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梅毒の症状とは?時間経過ごとの症状の違いや検査方法、治療法について解説

 公開日:2024/06/13
梅毒の症状とは?時間経過ごとの症状の違いや検査方法、治療法について解説

感染者数の増加が問題視されている感染症の一つに、梅毒があります。梅毒とはどのような病気かご存知でしょうか? 昔は死の病として恐れられていましたが、医療の進歩により、現代では適切な治療によって完治できるようになりました。梅毒に感染した場合、症状を放置せず、早期治療を行うことが大切です。梅毒とはどのような病気でどのような症状が出るのか、 検査方法や治療法も含め、わかりやすく解説していきます。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

梅毒について

梅毒について
近年増加傾向にある梅毒ですが、どのような病気かご存知でしょうか? 梅毒とはどのような病気なのか、感染者数と流行状況はどのように推移しているのか、わかりやすくご説明します。

梅毒とは

梅毒とは、病原菌である「梅毒トレポネーマ」に感染することによって起こる感染症で、感染してしまった場合、全身にさまざまな症状が発生することが特徴です。梅毒トレポネーマは、人を介して粘膜や皮膚から感染します。主な感染経路としては、性行為(梅毒感染者の粘膜や皮膚に直接触る行為)が挙げられます。

梅毒の原因

梅毒の原因は、病原菌である「梅毒トレポネーマ」への感染です。「梅毒トレポネーマ」は、感染者の血液、精液や膣分泌液、傷口からの浸出液など、体液中に存在します。そのため感染者の粘膜や皮膚からうつって、人から人へと梅毒の感染が拡大していくのです。
梅毒の主な感染原因は性行為です。口や性器など、感染者の粘膜や皮膚を介して感染するため、キスや食器の共有などでうつる可能性もゼロとは言えません。また、妊娠中に梅毒に感染している場合、お腹の中の赤ちゃんが感染する(先天梅毒)可能性もあります。

梅毒の感染者数と流行状況

梅毒の感染者数は、2010年代から増加傾向にあります。2019年、2020年は減少したものの、2021年には再流行しました。2022年にはついに1万人を超え、2023年には1万4906人と、統計上もっとも多い感染者数が報告されており、危険な状況が続いています。なお、年齢別では、男性は20~50代女性は20代の感染者数が多いとされています。

梅毒の症状

梅毒の症状
梅毒に感染してしまった場合、さまざまな症状が出るとともに、その症状は4期に分かれて徐々に進行していきます。具体的には、どのような症状が出るのでしょうか? 気になる梅毒の症状を、期間ごとにご説明します。

第1期の症状(3週間〜)

第1期梅毒の症状は、性器や肛門、口元など、感染した部位への初期硬結(しょきこうけつ)の発生です。初期硬結とは、感染した部分にできる硬いしこりのようなもののことを言います。
症状が現れる部位には男女差があり、男性は性器周辺の皮膚や、亀頭や陰茎、亀頭と陰茎の間にある冠状溝、女性は性器周辺の皮膚や、膣内、大陰唇・小陰唇周辺の皮膚に現れることが多くなっています。また、男女関係なく口、唇、肛門などに症状が現れる場合もあります。見える部分に症状が出るとわかりやすいですが、見えないうえに痛みやかゆみがない場合は見過ごしてしまうこともあるのです。
一般的に初期硬結には、痛みやかゆみはありません。しかし、ほかの性感染症などに同時感染していると、痛みやかゆみが出る場合があり、 初期硬結が発生したあとは、感染した部位を中心として潰瘍(硬性下疳:こうせいげかん)ができます。
これらのしこりは時間が経過することによって自然消滅しますが、決して梅毒が治ったというわけではありません。治療をしないままでいると梅毒トレポネーマが血中にあるまま、次の第2期の症状へと着実に進行してしまいます

第2期の症状(3ヶ月〜)

第2期梅毒の症状は、感染部位を問わず、全身に現れます。頭痛や発熱、倦怠(けんたい)感、のどの痛みや筋肉痛、リンパ腺の腫れといった風邪に似た症状のほかにも、梅毒性脱毛、扁平(へんぺい)コンジローマ、梅毒性バラ疹(しん)、梅毒性粘膜疹などが、手のひらや足の裏などを含め、目に見える症状として発生することがあります。
第2期の症状も第1期の症状と同様に、時間が経過することによって自然消滅しますが、梅毒には適切な治療が必要であり、決して梅毒が治ったというわけではありませんので注意が必要です。
これだけの症状が発生したにも関わらず放置してしまった場合、症状は第3期へと進行してしまいます。

第3期の症状(3年〜)

第3期梅毒の症状は、第2期までとは異なります。症状は皮膚だけにとどまらず、骨や筋肉、肝臓や腎臓、そのほかさまざまな臓器に及び、硬いしこりやゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘍が発生します。なお、ゴム腫が発生した場合は、周りの細胞を破壊していってしまうことにより、部分的な体の欠損に繋がる恐れがあります。

第4期の症状(10年〜)

第4期梅毒の症状は、心臓血管系、中枢神経系が侵されることによって、大動脈瘤(りゅう)形成や大動脈破裂、神経障害といった深刻なものになり、最終的には亡くなる恐れがあります。
梅毒は放置すると命の危険がありますが、現代医療において、適切な治療を受ければ完治できる病気です。近年は梅毒に感染したとしても、第2期までには治療を受ける方が多く、梅毒が原因で亡くなるというケースは少なくなっています。
しかし、無症候性梅毒であった場合にはその名前の通り症状が出ず、長期にわたって感染を放置してしまう可能性もあるため、症状がないから安心とは言えません。 症状がなくとも、不安な点がある場合などは、検査を受けるようにしましょう。

梅毒の検査方法

梅毒の検査方法
梅毒の検査には、どのような方法があるのでしょうか? 梅毒の検査方法である血液検査、病変から直接菌を検出する方法、自宅で受けられる梅毒検査キットについて、種類ごとにご説明します。

血液検査

梅毒の血液検査では、脂質抗原法(RPR)TP抗原法(TPHA)という2つの検査が行われます。脂質抗原法は梅毒の活動性の指標を調べるため、TP抗原法は梅毒に特異的な検査であり、過去の感染の有無も含めて調べるために行われます。なお、過去に梅毒の感染歴がある場合は体の中に梅毒の抗体が残存し続けるため、完治していたとしても、TP抗原法では陽性反応が出ます。

病変から直接菌を検出する方法

病変から直接菌を検出する検査方法(培養検査)としては、腫瘍などの症状がある場合に行われます。腫瘍などの患部から直接病変を採取し、顕微鏡で観察するという検査法です。検体の採取は、多量の梅毒TPが含まれる硬性下疳(性器周辺などの初期病変)や扁平コンジローマ、粘膜疹がある部位をこする、拭うなどして行われます。硬性下疳(性器周辺などの初期病変)や扁平コンジローマ、粘膜疹などの症状が出ている場合に行う検査であり、症状が出ていない場合はこの検査を行うことはできません。

自宅で受けられる梅毒検査キット

病院に行く暇がない、周囲に知られないように検査をしたい、そんな方にとっておすすめの検査方法が、自宅で受けられる梅毒検査キットを用いた検査です。梅毒検査キットはインターネット上でも購入することが可能で、比較的簡単に検査できます。
検査には、梅毒検査キットにあるランセットと呼ばれる採血器具を使用します。ランセットの針で指先を軽く突くと、針を刺したところから血液が出ます。その血液を検査キット付属のろ紙に採取し、検査申込書などと一緒に封筒に入れ、検査機関へ返送します。
購入先によりますが、検査キットの場合、インターネットで購入し、返送する日数を要するため結果が出るまでに1週間ほどかかるでしょう。すぐに結果を知りたい方は、専門の医療機関で検査を受けることをおすすめします。

梅毒の治療

梅毒の治療
梅毒の検査結果が陽性であった場合、治療が必要になります。梅毒の治療は、どのように行われるのでしょうか? 治療方法や治療費、治療期間、注意点について、わかりやすくご説明します。

抗生物質による治療

梅毒の治療には、内服薬や筋肉注射が用いられます。内服薬は、主にペニシリン系の抗生物質を使用し、第1期の梅毒症状であれば2~4週間ほど、第2期の梅毒症状であれば4~8週間ほど、毎日継続して服用します。

治療費と治療期間

梅毒の治療費と治療期間は、受診する医療機関や症状によって異なります。
治療費は、すでに症状がある、検査の結果が陽性である場合は保険診療が適用されることが多くなっています。保険診療が適用された場合は検査代と治療薬代を合わせて数千円程度で済むでしょう。保険診療が適用にならない場合の自由診療では、検査代で7000円前後、治療薬代で1、2万円前後かかる可能性があります。
また、治療期間については、梅毒症状第1期であれば2~4週間、第2期であれば4~8週間の内服薬服用で治る場合が多くなっています。なお、梅毒症状第3期以降の早期神経梅毒であれば内服治療を、後期神経梅毒であればベンジルペニシリンカリウム注射が行われます。いずれも個人差があるため、治療の前に担当医に確認しておくと安心でしょう。

治療における注意点

梅毒治療の注意点としては、感染後一時的に症状が消えた際、治ったと勘違いしてしまうことと、治療中に症状が改善されたからと言って自己判断で治療をやめてしまうことが挙げられます。梅毒は、進行してしまうとその分治療期間が長引く恐れがあります。自己判断で治療をためらったり、やめたりすると、完治しないまま感染を拡大させてしまうこともあるため、医師に完治したと診断されるまで最後まで治療を継続しましょう。また、治療中の性行為は控えるようにしましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ
いかがでしたでしょうか。梅毒は早期発見、早期治療を行うことで、完治する病です。無症状である場合やほかの性感染症を併発している場合もあるため、自己判断で放置することは危険です。感染者数は増加しているため、不安な行為があった場合はもちろん、そうでない場合でも検査を受けることが、自分や周りを守ることに繋がります。検査が陽性であった場合も、医師の指示に従って、完治するまで治療を継続するようにしましょう。

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