白いクラウンが保険適用になることも。治療の種類とメリット・デメリット【神奈川県横浜市 木村歯科医院】
虫歯の治療でクラウン(かぶせ物)が必要になったら、できれば見た目に違和感のある「銀歯」ではなく、目立たない白い歯に仕上げたいところ。白いクラウンは自費治療になって治療費が高くなるのではと思ってしまいがちだが、実は白い仕上げのクラウン治療も、保険適用で自己負担が少なく済むことがある。今回は、木村歯科医院の木村豊院長に、クラウン治療の保険適用範囲と、使用するクラウンの種類によるメリット・デメリットを解説していただいた。
木村 豊
木村歯科医院 院長
鶴見大学歯学部卒業後、自治医科大学医学部 歯科口腔外科学講座へ入局。自治医科大学大宮医療センター(現・さいたま医療センター)歯科口腔外科外来医局長を経て平成12年8月に「木村歯科医院」を開院した。日本口腔外科学会所属。
白い仕上げのクラウン治療には保険適用できるものも!
最初に、クラウン治療とはどういうものか教えてください。
神経を抜いたり歯の欠損が大きかったりする場合には、人工の歯である差し歯を入れるという方法がありますが、最近は、コアと呼ばれる土台を形成し人工の歯を被せる方法が一般的になっています。その人工の被せ物を、クラウン(冠)といいます。クラウンの材料をどうするかによって数種類の治療方法があります。
保険が適用されるクラウン治療には、どのようなものがありますか?
クラウン治療の材質選びは大事です。まず、「全部鋳造冠」はいわゆる銀歯です。昔から保険適用の治療に使われています。こちらは、一般的に12%金パラジウム合金という金属を使用します。金属ですので強度があり奥歯には適しているといわれています。しかし、こちらは白い歯には仕上がりません。美しく白い歯に仕上げるには自費治療しかないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は白い歯に仕上げる治療にも保険が適用するものがあります。
そうなんですか? ぜひそれは知りたいですね?
「レジン前装金属冠」は、金属で歯牙形態をつくるのですが、外から見える部分にはレジンというプラスチックを施すものです。これにより、見た目は自分の歯と違和感なく白く仕上がります。また「硬質レジンジャケット冠」というものは、硬質レジンという歯科用のプラスチックで歯牙全体を作成したものです。違和感のない色合いで、金属アレルギーの方にも適しています。
最近保険適用になったものとしては、「CAD/CAM冠」という治療方法もあります。こちらは、まず歯型をとりコンピューターソフトにより立体的に歯牙形態を設計して作成する方法です。治療部位の制限がありますが、「CAD/CAM冠」の場合はハイブリッドレジンが保険適用となります。
歯の見た目は、人の表情の上で大切なことですので、前歯や見える部分の歯の場合は、ある程度保険適用で白い歯を入れることができるようになっています。
次に、自由診療扱いになるクラウン治療について教えていただけますか?
金属冠に陶材(セラミック)を焼き付けて歯牙形態を付与した「陶材焼き付け鋳造冠」があります。メタルボンドとも呼ばれているものです。見た目はセラミックですので、硬質レジンよりも輝きに優れ、自然な歯のような仕上がりになります。そして何より丈夫です。多少高価な治療になってしまいますが、審美性を追求する方がご利用になることが多いのが、オールセラミック冠です。こちらは歯牙形態全体を陶材(セラミック)でつくるので、メタルボンドに比べ自然な輝きと透光性を実現しています。
改めて保険診療のメリットとデメリットについてご説明ください。
保険適用の範囲内で治療する最大のメリットは、やはり費用を抑えられるということです。虫歯は複数を一緒に治療するケースが多いので、1本あたり3,000円~5,000円程度の自己負担で済むのはやはり魅力です。
もちろん、デメリットもあります。保険診療は適用される条件が決まっています。たとえば、前歯の治療では、「レジン前装金属冠」や「硬質レジンジャケット冠」が適用になります。「硬質レジンジャケット冠」のほうが金属を使わないので、金属アレルギーの方には適していますが、ただ奥歯の咬合力に耐えられるほどの強度がないため、保険適応は前歯、犬歯、小臼歯に限られます。また、審美性や機能性に優れたセラミックやジルコニアなどの素材は自由診療になりますし、昔から噛み心地の面から重用されている金歯などの貴金属製鋳造冠も自由診療になります。歯科的には、白い歯、美しい歯だけが正解ではありません。奥歯ではやはり丈夫な鋳造冠が適していたりします。どの歯をどの方法で治療するかは、みなさんの希望を歯科医師に伝え、きちんと検討することをおすすめします。
なるほど。保険適用でも白い歯に仕上げることが可能ということがわかりました。
ただし、患歯の状態や残っている周辺の歯の状況などにより条件がありますので、必ずしも望みどおりの治療に保険が適用されるわけではないというのを注意して下さい。
クラウン治療。それぞれのメリットとデメリットは?
クラウンに使われる材料の、それぞれのメリットとデメリットをお教えいただきたいのですが?
もっとも一般的な「銀歯」のメリットは、特別な貴金属を使わなければ保険適用になるということです。また、治療に使用する材料のなかで強度があり、力を入れて噛むことに適しています。歯科的な観点からは、金属製のクラウンによる治療のほうが、歯を削る部分が少なくても済む場合があるというもメリットのひとつです。デメリットは、やはり見た目ですよね。口を開ける際に見えることがあり、金属アレルギーの症状を発症する可能性もあります。また銀歯に関してはごく微量の磁力が出ているのでプラーク(歯垢)を引き寄せるといわれています。ですので、どうしても銀歯(金属)が虫歯や歯周病の再発や進行の原因になっていると考えている先生もいらっしゃいます。
銀歯以外についてはいかがでしょうか?
先ずは、「硬質レジンジャケット冠」ですが、メリットは白い歯であるということ。自分の歯との違和感がなく、人工の歯だと銀歯よりは気づかれにくいという点が魅力です。デメリットとしては、材質がやわらかいのと水分を吸収する性格があるため、長く使っていると劣化するという点です。摩耗や破折、異臭、変色等が生じ易いので、余り一般的には使用していないと思います。次に「硬質レジン前装冠」は、見えずらい部分に金属を使用しているので「硬質レジンジャケット冠」よりも破折、すり減りが起き難いです。ただどうしてもプラスチックなので変色、異臭の原因にはなり易いです。ただ前述のように金属を使用しているので、金属アレルギーの原因になる可能性はあります。一般的に保険治療にて前歯に被せるのは、この「硬質レジン前装冠」が大多数です。その「硬質レジン」に「セラミック」を混ぜ込んだ材料が「ハイブリットレジン」です。メリットは、白い歯であることに加え、「硬質レジン」に比べて強度に優れているということ。磁力が発生しませんのでプラークがつきにくく、ついてもお手入れで落とすことが簡単です。治療部分から虫歯が進行しづらいというメリットもあります。自由診療で使われる材料ですが、要件を持たせば、「CAD/CAM冠」治療では保険適用になる場合もあります。デメリットは、プラスチックであるレジンが含まれますので、多少の経年劣化があるということでしょうか。
やはり、最も優れているのはセラミックということになりますか?
メリットとデメリットを知った上で、自分に合う治療と材料を決定することが大切ですね。
そのとおりです。歯冠修復(さし歯)は、材料によってメリットもデメリットもあります。みなさん自身が納得する治療を主体的に選択すること、選択できることが大事だと考えます。
信頼できる歯科医を選んでイメージ通りの治療を
いろいろな材料があり、保険適用でも白い歯に仕上げることができるとわかりましたが、治療を受ける上で留意すべき点はありますか?
歯科医との話し合いが大切です。問診票を書く際に、保険適用の範囲か自由診療を選択させる医院が多いと思います。でもそれは、あくまで目安ですよ。ご自身が治療で何を大事にしたいかについては、医師とのコミュニケーションが大切です。しっかりと丁寧なカウンセリングをしてくれる歯科医に相談することが大事です。
カウンセリングの際に、確認しておいたほうがいいことはありますか?
まず、自分がどのような仕上げにしたいかを明確に伝えることです。最適な治療は一人ひとり違います。費用を重視する方もいれば審美性にこだわる方もいる。自分がどの程度まで費用を覚悟していて、どのような仕上げを望んでいるかをしっかり伝えることが必要です。そういう話をしっかりと引き出してくれ、話を親身に聞いてくれる歯科医師が信頼できます。
なるほど。ほかにも重要なことはありますか?
歯科医は、治療が終わるまで何度か足を運ぶことになります。また、思い通りに治療が終わっても、メンテナンスや定期検診で経過を見てもらう必要があります。ある程度長いスパンの付き合いになるので、通いやすい場所にあること、歯科医師との相性がよいことも意外に重要です。
設備についてもチェックしたほうがいいでしょう。ぜひ、気軽に医師に尋ねてみてください。
白い歯の治療を諦めず、伴走してくれる歯科医と歩む
歯は一生のもの。虫歯にならないことが大事ですが、治療が必要になった場合でも、できるだけ美しく仕上げたいものです。それが、大きく口を開けて笑うことにつながり、自信あふれる人生につながります。治療が必要な歯には、どのような材料を使った治療が可能なのか、それはどの程度の費用で実現するのか、それを直球で聞くことができ、的確な答えを出してくれる歯科医を選ぶことが何よりも重要です。歯科治療は日々進化しています。カウンセリングの際に多くの情報をやりとりし、治療中も、その後も、長く付き合える歯科医を探したいものです。
医院名
木村歯科医院
診療内容
歯科一般 歯周病治療 小児歯科 口腔外科治療
所在地
神奈川県横浜市磯子区洋光台1-2-5
アクセス
JR京浜東北線 洋光台駅 徒歩10分