・出産すると約1〜2年のあいだ排卵が止まります。反対に、出産経験がないか少ないとその分だけ一生の排卵回数が増え、卵巣がんのリスクが上昇すると考えられています。また、初潮が早く閉経が遅い、つまり月経がある期間が長い場合も排卵回数が多くなるためリスクが高まるとされています。一方で経口避妊薬(ピル)で排卵を抑えていた女性では卵巣がんのリスクが低下することがわかっています。

遺伝子変異

家族性に卵巣がんを発症しやすい体質も知られています。代表的なのが遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)で、BRCA1/2遺伝子の生まれつきの変異によって起こります。この体質を持つ場合、卵巣がんの生涯リスクは一般女性より格段に高くなり、例えばBRCA1変異保有者では約40%に達するとの報告があります。また、リンチ症候群の女性も卵巣がんを発症しやすく、生涯リスクが10%前後に上昇します。このような遺伝性要因による卵巣がんは全体の1割程度といわれています。

遺伝性卵巣がんを発症するリスクの有無を検査する方法

自分がHBOCなど遺伝性の卵巣がんリスクを持つかどうかは、遺伝子検査によって調べることができます。具体的には血液などからBRCA1/2遺伝子の変異を調べる検査です。

検査前には、医師や遺伝カウンセラーによる詳細な問診や家族歴の確認が行われ、検査の意義、リスク、結果の活用法について十分な説明を受けます。検査の結果、リスクを高める遺伝子変異が見つかった場合、定期的な経過観察や将来的に予防的卵管卵巣摘出術を検討することもあります。しかし、この検査が陰性であったからといって、必ず卵巣がんにならないわけではありません。そのほかのがんと同様、年齢に応じた定期検査などを行うことが大切です。

まとめ

卵巣がんは初期症状が少なく発見が難しいがんです。日本では年間約1.3万人が罹患し、約5,000人が亡くなっています。発症は中高年に多く、リスク要因として加齢や妊娠・出産歴の少なさ、遺伝的要因などが挙げられます。卵巣がんは有効な検診法が確立されていないため、日頃から症状に注意し、気になる症状が続く場合は早めに受診することが大切です。家族歴などで心配がある場合には、専門の遺伝カウンセリングで相談し、必要に応じて検査を受けることで適切な対策を検討しましょう。

関連する病気

卵巣がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。

  • 卵管がん
  • 原発性腹膜がん
  • 子宮体がん
  • 子宮頸がん
  • 乳がん

関連する症状

卵巣がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。

  • 腹部膨満感(お腹のハリ)
  • 下腹部痛(下腹部の痛み)
  • 頻尿(トイレが近くなる)
  • 食欲不振(食欲の低下)
  • 腹水(腹腔に液体がたまること)

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