医療現場では、頭痛の発症様式や身体所見から診断の手がかりを得ています。突然始まる雷鳴頭痛の重要性や、髄膜刺激徴候と呼ばれる身体診察の所見について詳しく解説します。医師がどのように評価を進めるのか、その臨床的な視点を理解しましょう。
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浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
くも膜下出血の頭痛に関する臨床的特徴
医療現場での評価基準や診断の流れを知ることで、頭痛の重大性を判断できます。医師は複数の情報を総合して診断を行います。
発症様式と時間経過の重要性
くも膜下出血の診断において、頭痛の発症様式は極めて重要な情報です。医師は「頭痛がいつ、どのように始まったか」を詳しく問診します。
痛みが数秒から数分で強度が高まる「雷鳴頭痛」は、くも膜下出血の特徴的な症状の一つです。一方、徐々に痛みが強まっていく経過であれば、くも膜下出血の可能性は低くなります。ただし、小さな動脈瘤からの少量出血では比較的軽い頭痛として始まることもあり、その後に本格的な大出血が続くこともあるため、軽度の頭痛でも油断はできません。
身体診察で見られる髄膜刺激徴候
くも膜下出血が疑われる患者さんに対しては、身体診察で髄膜刺激の有無を確認します。代表的な所見は項部硬直で、患者さんの頭を前に曲げようとすると首の筋肉が緊張して抵抗があり、顎を胸につけることができません。これはくも膜下腔に広がった血液が脊髄を覆う髄膜を刺激しているためです。
ケルニッヒ徴候やブルジンスキー徴候といった特殊な診察手技も用いられ、髄膜刺激が強いほどこれらの徴候が陽性となります。ただし、発症直後や意識障害が深い場合には項部硬直が明らかでないこともあり、身体所見だけで診断を否定することはできません。
まとめ
くも膜下出血は突然発症する重篤な疾患であり、激しい頭痛、めまい、意識障害といった症状が特徴的です。痛みの性質や発症様式、随伴症状を正しく理解することで、早期発見と迅速な治療開始が可能になります。警告頭痛やいつもと異なる頭痛、めまいを伴う強い頭痛を経験した際には、躊躇せず脳神経外科や神経内科を受診し、専門の医師の診察と画像検査を受けることが大切です。