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「くも膜下出血」と「めまい」の関係をご存じですか? 脳幹・小脳への影響を医師が解説

 公開日:2025/12/07
くも膜下出血に伴うめまいの病態生理

くも膜下出血ではめまいが生じることがあり、その背景には脳幹や小脳への影響、頭蓋内圧の上昇による平衡感覚の障害など、複数のメカニズムが関与しています。ここではめまいが発生する仕組みと、それが示す重要な意味について詳しく解説します。

伊藤 たえ

監修医師
伊藤 たえ(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。

くも膜下出血に伴うめまいの病態生理

くも膜下出血ではめまいが生じることがあり、その背景には複数のメカニズムが関与しています。めまいは重要な症状の一つです。

脳幹部への影響とめまいの発生

めまいは、体のバランスを保つはたらきをしている脳幹(のうかん)や小脳(しょうのう)の機能が障害されることで起こります。くも膜下出血では、出血した血液が脳の底(脳底部)にたまり、脳幹や小脳を圧迫することがあります。また、出血後に起こる血管攣縮(けっかんれんしゅく)という現象で、脳幹への血流が一時的に減少し、平衡感覚をつかさどる中枢が障害を受けてめまいが発生することもあります。 特に、椎骨脳底動脈系(脳幹や小脳に血液を送る動脈)にできた動脈瘤が破裂すると、出血が直接脳幹を圧迫し、めまいが最初の症状として現れることもあります。 めまいには、周囲がぐるぐる回る「回転性めまい」と、体がふわふわ浮くように感じる「浮動性めまい」があり、症状のタイプは人によって異なります。さらに、物が二重に見える、ろれつが回らない、歩くとふらつくといった症状を伴う場合は、脳幹の障害による脳卒中の可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。

頭蓋内圧亢進による平衡感覚の障害

くも膜下出血によって頭蓋内圧が上昇すると、脳全体が圧迫されて正常な機能が妨げられます。特に小脳や前庭神経核といった平衡感覚に関わる部位が圧迫されると、めまいや立ちくらみが生じることがあります。頭蓋内圧が急激に高まると、脳ヘルニアと呼ばれる状態に進行することがあり、これは脳組織が頭蓋内の狭い隙間に押し込まれて重篤な神経障害を引き起こす緊急事態です。 脳ヘルニアは意識障害や瞳孔の異常を伴い、極めて危険な徴候です。また、頭蓋内圧の上昇によって視神経が圧迫されると視野障害も加わり、視覚と平衡感覚の両方が乱れることでめまいが増強されることがあります。

まとめ

くも膜下出血は突然発症する重篤な疾患であり、激しい頭痛、めまい、意識障害といった症状が特徴的です。痛みの性質や発症様式、随伴症状を正しく理解することで、早期発見と迅速な治療開始が可能になります。警告頭痛やいつもと異なる頭痛、めまいを伴う強い頭痛を経験した際には、躊躇せず脳神経外科や神経内科を受診し、専門の医師の診察と画像検査を受けることが大切です。

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