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訪問診療をもっと身近に、気楽に【新潟県新潟市 だい歯科訪問クリニック】

 更新日:2023/03/27

訪問診療をもっと身近に、気楽に
訪問診療をもっと身近に、気楽に

さまざまな理由で歯科に通えない人がいる。特に高齢者や要介護者は、通院すること自体に困難を抱えていることも! 知らず知らずのうちに進行してしまう歯周病が、さまざまな疾患の促進に関わっていることはすでに周知されているが、予防やメンテナンスなど、歯科の介入がそうしたすべての人々に行き届いているのだろうか。そこで今、大いに必要性が問われているのが訪問診療の意義。まだまだ専門のクリニックが足りないといわれるなかで奮闘している「だい歯科訪問クリニック」の渡邉院長に話を伺った。

Doctor’s Profile
渡邉 大祐
だい歯科訪問クリニック 院長

日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。前勤務先で培った訪問診療の経験を糧に、2021年、自身のクリニック開院時は訪問診療をコンセプトに設定。ニーズのあるところに必要な医療を届けつつ、まだまだ認知されるべき訪問診療の必要性を体現している。日本摂食嚥下リハビリテーション学会会員。

高齢者の口腔ケアに関する現状をどう見ていらっしゃいますか?

年齢を重ね、口腔環境が悪化しやすい時期に歯科が介入できる機会は、残念ながら減っているケースが多いと感じています。なかでも自宅で介護を受けている高齢者や施設へ入所されている方は、ご家族の付き添いが必要だったり、介護職員さんのフォローがなければ通院はおろか、口腔ケアが後回しになりがちです。口腔環境を整えることの大切さが認知されてきている反面、特に高齢者については手が行き届いていないのが現状であり、課題であると考えています。

高齢化社会の今、より高まる口腔ケアの必要性

改めて伺います。口腔ケアの大切さとはどのようなことでしょうか?

近年、糖尿病、誤嚥性肺炎、心筋梗塞、動脈硬化をはじめ、妊婦さんの早産や低体重児出産、アルツハイマーなど、さまざまな疾患の発症や促進に歯周病菌が関わっていることが明らかにされています。また、口内の衛生状態が悪ければ食事に影響することはもちろん、会話の減少や表情の欠乏など、体に与える影響も少なくありません。
食べる喜びは体と心の健康と結びついています。いくつになっても生活の質(QOL)を下げないための口腔ケアは、日々の積み重ねで培っていくことが何より重要です。

そこで問われるのが、訪問診療の意義ということですね

私がクリニックを構えている新潟県には、訪問診療を専門に行っている歯科はほぼありません。私の場合、以前勤めていた医院が訪問診療に力を入れており、そこでの経験と実情を踏まえたニーズの高さを鑑みて、開院時のコンセプトに訪問診療を掲げました。
もちろん、訪問診療を希望したいときに問い合わせできる窓口はあります。歯科によっては昼休憩や休日など、空いた時間を利用して訪問診療しているところもあります。
しかし、需要はあっても、多くがスピーディーに対応できていないのが現状です。そのため、患者さんは二の足を踏んでしまったり、施設などにいたっては、ただでさえ時間的余裕がないところに口腔ケアまで手が回らないというもどかしさにつながっています。

高齢化社会の今、より高まる口腔ケアの必要性

現状を打破するためにはどうしたらいいと先生はお考えですか?

訪問診療専門の歯科を増やすことは、器材の準備などがあるのですぐには難しいかもしれません。地域によっては、必要な器材はまとめてあるものの、1台しかないので順番待ちといった状況もあるようです。
それ以前に、訪問診療に関する窓口自体を知らない場合もあるので、まずは積極的な告知や具体的な手順を発信していく必要があります。その上で、歯科と行政などが一体となって、ニーズに対して簡潔に動けるシステムづくりを考えることが大切だと思います。

訪問診療は身構えるものではなく、気楽に受けられる

訪問診療は身構えるものではなく、気楽に受けられる

訪問診療を受けられる対象は限られますか?

当クリニックでは、施設から依頼を受け、入所されている高齢者の方を診ることが多いです。ですが、患者さんには在宅で介護を受けている方、身体や精神に障がいのある方、年齢などさまざまです。なかには自宅から出られない、いわゆる引きこもりの学生を診たという事例もあります。

どのようにして訪問診療をお願いしたらいいでしょうか?

基本はHP、または電話での予約をお願いしています。予約状況によっては当日訪問が可能になる場合もあるので、まずは電話での問い合わせでも構いません。規定により、クリニックから半径16km圏内が診療対象地域にはなりますが、自分が対象になるのかどうかわからない場合は気軽にご相談くださればと思います。

それでは具体的な訪問診療の流れについて教えてください

訪問日が決定したら、それまでに保険証やお薬手帳など必要なものを用意してください。治療では、主訴部位の改善を優先して行います。その後は、1カ月に1~2回の定期メンテナンスをおすすめしています。
当クリニックでは、常にドクター1名と衛生士2名の3人体制で訪問を行っているので、複数人を同時進行で見ることも可能です。定期メンテナンスでもこのチームで伺い、器械を使ったクリーニングや歯磨き指導を行っています。
ちなみに訪問診療では、予約や問い合わせをいただく依頼者が施設の管理者やご家族であることがよくあります。そのため、患者さん自身がどこまで介入してほしいか、依頼者との希望レベルに違いが出ることがあります。
当クリニックでは、治療を受けられる患者さん本人の意志を尊重し、まずは患者さんがどこまでの治療を望まれているかをお聞きします。食事量が減っているとか、高齢者の場合は認知レベルの状態など周囲の方への確認が必要なこともありますが、まずは患者さんを主軸として考えをまとめ、治療方針を決めていくというスタンスを取っています。

歯科に通うのと同等の治療が訪問先の環境で受けられるのでしょうか?

歯科で受けられる治療がそのまま自宅で受けられると考えてもらって問題ありません。歯を削る、抜く、型取りをする、かぶせ物を入れる、入れ歯をつくるなど、ほぼすべてです。お口全体は無理ですが、部分的にレントゲンを撮り、その場で現像して患者さんにお見せすることもできます。
訪問先でお借りするものといえば、器材を使うためのコンセント。水は、最低限は水筒に入れて準備していくのですが、お借りする場合もあります。場所はベッドに寝たままでも、車いすに乗ったままでも大丈夫です。ふだん患者さんが過ごす場所に私たちがお邪魔するイメージなので、特別なスペースの確保などは必要なく、「いつものままでいてください」とお伝えしています。

まったく身構えなくていいんですね?

訪問診療のメリットのひとつは、ふだん過ごす場所でリラックスして治療が受けられる点にあります。精神的な障がいのある方にとっては、かなりのストレス緩和になるのではないでしょうか。
たとえば、自閉症のお子さんは環境の変化に敏感ですし、恐怖心が強くてなかなか治療できない方にも訪問診療は有用なツールです。先ほど申し上げたように、患者さんの希望を主軸に、まずはコミュニケーションを取って信頼関係を築くことに努めます。
私たちとしては、歯医者ではなく、知り合いが家に来たというくらいの感覚で受け入れてもらえたらと思っています。訪問診療のハードルは決して高くありません。気楽に構えてもらうことが大切なのです。

訪問診療の料金はどれくらいですか?

料金は通院のケースより若干高くなります。患者さんの保健負担割合によって変わりますが、院内で同じ治療を受ける場合に比べ、2,000円前後の費用が上乗せされると考えてもらったらよいと思います。

訪問診療は身構えるものではなく、気楽に受けられる

訪問診療のメリットと認知拡大に向けて

訪問診療のメリットと認知拡大に向けて

訪問診療を受けられた方の実際の声を聞かせてください

やはり通院困難な方が多いので、「来てくれて助かる」というお声をよくいただきます。障がい者タクシーを呼ぶ手間が省けるなど、周囲の方の負担減を考えると、また違ったメリットの大きさを感じます。
ほかには、医院と同じ治療が受けられる点も大きいのではないでしょうか。訪問診療を前提に専用器材を用意した当クリニックの特色は、治療できる範囲の広さでもあります。自宅に来られることに抵抗があるという話を聞いたこともありますが、それよりもメリットを感じてくださる患者さんのほうが多いですね。

訪問診療のやりがいを、先生はどんなところに感じていらっしゃいますか?

入れ歯の調整をした患者さんのご家族から、「最近よく食べるようになった」というような話を聞いたり、「あきらめていたところに出向いてもらえるのでありがたい」といった、感謝の言葉をダイレクトに聞けたりするところです。
訪問診療では、患者さんの生活背景を汲み取ることも重要な要素で、それに合わせて治療スタイルや訪問の頻度を変える柔軟性を備えています。患者さんと歩幅を合わせ、段階を踏みながら改善の状況を直接目にすることができるのも大きなやりがいですね。

訪問診療のメリットと認知拡大に向けて

歯科医師としての仕事の幅広さも感じられます

以前、施設から依頼があり、末期がんの患者さんの入れ歯をつくったことがありました。少しでも自分の口で食べてもらって喜んでもらいたいという施設側の希望で、通常の半分の期間で入れ歯をつくり終え、届けたケースがあります。
その際、私たちも食事されている様子を拝見でき、うれしさを覚えました。人生の最後まで、その人のなかで少しでも幸せを感じてもらえたら、それも歯科のやれる仕事のひとつかなと思っています。

ますます訪問診療の有用性を感じますね

口腔環境が健康寿命に大きく関わるという認知は確かに高まっています。しかし、介護をされている方は、特に日々の食事や排せつの介助に加えてお口のケアまで費やす時間がないのが現状です。だからこそ、われわれのような歯科が介入し、「お口のケアだけでもしますよ」と伝えていくべきだと思っています。
そういった背景を踏まえ、今後予定しているのは、施設職員の方々に向けた口腔ケアセミナーの実施です。歯磨きのやり方もそうですし、どういったところから全身の疾患につながるのかなど、歯科の必要性をさらに広めていけたらと思っています。
歯科医全体としても、訪問診療の体制づくりをもっと推し進め、多くの方に治療とメンテナンスの手が行き届くことを願っています。

編集部まとめ

誠実に、ひたむきに、必要なところに必要な医療を届けている渡邉院長の言葉は、とても優しく確信に満ちていました。社会的弱者と支援を結びつけることが課題でもある現代、住み慣れた地域や、身近なかかりつけ医が担う役割は小さくありません。実際、話を伺って訪問診療に対して感じていたハードルが下がった今、まずはそれが必要とされる多くの方々に積極的に利用していただきたいと願うばかりです。

だい歯科訪問クリニック

医院名

だい歯科訪問クリニック

診療内容

訪問診療 一般歯科 小児歯科 ホワイトニング など

所在地

新潟県新潟市中央区上所中3-14-13
上所メディカルセンター2F

アクセス

JR越後線「白山」駅より車で7分

この記事の監修歯科医師