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爪にできた「メラノーマの見分け方」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/04/15
爪にできた「メラノーマの見分け方」はご存知ですか?【医師監修】

爪のメラノーマ(爪下悪性黒色腫)は、皮膚がんのなかでもまれではありますが、その進行の速さや転移リスクの高さから、早期発見と適切な治療が重要です。本記事では、爪のメラノーマの特徴や原因、症状、診断方法、治療法、そして見分け方に関して網羅的に解説しています。本記事を読めば爪のメラノーマの内容を広く理解できます。

井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

爪のメラノーマとは?特徴と原因、症状を解説

爪のメラノーマ(爪下悪性黒色腫)は、爪の下に発生する皮膚がんの一種で、メラニン色素を産生する細胞(メラノサイト)が悪性化した腫瘍です。手足の指先(爪を含む)にできるものは末端黒子型黒色腫と分類されます。日本人の場合、皮膚の悪性黒色腫は手、身体の末端部に多いとされています。

爪のメラノーマの特徴

爪のメラノーマは、初期には爪にできる黒~茶色の縦長の筋(線状の色素沈着)として現れます。一見すると爪の内出血や色素沈着と区別がつきにくいですが、メラノーマの場合、この筋が徐々に濃くなったり太くなったりする傾向があります。色も一様ではなく、部分的に濃淡のむらが生じることがあります。進行すると爪そのものが割れたり変形したりし始め、色素が爪からはみ出して周囲の皮膚(爪の生え際や指先)にも黒く染み出すことがあります。

爪のメラノーマの原因

皮膚のメラノーマの発生原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因が組み合わさって起こると考えられています。環境要因として代表的なのは紫外線(UV)で、欧米人の場合は日光によるUV曝露が重要な誘因となります。一方で、日本人に多い手のひら・足の裏・爪のメラノーマでは、紫外線以外に摩擦や外傷など物理的な刺激も危険因子の一つとされています。

爪のメラノーマの症状

爪のメラノーマの主な症状は、爪の下に現れる黒~褐色の筋状の色素斑です。この筋は爪の根元にある色素細胞が増殖することで生じます。良性のホクロでも似たような黒い筋が爪に現れることがありますが、多くの場合それらは細く均一な線で長期間大きな変化がありません。一方、メラノーマによる色素線条は次第に太くなったり、色が濃くなったりと変化していくことがあります。また、メラノーマが進行してくると爪自体の形状にも変化が現れます。爪が割れやすくなったり、デコボコに変形したりすることもあります。

爪のメラノーマの見分け方、3つのサイン

爪に黒い筋を見つけても、それが必ずしも悪性とは限りません。実際、日本人では年齢を重ねると爪に黒っぽい筋が入ることが珍しくなく、良性のほくろや色素沈着によるものも多いです。しかし、以下のような色や形の変化がみられる場合は注意が必要です。

色の変化

筋の色調に注目します。悪性黒色腫の場合、色が濃くなったり薄い部分と濃い部分が混在してムラが出たりすることが多いです。正常の色素沈着であれば淡い茶色~黒色の均一な色合いですが、メラノーマでは黒に近い濃い色へ変化し、部分的にまだらな感じになります。

線の特徴

筋の太さや範囲に注目します。悪性の場合、筋の幅がだんだん広がり、次第に太い帯状になっていく傾向があります。特に大人になってから生じた黒い筋が、数ヶ月以内に幅が数ミリ以上に拡大してきた場合は注意が必要です。正常のホクロ由来の筋であれば細いまま変化しないことが多いため、短期間で明らかに太くなっている場合は皮膚科で検査を受けることを検討しましょう。

形状の変化

爪やその周囲の形状変化にも注意が必要です。メラノーマが進行してくると、爪の表面に凹凸が出たり、割れたり欠けたりすることがあります。また、筋状の色素が爪の生え際から皮膚にしみ出すように広がっているのは重要なサインです。これは専門的にはハッチンソン徴候と呼ばれ、悪性黒色腫に典型的な所見です。

爪のメラノーマの診断方法と治療法

本章では、メラノーマの診断のための検査方法や治療を解説します。

爪のメラノーマの診断方法

爪のメラノーマを診断するためにはいくつかの検査を行います。

視診

まず患部を直接観察し、爪の色素斑の大きさ・形・色の状態や、周囲の皮膚への広がりがないかを確認します。過去の経過(いつからあるか、変化の速度)や家族歴、紫外線曝露歴なども問診で詳しく尋ねられます。肉眼でホクロや爪の内出血との鑑別が難しい場合でも、経験のある皮膚科医であれば上述した特徴からある程度の見当をつけます。

ダーモスコピー検査

より正確な診断のために、ダーモスコープと呼ばれる拡大鏡を使った検査が行われます。ダーモスコピーでは爪や皮膚の色素斑を10倍以上に拡大して観察でき、色素の分布や線状のパターン、境界の様子など肉眼では見えない微細な所見を確認できます。例えば、爪のメラノーマでは色素線条の線の太さが不均一であったり、色調に複数の色が混在するパターンが見られることがあります。ダーモスコピー所見と臨床症状を総合して、悪性が疑わしい場合には次の段階に進みます。

生検

確定診断のためには病理組織検査が必要です。局所麻酔下で爪の病変部の一部または全部を切除して組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無や種類を調べます。爪の場合、病変が小さければ部分的に爪甲をはがして組織をとることもありますが、疑いが強い場合は初めから病変を含む爪の部分を切除生検することもあります。組織検査で悪性黒色腫と診断が確定したら、さらに病変の深さ(厚み)や広がりを調べます。

爪のメラノーマの治療法

爪のメラノーマの治療は手術や薬物療法、放射線治療を組み合わせて行います。爪のメラノーマの治療の基本は手術による切除です。早期であれば病変から5mm〜1cm程度離して切除することでほぼ100%治癒が期待できます。

手術で切除できない進行例や転移がある場合、薬物療法が行われます。悪性黒色腫はかつて抗がん剤があまり効きにくいがんでしたが、近年は免疫療法の発展により治療成績が大きく向上しています。
免疫療法とは、患者さん自身の免疫細胞ががん細胞を攻撃できるように働きかける治療法です。進行あるいは再発した悪性黒色腫の治療に用いられ、がん細胞を免疫の力で排除しやすくすることで効果を発揮します。

加えて、悪性黒色腫のなかには特定の遺伝子変異を持つものがあり、特に約30%の患者さんで認められるBRAF遺伝子変異に対しては分子標的療法が有効なケースもあります。これら新しい薬物療法の登場により、転移を有する悪性黒色腫でも症状のコントロールや生存期間の延長が期待できるようになってきました。

最後に、放射線療法です。爪のメラノーマに対する放射線治療は主な選択肢ではありませんが、転移巣が骨や脳にある場合の痛みの緩和や病変縮小、手術後の再発リスク軽減の目的で行われることがあります。また、手術が困難な場合に局所の制御目的で照射を検討することもあります。しかし、メラノーマ細胞自体は放射線に対する感受性が高くないため、基本的には手術と薬物療法が治療の中心となります。

爪のメラノーマについてよくある質問

ここまでは爪のメラノーマの一般的な内容を紹介しました。ここでは「爪のメラノーマ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

爪のメラノーマが疑われるときは何科を受診?

井林雄太医師井林雄太(医師)

皮膚科を受診するのが一般的です。爪のメラノーマは皮膚がんの一種ですので、まずは皮膚科医の診察を受けましょう。皮膚科医が視診やダーモスコピーで評価し、必要に応じて生検を行って診断します。まずは近くの皮膚科で相談すれば適切な施設を紹介してもらえます。なお、確定診断後の治療では皮膚科医のほか、形成外科医や腫瘍内科医などがチームとなって治療にあたることがあります。

爪のメラノーマはどのような人がかかりやすい?

井林雄太医師井林雄太(医師)

爪のメラノーマは紫外線(UV)のほか、摩擦や外傷など物理的な刺激も危険因子の一つとされています。そのため、長期間の紫外線を浴びたり、靴による足の爪への繰り返しの刺激が多かったりする場合は注意が必要です。

爪のメラノーマは転移する?

井林雄太医師井林雄太(医師)

爪のメラノーマも進行すると転移する可能性があります。爪に限らず悪性黒色腫は転移しやすいがんです。初期のうちは病変が爪にとどまっていますが、がん細胞が皮膚の深部(真皮や皮下組織)に達すると、血管やリンパ管を通って体内に散らばり近くのリンパ節や肺、肝臓、脳、腎臓などさまざな臓器に転移する恐れがあります。


まとめ

爪のメラノーマは、早期発見と迅速な対応が患者さんの予後を大きく左右する病気です。初期の段階では見逃されやすいため、爪に見られる微妙な色や形の変化に注意を払い、異常が疑われる場合は早めに皮膚科を受診することが重要です。診断技術と治療法の進歩により、早期発見すれば高い治癒率が期待できるため、正しい知識を持って自己管理に努めましょう。この記事が、爪のメラノーマへの理解を深め、健康管理の一助となれば幸いです。

関連する病気

  • 爪下血種
  • 爪真菌症
  • 黒色線条
  • 薬剤性色素沈着

関連する症状

  • 爪の色の変化
  • 爪の割れや変形
  • 周辺皮膚の色調変化
  • 爪の痛み

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