「アルツハイマー型認知症の寿命」はどんな要因に影響を受ける?【医師監修】
公開日:2025/11/20

診断後の生存期間は、診断時の年齢や重症度、併存疾患の有無などにより大きく異なります。軽度認知症の段階で診断された場合、おおむね8〜12年の平均生存期間が報告されていますが、個人差が大きいことを理解しておく必要があります。適切な管理とケアにより、生存期間の延長と生活の質の向上が期待できます。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
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浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
アルツハイマー型認知症と寿命の関係
アルツハイマー型認知症の診断を受けることは、患者さんとご家族にとって将来への不安をもたらします。寿命への影響について正確な情報を持つことは重要です。平均的な生存期間と進行パターン
アルツハイマー型認知症の診断後の平均生存期間は、さまざまな要因により大きく異なりますが、一般的には診断時の年齢や重症度によって左右されます。軽度認知症の段階で診断された場合、平均生存期間はおおむね8〜12年と報告されていますが、年齢や体調、合併症によって大きく個人差があります。 病気の進行パターンも個人により大きく異なります。一般的には軽度、中等度、重度の3段階に分けて進行が評価されますが、各段階の持続期間はさまざまです。軽度の段階は約2〜4年、中等度は約2〜10年、重度は約1〜3年とされていますが、これも大きな個人差があります。 進行速度に影響する要因として、年齢が重要です。若い年齢で発症した場合、一般的に進行が早い傾向があります。また、教育歴や社会的活動の程度、身体的健康状態なども進行速度に影響します。 併存疾患の有無も重要な要因です。糖尿病、心疾患、脳血管疾患などの血管系疾患を持つ方では、進行が早くなる傾向があります。逆に、これらの疾患を適切に管理している方では、進行が遅くなる可能性があります。死因と終末期の特徴
アルツハイマー型認知症の方の死因は、病気の進行段階により変化します。軽度から中等度の段階では、心疾患や脳血管疾患、がんなどの他の疾患が死因となることが多く、認知症そのものが直接の死因となることは少ないです。 重度になると、認知症に関連した合併症が主要な死因となります。頻度が高いのは肺炎で、嚥下機能の低下により食べ物や唾液が気道に入ることで起こる誤嚥性肺炎が特に問題となります。 嚥下障害は進行期の重要な問題です。食べ物や水分を安全に飲み込むことができなくなり、栄養状態の悪化や脱水を引き起こします。また、飲み込みが難しくなることで、むせやすくなったり肺炎を起こしやすくなったりすることがあります。 感染症への抵抗力の低下もあります。尿路感染症や皮膚感染症などが起こりやすくなり、これらが重篤化することがあります。また、体力の低下により感染症からの回復が困難になります。 栄養状態の悪化も進行期の特徴です。食事摂取量の減少、嚥下障害、消化吸収機能の低下により、体重減少や栄養失調が進行します。これにより免疫機能がさらに低下し、さまざまな合併症のリスクが高まります。まとめ
アルツハイマー型認知症は、患者さんとご家族の人生に大きな影響を与える疾患です。しかし、適切な理解と支援により、尊厳を保ちながら、その人らしい生活を続けることが可能です。早期発見・早期対応により症状の進行を遅らせ、質の高いケアにより生活の質を維持することで、患者さんとご家族がより良い時間を過ごせるよう支援していくことが重要です。医療従事者、家族、地域が連携し、包括的な支援体制を構築し、社会全体でサポートしていく必要があります。参考文献