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「アルツハイマー型認知症の主な3つの原因」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/11/18
アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症の原因は複雑で、現在も研究が続けられています。脳内でのアミロイドβやタウ蛋白の異常な蓄積、遺伝的要因、生活習慣など、さまざまな要因が関与しています。これらの要因を理解することで、予防や進行抑制の可能性を探ることができます。

伊藤 たえ

監修医師
伊藤 たえ(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症の原因は複雑で、現在も研究が続けられていますが、いくつかの重要な要因が明らかになっています。

脳内での病理学的変化

アルツハイマー型認知症の根本的な原因は、脳内にアミロイドβという異常なタンパク質が蓄積し、さらにタウ蛋白が神経細胞内で変化することにより、神経細胞が障害される点にあります。神経原線維変化は神経細胞内の輸送システムを破綻させ、最終的に神経細胞の死を招きます。 神経細胞の脱落と脳萎縮も重要な変化で、神経細胞が次々と死滅し、脳全体の容積が減少します。特に、記憶に重要な海馬や、判断・思考に関わる前頭葉の萎縮が著明に見られます。 神経伝達物質の減少も症状の発現に大きく関与しています。特に、記憶や学習に重要なアセチルコリンという神経伝達物質の減少が著しく、これが記憶障害の主要な原因となっています。現在使用されている治療薬の多くは、このアセチルコリンの減少を補うことを目的としています。

遺伝的要因と家族歴

アルツハイマー型認知症には遺伝的要因も関与していますが、その程度は発症年齢により大きく異なります。65歳未満で発症する若年性アルツハイマー型認知症と、65歳以降に発症する一般的なアルツハイマー型認知症では、遺伝的影響の強さが異なります。 若年性アルツハイマー型認知症では、遺伝的要因の影響が強く、約10%の症例で明らかな遺伝的原因が特定されています。遺伝子変異は常染色体優性遺伝の形式をとるため、変異を持つ親から子どもに50%の確率で遺伝します。ただし、これらの明確な遺伝性アルツハイマー型認知症は全体の5%未満であり、大部分は散発性のものです。 一般的な高齢発症のアルツハイマー型認知症では、遺伝的素因はあるものの、単一の遺伝子で決まるものではありません。重要な遺伝的リスク因子として、APOE遺伝子のε4型が知られています。 家族歴も重要なリスク因子です。両親や兄弟姉妹にアルツハイマー型認知症の方がいる場合、発症リスクは約2〜3倍高くなるとされています。しかし、これは遺伝的要因だけでなく、共通の生活環境や生活習慣の影響も含んでいる可能性があります。

環境要因と生活習慣

遺伝的要因以外にも、さまざまな環境要因や生活習慣がアルツハイマー型認知症の発症リスクに影響することが明らかになっています。 生活習慣病はアルツハイマー型認知症の重要なリスク因子です。糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などはいずれも発症リスクを高めることが知られています。特に、中年期のこれらの疾患は、高齢期の認知症発症リスクを大きく上昇させます。 喫煙は認知症発症リスクを約50%上昇させることが知られています。タバコに含まれる有害物質は血管を損傷し、脳への酸素供給を低下させます。また、喫煙は酸化ストレスを増加させ、脳の神経細胞に直接的な損傷を与える可能性があります。 過度の飲酒も認知症のリスク因子ですが、一部の研究で適度な飲酒がリスクを下げる可能性が報告されていますが、因果関係は明らかでなく、飲酒を予防目的で推奨することはできません。ただし、適度の定義は厳格で、日本酒換算で1日1合程度とされています。

まとめ

アルツハイマー型認知症は、患者さんとご家族の人生に大きな影響を与える疾患です。しかし、適切な理解と支援により、尊厳を保ちながら、その人らしい生活を続けることが可能です。早期発見・早期対応により症状の進行を遅らせ、質の高いケアにより生活の質を維持することで、患者さんとご家族がより良い時間を過ごせるよう支援していくことが重要です。医療従事者、家族、地域が連携し、包括的な支援体制を構築し、社会全体でサポートしていく必要があります。

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