「脊髄硬膜外膿瘍」はどうやって診断される?治療法についても解説!【医師監修】

今回は、術後合併症のひとつである「脊髄硬膜外膿瘍(せきずいこうまくがいのうよう)」について解説します。
脊髄硬膜外膿瘍とは、脊髄を取り巻く一番外側の膜である硬膜と脊椎の間に膿が溜まり、脊髄を圧迫する病気です。
脊髄が圧迫されることで手足のしびれや感覚異常などの神経症状・歩きにくいなどの運動障害が現れます。
初期は背中や腰の痛み・発熱といった炎症症状で始まることが多いため、受診や治療開始が遅れてしまうケースもあります。
治療が遅れると、敗血症や髄膜炎を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもある危険な病気ですので注意しましょう。
それでは、検査・治療方法・治療期間について確認していきましょう。
※この記事はMedical DOCにて『「脊髄硬膜外膿瘍」を医師が解説!放置すれば後遺症が残る危険も!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
脊髄硬膜外膿瘍の診断と治療
どのような検査で診断されるのでしょうか?
そのため、まずは手術歴・治療歴・既往歴などの問診を行い、総合的に判断していきます。痛みや発熱などの炎症反応がみられる場合には血液検査を行い、白血球・CRP・赤血球沈降速度などの値を確認するのが一般的です。
さらに、脊髄硬膜外膿瘍が疑われる場合には、MRIによる画像診断を行います。MRIを用いることにより膿瘍の位置や範囲を確認し、他の疾患との鑑別をします。
治療方法を教えてください。
検出された菌の種類により最適な抗菌薬を選択し、約4〜6週間にわたり投与を続けます。しかし、抗菌薬の投与を行っても症状が軽快せず、悪化してしまうケースもあります。このような場合には、早急な外科的手術が必要です。
また、受診の段階で神経症状がみられるような場合にも、外科的手術の適用となります。ただし手術によるリスクが高い患者さんや、麻痺が出現して36時間以上経過している患者さんに対しては手術を行わないこともあります。
手術することもあるのでしょうか?
ただし、患者さんが手術を望まない場合や手術によるリスクが高いと判断した場合には手術の適応外です。手術は減圧ドレナージという処置を行います。簡単にいうと、溜まった膿の排出と洗浄です。
MRI診断により背中側の膿瘍の位置が明らかな場合には、皮膚から直接ドレーンを挿入し膿を排出する「経皮的ドレナージ」という方法を用いることもあります。
治療期間について教えてください。
しかし、これらはあくまでも目安です。膿の位置・範囲・神経症状の重症度によっても異なります。また、炎症所見が治まっても後遺症が残る可能性は考えられます。
編集部まとめ
今回は脊髄硬膜外腔に膿が溜まることにより脊髄が圧迫され、神経症状が引き起こされる「脊髄硬膜外膿瘍」について解説しました。
初期は、腰や背中の痛み・発熱といった風邪と勘違いしてしまうような症状から始まる病気です。
そのため、症状を自覚していても受診に踏み切れずに悪化してしまうケースがあるようです。
しかし、神経症状が現れるまで放置してしまうと、病状が急激に悪化することもあります。最悪の場合、命にかかわることもある危険な病気です。
腰や背中の痛み・発熱などが現れた場合は、「すぐに良くなるだろう…」と軽視せず病院を受診するようにしてください。