「アルツハイマー型認知症の看護」における家族支援はどんな支援があるの?【医師監修】
公開日:2025/11/21

家族への支援は、患者さんの生活の質を向上させる重要な要素です。家族が病気について正しい知識を持ち、適切な対応方法を理解することで、より良いケアが可能になります。介護負担の評価と軽減、役割分担の調整、心理的サポートなど、家族が無理なく介護を続けられる体制を整えることが大切です。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
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浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
アルツハイマー型認知症の看護における家族支援
家族への支援は、アルツハイマー型認知症の看護において欠かすことのできない重要な要素です。家族の理解とサポートにより、患者さんの生活の質が大きく向上します。家族教育と情報提供
家族が認知症について正しい知識を持つことは、適切なケアの基盤となります。病気の特徴、症状の変化、対応方法について、わかりやすく説明することが重要です。 認知症の進行過程について説明し、現在の状況と今後予想される変化を家族と共有します。ただし、進行には個人差があることも併せて説明し、過度な不安を与えないよう配慮します。 症状への対応方法を具体的に説明します。記憶障害や見当識障害に対する日常生活での工夫、行動・心理症状への対応法などを、実際の場面を想定して説明します。また、危険な状況への対処法も含めて指導します。 家族自身のケアも大切です。介護者の健康管理、ストレス対処法、休息の取り方などについてアドバイスし、家族が燃え尽きることを防ぎます。介護負担の軽減と支援体制
家族の介護負担を軽減することは、継続的なケアの提供において重要です。適切な支援により、家族が無理なく介護を続けられる体制を整えます。 介護負担の評価を定期的に行います。介護負担感尺度などの標準化されたツールを用いて、家族の負担の程度を客観的に評価し、必要な支援を計画します。 役割分担の調整を支援し、主介護者に負担が集中しないよう家族内での役割分担や、専門サービスの活用により、負担を分散します。心理的サポートでは、介護に伴う悲しみ、怒り、罪悪感などの複雑な感情を理解し、家族の気持ちに寄り添います。必要に応じて、専門のカウンセラーへの紹介も行います。 緊急時の対応体制では、患者さんの急変や介護者の体調不良などの緊急事態に対応できる体制を関係機関と連携して構築します。 将来計画の相談においては、病気の進行に伴う生活の変化、施設入所の検討、終末期のケアについて、家族と一緒に考え、意思決定を支援します。まとめ
アルツハイマー型認知症は、患者さんとご家族の人生に大きな影響を与える疾患です。しかし、適切な理解と支援により、尊厳を保ちながら、その人らしい生活を続けることが可能です。早期発見・早期対応により症状の進行を遅らせ、質の高いケアにより生活の質を維持することで、患者さんとご家族がより良い時間を過ごせるよう支援していくことが重要です。医療従事者、家族、地域が連携し、包括的な支援体制を構築し、社会全体でサポートしていく必要があります。参考文献