生命維持に欠かせない臓器の1つである肝臓の機能が失われることを「肝不全」といいます。
肝不全は、ウイルス感染・自己免疫疾患・アルコール摂取などが原因で引き起こされることが多いです。
急激に進行すれば、命に関わる恐れもある病気ですので、定期的な健康診断を受けることも重要です。
今回は、肝不全の特徴・肝硬変との違いや症状・原因・治療・食事療法・末期症状・余命について詳しく解説していきます。
※この記事はMedical DOCにて『「肝不全」の初期症状・末期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
肝不全の治療
肝不全の診断方法を教えてください。
急性肝不全の場合、風邪のような症状・倦怠感・食欲不振などの症状が現れ、8週間以内に肝機能が著しく低下します。特に、見当識障害・異常行動・羽ばたき振戦に加え、血液凝固因子が一定の値を下回った場合に確定診断となります。診断に加えて、原因を特定するための検査も重要です。一方、慢性肝不全の診断には、血液検査・腹部エコー検査・肝臓の繊維を確認するための肝生検・肝臓の硬さを確認するためのファイブロスキャンなどを行います。その他、腹水貯留の有無や肝性脳症の有無などを確認し、総合的に診断します。
どのような治療を行いますか?
肝不全の治療では、原因に合わせた治療を行うことが必要です。ウイルス肝炎が原因となっている場合には抗ウイルス薬を投与したり、自己免疫疾患が原因の場合にはステロイドを投与したりすることが一般的です。いずれにしても、肝臓への血流を良くするために安静を保つことが重要です。血圧の低下や呼吸状態の悪化などがみられる場合には、集中治療室で注意深く全身状態を管理することになるでしょう。一方、慢性肝不全では原因の治療とともに症状に応じた治療も行われます。例えば、腹水や浮腫がみられる場合には低アルブミン血症の治療が行われます。肝機能の低下によって不足したビタミンやミネラルなどを補うことが必要です。肝不全の改善が見込めない場合には、肝移植の適用となるケースもあります。
肝不全の食事療法について教えてください。
肝臓の機能が低下している場合には、バランスの良い食事を心がけるようにしましょう。また、食物繊維や消化しやすい食べ物を取り入れることも大切です。また、肝臓に負担をかける恐れがあるため禁酒することをおすすめします。その他、浮腫が強い場合には塩分を控え、水分を制限することもあります。食道静脈瘤がある場合には、刺激に強い食べ物や硬い食べ物を避けるようにしてください。肝不全では、患者さんの症状に合った食事療法を行う必要があります。かかりつけ医の指示に従いましょう。
編集部まとめ
今回は、肝臓の機能が低下し、黄疸や腹水といった症状が現れる「肝不全」について解説しました。
肝不全は、自覚症状が現れた頃には病気がかなり進行していることが多いです。また、原因も様々ですので、ご自身で発症初期に気付くことは困難といえるでしょう。
病気が進行してしまえば、肝性脳症や食道静脈瘤などの合併症が引き起こされることもあります。
急性肝不全は、風邪のような症状・倦怠感・食欲不振などから始まることもあります。
体調に少しでも違和感を覚えるようであれば、無理をせずに様子をみることが大切です。
また、定期的に検査を受け、健康を維持していくことも重要です。肝不全に限った話ではありませんが、日頃からバランスの良い食事や規則正しい生活を心がけるようにしましょう。