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「乳がんの再発率」はご存知ですか?再発した場合の余命・生存率も医師が解説!

 公開日:2024/09/30
「乳がんの再発率」はご存知ですか?再発した場合の余命・生存率も医師が解説!

Medical DOC監修医が乳がんの再発率や余命・生存率・再発した場合の治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

山田 美紀

監修医師
山田 美紀(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、総合病院や大学病院にて形成外科、外科、乳腺外科の研鑽を積んできた。医学博士。日本外科学会 外科専門医、日本乳癌学会 乳腺認定医、検診マンモグラフィー読影認定医(A判定)の資格を有する。

「乳がん」とは?

乳がんは乳腺にできる悪性腫瘍、つまりがんのことです。日本人女性の約9人に1人が乳がんにかかるといわれています。乳がんの治療は手術と再発予防のための薬物治療や放射線治療を組み合わせて行います。一口に乳がんといっても、乳がんの性質やステージによって再発率はさまざまです。

乳がんのステージ別の再発率

乳がんのステージ別の再発率について述べていきます。

乳がん・ステージ0の再発率

ステージ0は非浸潤がんです。ステージ0の10年以内の再発率は1~2%です。ステージ0の再発部位は乳房の局所再発が多いです。非浸潤がんですが、再発した例のうち、約半数は浸潤がんとして再発すると報告されています。完治を目指して治療を行います。

乳がん・ステージ1の再発率

ステージ1はしこりが2cm以下かつリンパ節転移なしの段階です。ステージ1の10年以内の再発率は約10%です。乳房やリンパ節などの局所再発のみの場合は完治を目指して治療を行います。

乳がん・ステージ2の再発率

ステージ2はステージ1よりしこりが大きい、または脇のリンパ節転移がある段階です。ステージ2の10年以内の再発率は約20%です。乳房やリンパ節などの局所の再発のみで、手術が可能な場合は完治を目指して治療を行います。他の臓器に転移し再発した場合は、がんの進行を抑え、症状をやわらげる治療を行います。

乳がん・ステージ3の再発率

ステージ3はしこりの範囲も広く、リンパ節転移ありの段階です。ステージ3の10年以内の再発率は40~50%です。乳房やリンパ節などの局所の再発のみで、手術で切除できる場合は完治を目指して治療を行います。他の臓器に転移再発した場合は、がんの進行を抑え、症状をやわらげる治療を行います。

乳がん・ステージ4の再発率

ステージ4は乳房だけではなく、他の部位に転移している状態であり、完治は難しいです。そのため、再発という表現を使用しません。この段階では、がんの進行を抑えて症状をやわらげ、QOLを保ちながら長期生存することを目指して治療を行います。

乳がんが再発した場合の余命・生存率

転移・再発乳がんの余命や生存率は、転移場所や乳がんのサブタイプによってさまざまです。ホルモン受容体陽性乳がんでは全生存期間の中央値(データを小さい順に並べたときの真ん中の値)は44.8ヶ月です。HER2陽性乳がんでは58ヶ月、トリプルネガティブ乳がんは14.2ヶ月と報告されています。乳房やリンパ節などの局所再発のみである場合は完治を目指して治療を行います。他の臓器に転移がある場合は、完治が難しく薬物治療を中心に行います。

乳がんが再発した場合の治療法

乳がんが乳房やリンパ節などの局所に再発した場合は、必ず他の臓器に転移していないか全身検査を行います。局所再発のみの場合は、完治を目指して治療を行います。

手術

乳房部分切除後に温存した乳房に再発した場合は、一般的には乳房全切除を行います。再発リスクが低い場合に限れば、再度の部分切除ができる可能性もあります。また、乳房全切除後に皮膚や胸壁に再発した場合も、切除が可能であれば手術を行います。リンパ節に再発した場合も、切除が可能であれば手術を行います。治療は乳腺外科で行います。

放射線治療

局所再発に対して、放射線治療を行うことがあります。手術で切除した後の再発予防や切除が難しい場合にがんの進行抑制のために行います。ただし、一度放射線を当てた部分には照射ができないため、最初の手術時に放射線照射をしていない部位に限られます。治療は放射線治療科で行います。

内分泌療法

局所再発の切除後の再発予防目的や切除が難しい場合に薬物治療を行います。ホルモン受容体陽性乳がんの場合は、内分泌療法を行います。初回の手術後に行っていた薬の種類や再発までの期間に応じて薬を選択します。どのくらいの期間治療をつづけるべきかについては明確ではありません。治療は乳腺科で行います。

抗HER2療法

局所再発の切除後の再発予防目的や切除が難しい場合に薬物治療を行います。HER2陽性乳がんの場合は、乳腺科で抗HER2治療を行います。初回の手術時の薬物治療の内容を考慮して、治療を選択します。

化学療法

局所再発の切除後の再発予防目的や切除が難しい場合の進行を抑える目的で化学療法を行うことがあります。化学療法はどのタイプの乳がんに対しても有効です。局所再発の切除後に3~6カ月間の乳腺科で治療を行います。初回の手術時の治療内容や再発までの期間、患者さんの体調やご希望を考慮して、治療を選択します。

乳がんが再発し転移もある場合の治療法

他の臓器への転移がある場合は、薬物治療が基本となります。1つの治療を行って効果があるうちは続け、効果がなくなったら別の治療に変更します。

内分泌療法

ホルモン受容体陽性乳がんであり、差し迫った生命の危険がある内臓転移がない場合は、内分泌治療を行います。内分泌治療に加えて、CDK4/6阻害剤やmTOR阻害剤などの分子標的薬を併用することがあります。治療は乳腺科に通院して行います。分子標的薬による下痢や息切れなどの副作用が出る場合があります。症状がある場合は、早めに医療機関に相談しましょう。

抗HER2療法

HER2陽性乳がんの場合は、抗HER2療法を行います。抗HER2薬の種類によっては抗がん剤と併せて治療を行います。乳腺科に通院して治療を行います。息切れなどの副作用がある場合は早めに医療機関に相談しましょう。

化学療法

化学療法は全てのタイプの乳がんに有効です。ホルモン受容体陽性乳がんでは、内分泌療法が効かない場合や差し迫った生命の危険がある転移の場合に化学療法を行います。乳腺科に通院して治療を行います。化学療法は正常な細胞にもダメージをあたえるため、髪の毛が抜ける、感染に弱くなるなどの副作用があります。治療中は感染に気を付けて生活し、つらい症状がある場合は医療機関に相談しましょう。

免疫チェックポイント阻害剤

PD-L1陽性のトリプルネガティブ乳がんでは化学療法に併せて免疫チェックポイント阻害剤による治療を行います。乳腺科に通院して治療を行います。免疫チェック阻害剤特有の副作用があります。特に高熱、意識の低下、呼吸困難、手足の麻痺、頻回の下痢などの症状がある場合はすぐに医療機関に相談しましょう。

PARP

乳がん全体の5%にBRCA1/2遺伝子の病的バリアントがあるといわれています。BRCA病的バリアントのあるHER2陰性乳がんに対して、PARP阻害剤が有効です。アンスラサイクリン系とタキサン系の化学療法の治療歴のある方には乳腺科に通院して治療を行います。吐き気や貧血などの副作用が出る可能性があり、症状がある場合は医療機関に相談しましょう。

放射線治療

痛みのある骨転移や脳転移に対して症状を和らげるために放射線治療を行うことがあります。手術後に放射線照射をしていない部分であれば乳房やリンパ節に対しても進行を抑え、症状を和らげるために放射線治療を行うことがあります。

「乳がんの再発率」についてよくある質問

ここまで乳がんの再発率などを紹介しました。ここでは「乳がんの再発率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

乳がんの再発は、初めて発症してから何年後に発症しますか?

山田 美紀山田 美紀 医師

再発のタイミングはステージや乳がんの性質によってさまざまです。10年以上たってから再発することもあります。

乳がんは、全摘出しても再発することはあるのでしょうか?

山田 美紀山田 美紀 医師

全摘出しても、乳房の皮膚や胸壁に再発することがあります。全摘出後の局所再発率は10%未満といわれており、そのうちの3分の1は遠隔転移を伴っていると報告されています。

編集部まとめ

乳がんの再発率、再発した場合の治療法についてご紹介しました。乳癌の再発率はステージや乳がんの性質によって異なります。ステージが早いほど再発率が低いので、早期発見し適切な治療を受けることが重要となります。

「乳がんの再発率」と関連する病気

「乳がんの再発率」と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

  • 卵巣がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合)

遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合、乳がんや卵巣がんになるリスクが高くなります。乳房部分切除術をした場合は、残った乳腺に再発する可能性が高くなります。

「乳がんの再発率」と関連する症状

「乳がんの再発率」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乳房のしこり
  • 脇や鎖骨のリンパ節の腫れ
  • 骨の痛み
  • 息苦しさ
  • 頭痛

乳がんが胸やリンパ節に再発した場合はしこりを触れます。他の臓器に転移再発した場合は、転移した部位によって様々な症状が出ます。

この記事の監修医師