「腹圧性尿失禁を改善」するトレーニング法をご存じですか?【医師監修】

咳やくしゃみをした瞬間、無意識に尿が漏れてしまう「腹圧性尿失禁」とはどのような病気なのでしょうか。詳しく解説していきます。
腹圧性尿失禁は、骨盤底筋の緩みにより引き起こされます。その名の通り、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまう疾患です。
また、腹圧性尿失禁は多くの女性が経験している失禁でもあります。女性特有の骨盤構造や出産歴などが発症に関係しています。
今回は、腹圧性尿失禁の治療方法・トレーニングについて詳しくみていきましょう。
※この記事はMedical DOCにて『「腹圧性尿失禁」とは?尿漏れの原因やトレーニング法を医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
腹圧性尿失禁の診断と治療
どのような検査を行うのでしょうか?
以下は、尿失禁の診断に用いられる検査です。
- 検尿
膀胱炎などの尿路感染症によって尿失禁が引き起こされることもあります。そのため、検尿で尿路感染症との鑑別を行うことが必要です。
- パッドテスト
水分を摂取しパッドをつけた状態で腹圧のかかる動作を行い尿失禁の量を確認します。
- チェーン膀胱造影検査
チェーン付きカテーテルを膀胱内に挿入し造影剤を注入して行うレントゲン検査です。この検査により膀胱や尿道の形や角度を調べます。
- 尿流動態検査
尿流動態検査は膀胱に生理食塩水を注入して行う検査です。尿が溜まった時の知覚や排尿時の膀胱の動きを確認します。
これらの検査は必ず行うわけではなく必要に応じて検討します。
治療方法を教えてください。
また、肥満が原因で腹圧性尿失禁が引き起こされている場合には減量を行うことも必要です。
骨盤底筋訓練・薬物療法・減量だけでは改善がみられない場合には手術の適用となります。
手術することもあるのでしょうか?
尿道スリング手術には以下の2種類があります。
- TVT手術
重症度が高い尿失禁に用いられる手術です。主に尿漏れの量が多い人や再手術の人に適用されます。この方法では下腹部2か所と膣1か所を切開し、尿道の裏側に幅1cmのポリプロピレン製テープをU字に通して尿道を補強します。傷を最小限に抑えられ、術後の痛みも軽く済むのが特徴です。
また、再発率が低く、高い改善効果が期待できます。しかし、血管・膀胱・腸などの組織を傷つけてしまうリスクが高く、排尿障害などの合併症を引き起こす可能性もあります。
- TOT手術
TOT手術は、膣1か所と両内股の付け根の計3か所を切開して行う手術です。TVT手術同様に幅1cmのポリプロピレン製テープを用いて尿道を支えますが、こちらの手術ではV字にテープを通します。U字にテープを通すTVT手術に比べ、太い血管や腸を傷つけるリスクが低いことなどが特徴です。
こちらの手術は、軽度の尿失禁に適用されます。比較的安全な術式ではありますが、TVT手術同様に排尿障害や骨盤痛などの合併症が引き起こされることもあります。
どちらの手術も30分~60分程度、入院日数は5日程度です。腹圧性尿失禁の程度・膀胱機能・尿道機能などに合わせた手術を慎重に選択します。
腹圧性尿失禁を改善するトレーニングについて教えてください。
もう1つは、仰向けに寝て膝を立てた状態からおしりを持ち上げる運動です。おしりを持ち上げる時に膣・尿道・肛門のあたりに力を入れるようにしましょう。5回以上繰り返すと効果的です。どちらも比較的簡単に実践できるトレーニングです。
効果は1か月〜3か月程度で実感できる人が多いようです。毎日少しずつでも続けるように意識してみてください。
編集部まとめ
咳をした時や笑った時に尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁は、多くの女性が経験している病気のひとつです。
お腹に力を入れただけで無意識に尿漏れが引き起こされるため、日常生活でお悩みの女性も多いことでしょう。
しかし、腹圧性尿失禁は治療により改善が期待できる病気ですのでご安心ください。特に、骨盤底筋を鍛えるトレーニングは有効です。
自宅でも簡単に実践できるので、ぜひ積極的に行ってみてください。
また、肥満や喫煙が腹圧性尿失禁を悪化させてしまうことがあります。減量や禁煙も心がけるようにしましょう。